111PM103|第111回 看護師国家試験 過去問

次の文を読み103〜105の問いに答えよ。Aちゃん(2歳10か月、女児)は昨日から下痢と嘔吐を繰り返し、食事が摂れなくなったため、母親に抱かれて小児科外来を受診した。診察の結果、ウイルス性胃腸炎 viral gastroenteritis による中等度の脱水症 dehydration と診断され入院した。入院時、体温38.2 ℃、呼吸数36/分、心拍数136/分であった。3日前の保育所の身体計測では身長90 cm、体重12.5 kgであった。Aちゃんにみられる状態はどれか。

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正解: 5

正答

5.皮膚のツルゴールは低下している。

この問題のポイント

中等度脱水の幼児にみられる身体所見を選ぶ問題です。手がかりは「ウイルス性胃腸炎」「中等度の脱水症」という診断と、発症前(3日前)の体重です。体液が失われると皮膚・涙・尿・体重・意識がどう変わるかを、重症度ごとに区別して考えます。昏睡は重度の所見で、中等度の段階ではツルゴール低下が典型的です。

解説

事例の整理

  • 2歳10か月の女児です。昨日から下痢と嘔吐を繰り返し、食事もとれていません。水分と電解質を失い続けているうえに、摂取もできない状態です。
  • 母親に抱かれて受診していますが、意識障害を示す記載はありません。診断は「中等度」の脱水です。
  • 体温38.2℃、呼吸数36/分、心拍数136/分です。幼児の目安(心拍数はおおむね100〜120/分、呼吸数はおおむね20〜30/分)より多く、発熱と循環血液量の減少の両方が影響していると考えられます。
  • 3日前の体重12.5 kgは発症前の値です。そのため、脱水の程度を評価する基準として使えます。

小児が脱水になりやすい理由

小児が嘔吐・下痢・発熱で短時間に脱水に陥りやすい理由は次のとおりです。

  • 体重あたりの体内水分量が多く、特に細胞外液の割合が大きい。
  • 体重あたりの不感蒸泄量や必要水分量が多い。
  • 腎臓の尿濃縮力が未熟である。
  • 口渇を自分で訴えて水分をとることが難しい。

重症度と所見

脱水の重症度は、発症前からの体重減少率で評価するのが最も客観的です。区分は文献によって幅がありますが、乳児ではおおむね5%未満を軽度、5〜10%を中等度、10%以上を重度とします。年長児ではより小さな減少率で同じ程度とみなします。発症前の体重が分からないときは、身体所見を組み合わせて判断します。

  • 軽度:口渇や口唇の軽い乾燥程度で、身体所見はほとんど目立ちません。
  • 中等度:皮膚ツルゴールの低下、口唇・口腔粘膜の乾燥、涙の減少、眼窩の陥凹、尿量の減少と濃縮尿、頻脈、不機嫌・活気の低下、毛細血管再充満時間(CRT)の延長傾向がみられます。乳児では大泉門が陥凹します。
  • 重度:傾眠から昏睡に至る意識障害、無尿、ツルゴールの著明な低下、末梢冷感などのショック徴候がみられます。小児では血圧低下は遅れて現れます。

ツルゴールとは皮膚の張りのことです。腹壁などの皮膚をつまんで離し、元に戻るまでの速さをみます。間質液(細胞外液)が失われると皮膚の弾力が落ち、つまんだ跡がゆっくり戻ります。体液の喪失がそのまま表れるため、中等度脱水の代表的な所見です。WHOの分類でも、つまんだ皮膚の戻りが遅いことは「脱水あり」、非常に遅いことは「重度脱水」の所見とされています。

循環血液量が減ると、抗利尿ホルモン(ADH)の分泌とレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系が働き、腎臓で水とナトリウムの再吸収が高まります。その結果、尿は少なく濃くなります。涙腺や唾液腺の分泌も減るため、泣いても涙が少なく、口の中が乾きます。

看護実践での活用

入院時には次の点を確認します。

  • 体重を測り、発症前との差を確かめます。
  • おむつの重量測定や排尿回数で尿量を把握します。

大泉門はおおむね1歳6か月頃までに閉鎖するため、Aちゃんの年齢では判断材料になりません。ツルゴール、粘膜、涙、尿量、意識、CRT、バイタルサインを組み合わせて評価します。これらは補液の効果を判定する指標にもなります。

なお、高張性脱水では細胞外液が比較的保たれるため、脱水の程度の割にツルゴール低下が目立たないことがあります。一つの所見だけで重症度を過小評価しないよう注意します。

選択肢の確認

1.昏睡状態である。:著しい意識レベルの低下は、脱水が重度に進み脳への循環が保てなくなった段階の所見で、ショックを伴うことが多い状態です。中等度では不機嫌や活気の低下にとどまるのが一般的です。昏睡であれば中等度とは判断されず、ただちに急速輸液などの救命的対応が必要な重症の段階と考えます。

2.流涙は普段と変わらない。:体液量が減ると涙腺の分泌も低下するため、中等度脱水では泣いても涙が少ないか、出なくなります。涙が普段どおり出るのは、脱水がないかごく軽い場合です。啼泣時の涙の有無は、症状を言葉で訴えにくい幼児で脱水を見分ける簡便な手がかりになります。

3.体重は3日前と変わらない。:嘔吐・下痢で失った水分の分だけ体重は減少します。3日前は発症前の測定なので、現在は12.5 kgより減っているはずです。例えば5%減少していれば約0.6 kg減り、約11.9 kgになります。発症前体重との差は脱水の程度を示す最も客観的な指標であり、体重が変わらなければ中等度の脱水とはいえません。

4.排尿頻度は普段通りである。:循環血液量の減少に対してADHやアルドステロンが働き、腎臓で水の再吸収が高まるため、尿は回数・量ともに減って色が濃くなります。排尿が普段どおりであることは、むしろ脱水が軽いことを示します。重度になると無尿に近づくため、尿量は重症度と補液の効果を判断する重要な観察項目です。

5.皮膚のツルゴールは低下している。:正答。嘔吐と下痢で細胞外液(間質液)が失われると皮膚の張りが低下し、つまんだ皮膚の戻りが遅くなります。中等度脱水の代表的な所見であり、Aちゃんの状態に当てはまります。

覚えるポイント

  • 脱水の重症度は、発症前からの体重減少率で評価するのが最も客観的です(乳児ではおおむね軽度5%未満・中等度5〜10%・重度10%以上)。
  • 中等度脱水の所見は、ツルゴール低下、口腔粘膜の乾燥、涙の減少、眼窩陥凹、尿量減少、頻脈、不機嫌・活気低下です。乳児では大泉門が陥凹します。
  • 重度脱水の所見は、傾眠〜昏睡、無尿、末梢冷感などのショック徴候です。小児の血圧低下は遅れて現れる徴候です。
  • 大泉門はおおむね1歳6か月頃までに閉鎖するため、幼児では大泉門以外の所見で評価します。
  • 小児は細胞外液の割合が大きく、腎臓の濃縮力が未熟で、口渇を訴えにくいため、脱水に陥りやすいです。

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