111PM119|第111回 看護師国家試験 過去問
次の文を読み118、119の問いに答えよ。A君(男児)は3歳の誕生日を迎えた。生後8か月のときに鶏卵の摂取でアナフィラキシーを起こしたため、かかりつけ医を受診した。それ以降、現在までA君は鶏卵の摂取を禁止するよう説明されている。鶏卵以外の食物は摂取して問題がない。今回、A君は保育所の入所にあたり、かかりつけ医からアレルギー外来のあるB病院を紹介され受診した。3歳児健康診査が今後予定されている。A君は身長95 cm(50パーセンタイル)、体重15 kg(75パーセンタイル)、自分の名前と年齢を答えることができる。階段を1人で昇ることができるが、スキップはできない。排泄はオムツにしている。B病院の医師から母親に、アドレナリン自己注射薬を処方のうえ鶏卵の摂取制限を継続することと、近日中に鶏卵を用いた食物経口負荷試験を計画することが説明された。母親から看護師に「Aの保育所での生活や将来のことが心配です」と訴えがあった。看護師の母親への説明で適切なのはどれか。
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正解: 1
正答
1.「成長とともに卵を食べられるようになる子どもは多いです」
この問題のポイント
鶏卵アレルギーの3歳児の母親が「保育所での生活や将来」への不安を訴えた場面で、看護師が伝える説明として内容が正確で、不安の軽減につながるものを選ぶ問題です。判断の鍵は2つあります。1つは、乳児期に発症した鶏卵アレルギーは成長とともに食べられるようになることが多いという自然経過です。もう1つは、保育所でのアレルギー対応の仕組みで、生活管理指導表を誰が書くか、エピペンを誰が打てるか、給食でどう配慮するかを知っているかが問われます。
解説
事例から判断に使う情報
- 3歳男児で、生後8か月のときに鶏卵でアナフィラキシーを起こしました。以後は鶏卵だけを除去し、ほかの食物は問題なく食べています。
- 保育所への入所を控え、アレルギー外来で次の3点が決まりました。アドレナリン自己注射薬(エピペン)の処方、鶏卵除去の継続、近日中の鶏卵による食物経口負荷試験です。
- 体重は15kgで、身長・体重・発達はおおむね年齢相応です。
- 母親の訴えは「保育所での生活」と「将来」の両方に及んでいます。
看護師の説明には2つの条件があります。医学的に正確であることと、保育所生活や今後の見通しについて母親が安心して行動できる内容であることです。
乳幼児期の鶏卵アレルギーの自然経過
乳児期に発症する食物アレルギーは、鶏卵・牛乳・小麦によるものが多くみられます。なかでも鶏卵は、即時型食物アレルギーの原因として最も多い食物です。これらは消化管の成熟や免疫寛容の獲得によって、成長とともに食べられるようになる(耐性獲得)ことが多く、多くが学童期ごろまでに耐性を獲得します。一方、ピーナッツ・木の実類・そば・甲殻類・魚類は耐性を獲得しにくく、学童期以降に発症した場合も持続しやすいとされます。
ただし、アナフィラキシーの既往がある場合や、特異的IgE抗体価が高い場合は、耐性の獲得が遅れることがあります。そのため「必ず食べられるようになる」と断言するのではなく、「食べられるようになる子どもは多い」と伝えるのが正確で誠実な表現です。
耐性を獲得したかどうかは、血液検査の値だけでは判断できません。医師の管理下で行う食物経口負荷試験で確かめます。現在の食物アレルギー診療の原則は「正しい診断に基づく必要最小限の除去」です。今回予定されている負荷試験は、どこまで食べられるかを確かめて除去を最小限にするための検査です。看護師は選択肢1の見通しを伝える際に、この検査の意味もあわせて説明できます。一方で、家庭で自己判断して少しずつ食べさせてみるのは危険なので、勧めてはいけません。
保育所でのアレルギー対応の仕組み
厚生労働省の「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」(出題当時は2019年改訂版)では、次のように定められています。
- 生活管理指導表:保育所で特別な配慮が必要な場合、医師が「保育所におけるアレルギー疾患生活管理指導表」に記入し、保護者が保育所へ提出します。保育所はこれをもとに保護者と面談し、具体的な対応を決めます。
- 給食での除去:安全を優先し、原因食物を「完全除去」するか「解除」するかの二者択一を基本とします。
- 誤食の防止:専用の食器やトレー、配膳時の複数の職員による確認、座席の配慮などで行います。
- エピペン:本人が注射できない緊急時は、居合わせた保育士などが代わりに注射できます。
周辺知識
- 鶏卵アレルギーでも、鶏肉や魚卵は原則として除去の必要はありません。
- 卵白の主要アレルゲンのうち、オボアルブミンは加熱で抗原性が下がります。オボムコイドは熱に強く、加熱しても抗原性が残ります。
- 加工食品のアレルギー表示が義務づけられた特定原材料は、出題当時は卵を含む7品目でした。現在はくるみが加わり8品目です。
選択肢の確認
1.「成長とともに卵を食べられるようになる子どもは多いです」:正答。乳児期に発症した鶏卵アレルギーは、成長とともに耐性を獲得することが多いです。この説明は「将来が心配」という訴えに、根拠のある見通しで応えています。「多い」という表現は、アナフィラキシー既往などで耐性獲得が遅れる例があることとも矛盾しません。予定されている経口負荷試験が「食べられる範囲を確かめ、除去を最小限にする」ための検査であることを付け加えると、今後の治療への理解も深まります。
2.「保育所でアレルギー疾患用生活管理指導表を作成します」:生活管理指導表は、主治医(医師)が診断に基づいて記入する書類です。保護者が医師に記入を依頼し、保育所へ提出します。保育所はこれを受け取って対応を決める立場で、指導表そのものを作成するわけではありません。「保育所が作成する」と伝えると、母親が医師への依頼と提出を行わないおそれがあります。正しくは「医師に記入してもらい、保育所に提出しましょう」と説明します。なお、学校で用いるのは「学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)」で、こちらも医師が記入します。
3.「保育所でのアドレナリン自己注射薬は保護者が投与します」:本人が注射できない緊急時は、居合わせた保育士などの職員が代わりにエピペンを注射できます。これは人命救助のためのやむを得ない措置として、医師法違反にはならないと国が示しています。アナフィラキシーは数分単位で進行することがあり、アドレナリンの早期投与が救命の鍵です。保護者の到着を待つと投与が遅れ、危険です。エピペンは太ももの前外側に、衣服の上からでも筋肉注射でき、使用後は必ず救急車を要請します。体重15kgのA君は、0.15mg製剤(体重15kg以上30kg未満)の対象です。
4.「給食の際は別室に移動して食べさせましょう」:別室で食べさせることは、誤食防止の標準的な方法ではありません。原因食物を完全除去した給食を専用の食器・トレーで提供し、配膳時に複数の職員で確認し、座席を配慮すれば、ほかの子どもと同じ場で安全に食べられます。3歳は集団生活の中で友だちとの関わりを広げる時期です。食事のたびに隔離すると疎外感を与え、心理社会的な発達への配慮を欠きます。また、食事の環境は保育所が保護者と相談して決めるもので、病院の看護師が一方的に指示する内容でもありません。
覚えるポイント
- 乳幼児期に発症した鶏卵・牛乳・小麦のアレルギーは、耐性を獲得しやすい食物です。ピーナッツ・木の実類・そば・甲殻類・魚類は持続しやすい食物です。
- 除去は「正しい診断に基づく必要最小限」が原則です。耐性獲得の確認は、医師の管理下での食物経口負荷試験で行います。
- 生活管理指導表は医師が記入し、保護者が保育所・学校へ提出します。保育所・学校は、それをもとに対応を決めます。
- エピペンは、本人が打てない緊急時には保育士・教職員が代わりに注射できます(医師法違反にならない)。使用後はすぐに救急車を要請します。規格は0.15mgが体重15kg以上30kg未満、0.3mgが体重30kg以上です。
- 保育所給食は、完全除去か解除かの二者択一が基本です。誤食防止は専用食器・複数の職員での確認・座席の配慮で行い、子どもを集団から切り離しません。
- 家族の不安への説明では、断定を避けた正確な見通しと、次に家族がとるべき行動(負荷試験、指導表の提出)をセットで伝えます。
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