112AM006|第112回 看護師国家試験 過去問
緩和ケアの目標で正しいのはどれか。
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正解: 3
正答
3.QOL の向上
この問題のポイント
緩和ケアが何を目指すケアなのかを、世界保健機関(WHO)の定義に沿って理解しているかを問う問題です。判断の鍵は、緩和ケアの目標が「病気を治すこと」や「命を延ばすこと」ではなく、苦痛を予防し和らげて、患者と家族の生活の質(QOL)を改善することにある点です。治癒を目指す治療や延命治療との違いと、「終末期だけのケアではない」という位置づけもあわせて押さえます。
解説
WHOによる緩和ケアの定義
WHO(2002年)は緩和ケアを次のように定義しています。対象は、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族です。痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に見いだし、的確に評価して対応します。それによって苦しみを予防し和らげ、QOLを改善するアプローチとされています。定義そのものが「QOLを改善するアプローチ」という形になっているため、目標がQOLの向上であることは明らかです。
WHOは緩和ケアの特徴として、次の点も示しています。
- 痛みやその他のつらい症状を和らげる
- 生命を尊重し、死を自然な過程と認める
- 死を早めることも、引き延ばすことも意図しない
- 心理的・スピリチュアルな側面を含めてケアする
- 患者が最期までできる限り能動的に生きられるよう支える
- 患者の療養中から死別後まで、家族が対処できるよう支える
- チームアプローチで患者と家族のニーズに対応する
- 病気の早い段階から、化学療法や放射線療法など延命を目的とする治療と並行して行える
全人的苦痛(トータルペイン)
近代ホスピスを創設したシシリー・ソンダースは、終末期の患者の苦痛を全人的苦痛としてとらえました。全人的苦痛は、身体的苦痛、精神的苦痛、社会的苦痛、スピリチュアルペインの4つからなり、これらは互いに影響し合います。たとえば、痛みが強いと不安が増し、不安が強いと痛みをより強く感じます。そのため、鎮痛薬だけでなく、心理的支援、経済的・社会的問題への対応、生きる意味への問いに寄り添うことが必要です。医師、看護師、薬剤師、医療ソーシャルワーカー、心理職などの多職種チームで関わるのはこのためです。
「終末期だけのケア」ではない
緩和ケアは、かつては治療手段がなくなった終末期に行うものと考えられていました。現在は、診断されたときから治療と並行して行い、病状の進行に応じて比重を増やしていくものと位置づけられています。日本でも、がん対策基本法とがん対策推進基本計画のもとで、診断時からの緩和ケアが推進されてきました。
対象はがんに限りません。心不全、慢性閉塞性肺疾患、腎不全、神経難病、認知症、後天性免疫不全症候群など、生命を脅かす疾患全般が対象です。年齢も小児から高齢者まで含まれます。
看護実践での意味
QOLは本人の主観に基づくものです。何を大切にし、どう過ごしたいかは本人が決めます。看護師が担う役割には、次のようなものがあります。
- 痛みの部位・性質・強さと、それが生活に与える影響を評価する
- 薬物療法を確実に管理し、温罨法、体位の工夫、マッサージなどの非薬物的ケアを行う
- 人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)で、本人の意向を繰り返し確認して共有する
- 療養場所の選択を支援する
- 家族の負担に配慮し、死別後のグリーフケアを行う
正答に至る判断
選択肢のうち、治癒と延命は治療の目標です。在院日数の短縮は医療効率の指標です。これらは緩和ケアの結果として起こることがあっても、目標そのものではありません。緩和ケア固有の目標はQOLの向上であり、正答は選択肢3です。
選択肢の確認
1.疾病の治癒:病気を治すことは、手術や根治目的の化学療法・放射線療法など根治的治療の目標であり、緩和ケアの目標ではありません。ただし、緩和ケアは治療をあきらめた人だけのものではなく、治癒を目指す治療と並行して行うことができます。また、同じ放射線療法でも、骨転移の痛みを和らげる照射のように症状の緩和を目的とするものは緩和的治療にあたります。治療法の種類ではなく「目的」で区別する点に注意します。
2.余命の延長:WHOは緩和ケアを「死を早めることも、引き延ばすことも意図しない」ものとしています。生存期間を延ばすこと自体は目標ではありません。苦痛が和らいで食事や活動が保たれることで、病気の経過によい影響を与える可能性はあります。早期からの緩和ケアで生存期間が延びたとする研究報告もありますが、それは副次的な結果です。本人の意思に反して延命処置を続けることも、逆に安楽死のように死を早めることも、緩和ケアの考え方には含まれません。
3.QOL の向上:正答。WHOの定義は、苦痛を予防し和らげることで、患者と家族の生活の質を改善するアプローチとしています。身体的・精神的・社会的・スピリチュアルな苦痛に全人的に対応し、本人の価値観に沿った生活を支えることが緩和ケアの目標です。
4.在院日数の短縮:平均在院日数は、医療機関の効率や病床の回転を示す指標であり、医療経済や病院運営の観点からの目標です。緩和ケアでも、症状が調整できて本人が自宅で過ごすことを望めば退院に至り、結果として入院期間が短くなることはあります。しかし、それは本人の望む生活を実現した結果です。入院期間そのものを縮めることを目標にするわけではなく、病院での療養を望む人にはその意思が尊重されます。
覚えるポイント
- 緩和ケアの目標は患者と家族のQOLの向上です。治癒・延命・入院期間の短縮は目標ではありません。
- WHOの考え方では、緩和ケアは「死を自然な過程と認め、死を早めることも引き延ばすことも意図しない」ものです。
- 緩和ケアは診断時から治療と並行して行います。終末期だけのケアではありません。
- 対象はがんに限らず、心不全、COPD、腎不全、神経難病、認知症などの非がん疾患も含み、小児から高齢者までが対象です。
- 全人的苦痛(身体的・精神的・社会的・スピリチュアル)に、多職種チームで対応します。
- 家族もケアの対象です。療養中の家族支援から死別後のグリーフケアまで含まれます。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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