112AM029|第112回 看護師国家試験 過去問
多発性骨髄腫 multiple myeloma で腫瘍化しているのはどれか。
解答・解説を見る
正解: 3
正答
3.形質細胞
この問題のポイント
多発性骨髄腫がどの細胞から生じる腫瘍かを問う問題です。判断の鍵は、この疾患の代表的な所見であるM蛋白(単クローン性免疫グロブリン)とベンス・ジョーンズ蛋白です。どちらも抗体の成分なので、抗体を分泌する細胞が腫瘍化していると考えれば正答にたどり着けます。B細胞から形質細胞への分化の流れと、血球の系列ごとに代表的な腫瘍を整理しておくことが大切です。
解説
抗体を作る細胞の分化の流れ
造血幹細胞は骨髄にあり、すべての血球のもとになります。骨髄系(赤血球・顆粒球・単球・血小板)とリンパ系(B細胞・T細胞・NK細胞)の両方を生み出します。
- B細胞は骨髄で成熟します。抗原の刺激を受けると増殖・分化して形質細胞になります。
- 形質細胞はB細胞系列の最終分化段階の細胞で、抗体(免疫グロブリン)を大量に分泌します。
- T細胞は胸腺で成熟し、細胞性免疫を担う別の系列です。抗体は作りません。
多発性骨髄腫の病態
多発性骨髄腫は、形質細胞が腫瘍化し、主に骨髄の中で増殖する造血器腫瘍です。高齢者に多くみられます。
腫瘍細胞はすべて1つの細胞に由来します(単クローン性)。そのため、同じ種類の免疫グロブリンだけを大量に作ります。これがM蛋白で、血清蛋白分画では主にγ分画に幅の狭い鋭いピークとして現れます。免疫グロブリンの軽鎖(L鎖)だけが過剰に作られて尿中に出たものがベンス・ジョーンズ蛋白です。
一方で、正常な形質細胞が作る多様な抗体は減ります。その結果、見かけ上は蛋白が多いのに、実際には感染症にかかりやすい状態になります。
主な臓器障害(CRAB)
臓器障害は頭文字をとってCRABとまとめられます。
- C(高カルシウム血症):腫瘍細胞が破骨細胞を活性化し、骨吸収が進むために起こります。口渇、多尿、便秘、悪心、意識障害などを生じます。
- R(腎障害):軽鎖が尿細管で円柱をつくって尿細管を傷害する骨髄腫腎が主な原因です。高カルシウム血症や脱水も腎障害に加わります。
- A(貧血):骨髄が腫瘍細胞で占められ、正常な造血が抑えられるために起こります。
- B(骨病変):溶骨性病変により、腰背部痛、病的骨折、椎体の圧迫骨折が起こります。頭蓋骨X線写真の打ち抜き像が有名です。
このほか、次のような所見も知られています。
- M蛋白による過粘稠度症候群
- 赤血球の連銭形成と、赤沈の著明な亢進
- 総蛋白の上昇とA/G比の低下
診断では、骨髄穿刺で異常な形質細胞の増加を確認します。治療には、プロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブ)や免疫調節薬(レナリドミドなど)が用いられます。比較的若い患者では、大量化学療法に自家造血幹細胞移植を組み合わせることがあります。
看護実践とのつながり
骨がもろくなっているため、次の点が重要です。
- 転倒・骨折の予防
- 移乗や体位変換のときに強い力をかけない配慮
- 疼痛のコントロール
加えて、易感染状態への感染予防、脱水を避けるための水分摂取の支援、腎機能とカルシウム値の観察も欠かせません。腎障害を悪化させうる薬剤(NSAIDsなど)や造影剤を使うときにも注意が必要です。
正答への判断
「M蛋白=抗体の産生」という手がかりから、抗体を分泌する細胞、すなわち形質細胞の腫瘍だと判断できます。B細胞も同じ抗体産生系列ですが、骨髄腫はその最終分化段階の細胞の腫瘍です。この「分化の段階の違い」が、選択肢を見分けるポイントです。
選択肢の確認
1.B細胞:この細胞は抗体産生系列に属しますが、自らは大量の抗体を分泌する段階にはありません。この段階の細胞が腫瘍化する代表は、悪性リンパ腫の多くや慢性リンパ性白血病です。多発性骨髄腫は、この細胞が抗原刺激を受けてさらに分化した最終段階の細胞(選択肢3)の腫瘍です。同じ系列で分化段階が違うだけなので、最も取り違えやすい選択肢です。
2.T細胞:胸腺で成熟して細胞性免疫を担うリンパ球であり、抗体を産生しないため、M蛋白の産生とは結びつきません。この細胞の腫瘍の代表は、HTLV-1感染が原因となるATL(adult T-cell leukemia-lymphoma)です。HTLV-1は主に母乳を介して母子感染します。多発性骨髄腫とは由来する系列そのものが異なります。
3.形質細胞:正答。B細胞系列の最終分化段階にあり、抗体を分泌する細胞が単クローン性に増殖した疾患が多発性骨髄腫です。腫瘍細胞がM蛋白やベンス・ジョーンズ蛋白を大量に作ります。また骨髄で増えることで、骨破壊、高カルシウム血症、貧血などのCRAB症状を引き起こします。
4.造血幹細胞:すべての血球系列のもとになる骨髄の細胞で、この段階の異常から生じる腫瘍の代表は慢性骨髄性白血病です。慢性骨髄性白血病ではフィラデルフィア染色体(BCR-ABL融合遺伝子)がみられ、白血球増加や脾腫が特徴ですが、M蛋白は出現しません。多発性骨髄腫では治療として自家移植が行われることがあるため混同しやすいです。しかし移植は治療手段であり、腫瘍の由来細胞ではありません。
覚えるポイント
- 多発性骨髄腫は形質細胞(B細胞の最終分化段階・抗体産生細胞)の腫瘍です。M蛋白と、尿中に出る軽鎖であるベンス・ジョーンズ蛋白が特徴です。
- 臓器障害はCRABです。高カルシウム血症、腎障害(骨髄腫腎)、貧血、骨病変(打ち抜き像、病的骨折、腰背部痛)を押さえます。
- 検査所見として、総蛋白上昇、A/G比低下、赤沈の著明な亢進、赤血球の連銭形成を覚えます。正常な抗体が減るため易感染状態になります。
- 腫瘍と由来細胞の対応は次のとおりです。B細胞は悪性リンパ腫の多くと慢性リンパ性白血病、T細胞はATL(HTLV-1)、造血幹細胞は慢性骨髄性白血病(フィラデルフィア染色体)、形質細胞は多発性骨髄腫です。
- 看護の要点は、骨折・転倒の予防、疼痛管理、感染予防、水分摂取の支援、腎機能とカルシウム値の観察です。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する([email protected])までお知らせください。確認して修正します。