112AM030|第112回 看護師国家試験 過去問
くも膜下出血 subarachnoid hemorrhage の成因で最も多いのはどれか。
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正解: 3
正答
3.脳動脈瘤 cerebral aneurysm
この問題のポイント
くも膜下出血の原因として最も多いものを問う知識問題です。脳卒中の一病型としてのくも膜下出血は、その大部分が脳底部の動脈にできた嚢状の脳動脈瘤の破裂で起こります。この基本事項が判断の鍵です。原因を押さえておくと、突然の激しい頭痛という症状から、再出血・脳血管攣縮・水頭症という経過上の注意点までを一続きで理解できます。
解説
くも膜下出血とは
脳は外側から硬膜、くも膜、軟膜の3層の髄膜に包まれています。くも膜と軟膜の間のくも膜下腔は脳脊髄液で満たされています。主要な脳動脈は脳底部でこのくも膜下腔を走っているため、ここで動脈が破れると、血液が脳脊髄液に混じって一気に広がります。これがくも膜下出血です。脳卒中は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血に大きく分けられ、くも膜下出血はその1つの病型です。
最も多い成因は脳動脈瘤の破裂
自然に発症するくも膜下出血の原因は、約8割以上が脳動脈瘤の破裂です。脳動脈瘤の多くは、脳底部の動脈輪(ウィリス動脈輪)の分岐部で血管壁が弱くなり、袋状に膨らんだ嚢状動脈瘤です。好発部位は次のとおりです。
- 前交通動脈
- 内頸動脈と後交通動脈の分岐部
- 中大脳動脈の分岐部
分岐部は血流が直接ぶつかって壁に負担がかかりやすく、もともと壁の構造が弱い部位です。高血圧、喫煙、過度の飲酒、家族歴が危険因子とされます。発症は中高年に多く、女性にやや多い傾向があります。
ほかの原因には脳動静脈奇形、脳動脈解離(特に椎骨動脈)、もやもや病などがあります。ただし、いずれも脳動脈瘤に比べると頻度はずっと低くなります。
症状と診断
典型的な症状は、「これまで経験したことのない」「バットで殴られたような」と表現される突然の激しい頭痛です。悪心・嘔吐や意識障害を伴い、項部硬直やケルニッヒ徴候などの髄膜刺激症状が現れます。髄膜刺激症状は発症直後には目立たないこともあります。また、脳出血や脳梗塞と違い、片麻痺などの局所症状は目立たないことが多い点も特徴です。
診断ではまず頭部CTを撮影し、脳底部の脳槽に広がる高吸収域(白く写る部分)を確認します。CTで明らかでない場合は、腰椎穿刺で血性髄液やキサントクロミー(黄色調の髄液)がないかを確認します。そのうえで、CTアンギオグラフィー、MRA、脳血管造影で動脈瘤の位置と形を調べます。
経過と看護で注意すること
- 再出血(再破裂):発症後早期、特に24時間以内に起こりやすく、起こると予後が大きく悪化します。動脈瘤の処置までは、安静、暗く静かな環境、鎮痛・鎮静、血圧管理を行います。怒責を避けるため排便コントロールにも注意します。再出血を防ぐ根本治療は、開頭によるクリッピング術と、カテーテルを用いたコイル塞栓術です。
- 脳血管攣縮:発症後4〜14日ごろに脳の動脈が細くなり、遅発性の脳虚血を起こします。麻痺、失語、意識レベルの低下などの新しい神経症状が出ていないかを注意深く観察し、脱水を避けます。
- 水頭症:血液が髄液の流れや吸収を妨げるため、急性期に急性水頭症が起こることがあります。数週〜数か月後には正常圧水頭症(歩行障害、認知機能低下、尿失禁)が起こることもあります。
成因が脳動脈瘤であるからこそ、「動脈瘤を処置するまでは再破裂させないこと」が急性期看護の最優先課題になります。原因と看護をこのようにつなげて理解しておきましょう。
選択肢の確認
1.外傷:頭部外傷でもくも膜下腔に出血が及ぶことがあり、外傷性くも膜下出血と呼ばれます。ただしこれは、脳挫傷や急性硬膜下血腫などと並ぶ頭部外傷の一所見として扱われ、脳卒中の病型としてのくも膜下出血とは区別して考えます。本問が問う疾患としてのくも膜下出血の成因としては、脳動脈瘤の破裂には遠く及びません。問題文に転倒や交通事故などの受傷機転が書かれていれば、外傷性を考えます。
2.脳腫瘍 brain tumor:腫瘍の中の血管はもろく、腫瘍内出血を起こすことがあります。しかし出血は腫瘍の内部や脳実質内にとどまることが多く、くも膜下出血の原因になるのはまれです。脳腫瘍では、頭蓋内圧亢進症状(頭痛、嘔吐、うっ血乳頭)やけいれんが徐々に現れる経過のほうが典型的です。
3.脳動脈瘤 cerebral aneurysm:正答。自然に発症するくも膜下出血の約8割以上を占める、最も多い成因です。脳底部の動脈分岐部にできた嚢状の動脈瘤が破裂し、くも膜下腔に出血が広がります。破裂前の未破裂脳動脈瘤は、脳ドックなどで偶然見つかることもあります。その場合は、大きさ・部位・形などから治療の必要性を検討します。
4.脳動静脈奇形 cerebral arteriovenous malformation:動脈と静脈が毛細血管を介さず、異常な血管の塊(ナイダス)でつながっている先天性の血管異常です。脳動脈瘤に次ぐ原因として挙げられることが多いものの、頻度は脳動脈瘤よりはるかに低くなります。20〜40歳代の若年者の頭蓋内出血の原因として重要で、くも膜下出血だけでなく、脳内出血やけいれん発作で発症することも多い点が特徴です。
覚えるポイント
- くも膜下出血の最多の成因は脳動脈瘤の破裂(約8割以上)です。好発部位は前交通動脈、内頸動脈-後交通動脈分岐部、中大脳動脈分岐部です。
- 脳動静脈奇形は若年者の出血原因として重要で、脳内出血やけいれんでも発症します。
- 症状は、突然の激しい頭痛、悪心・嘔吐、意識障害、髄膜刺激症状(項部硬直、ケルニッヒ徴候)です。片麻痺は目立たないことが多いです。
- 診断は頭部CTで脳底部の脳槽の高吸収域を確認します。CTで不明なら、腰椎穿刺で血性髄液やキサントクロミーを確認します。
- 経過中の3大合併症は、再出血(24時間以内に多い)、脳血管攣縮(4〜14日ごろ)、水頭症(急性期の急性水頭症と、後に起こる正常圧水頭症)です。
- 再出血予防の治療はクリッピング術とコイル塞栓術です。治療までは安静、鎮痛・鎮静、血圧管理、怒責の回避を徹底します。
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