112AM031|第112回 看護師国家試験 過去問
社会保険制度と根拠法令の組合せで正しいのはどれか。
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正解: 1
正答
1.医療保険 ― 健康保険法
この問題のポイント
日本の社会保障を構成する5つの社会保険(医療・年金・介護・雇用・労災)と、それぞれの根拠法を対応させる問題です。選択肢2〜4の法律はどれも実在する社会保障関係の法律ですが、社会保険ではなく、高齢者福祉・社会福祉・生活困窮者支援の分野の法律です。「保険料を出し合い、病気や失業などが起きたときに給付を受ける仕組みを定めた法律かどうか」で区別すると、正答を選べます。
解説
社会保障の4つの柱と社会保険の位置づけ
わが国の社会保障は、1950年の社会保障制度審議会勧告以来、次の4つの柱で整理されています。
- 社会保険:加入者が保険料を出し合い、病気・老齢・要介護・失業・業務災害などの「保険事故」が起きたときに給付を受ける仕組みです。対象者は法律で加入が義務づけられています(強制加入)。
- 社会福祉:高齢者、障害者、児童、ひとり親家庭など支援を必要とする人に、主に公費でサービスを提供します。
- 公的扶助:生活に困窮した人に最低限度の生活を保障します(生活保護法)。財源は税で、資産や能力の調査(ミーンズテスト)を前提とします。
- 公衆衛生:感染症対策、母子保健、健康づくりなど、国民全体の健康を守る施策です。
社会保険は、医療保険・年金保険・介護保険・雇用保険・労働者災害補償保険(労災保険)の5つです。このうち雇用保険と労災保険をまとめて労働保険と呼びます。
5つの社会保険と根拠法
- 医療保険:健康保険法(会社員など被用者とその被扶養者)、国家公務員共済組合法などの各種共済組合法、船員保険法、国民健康保険法(自営業者や無職の人など)、高齢者の医療の確保に関する法律(75歳以上などを対象とする後期高齢者医療制度)
- 年金保険:国民年金法(基礎年金)、厚生年金保険法(被用者の上乗せ部分)
- 介護保険:介護保険法
- 雇用保険:雇用保険法
- 労災保険:労働者災害補償保険法
正答に至る判断
医療保険は一つの法律でできているのではなく、職業や年齢によって加入する制度が分かれています。その中心が、被用者を対象とする健康保険法です。したがって「医療保険と健康保険法」は正しい組合せです。
一方、選択肢2〜4の法律は、保険料の負担や保険給付を定めた法律ではありません。社会保険の根拠法は、制度名に「法」を付けた名称であることが多いです(介護保険法、雇用保険法、国民年金法・厚生年金保険法など)。この点を知っておくと、組合せ問題で素早く見分けられます。
臨床でも、患者がどの医療保険に加入しているか、要介護認定を受けているか、どの福祉制度や生活支援を利用できるかを把握することは、退院支援や在宅療養の調整に直結します。保険制度と福祉制度を区別して理解しておくことが、医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーとの連携の土台になります。
選択肢の確認
1.医療保険 ― 健康保険法:正答。健康保険法は、会社などに雇用される被用者とその被扶養者を対象とする法律です。業務外の疾病・負傷・死亡・出産について、療養の給付、傷病手当金、出産手当金、出産育児一時金などを定めており、わが国の医療保険の中核をなす根拠法です。保険者は全国健康保険協会(協会けんぽ)と健康保険組合です。なお、業務上や通勤途上の傷病は健康保険ではなく労災保険の対象になる点も一緒に押さえておきます。
2.介護保険 ― 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律〈高齢者虐待防止法〉:介護保険の根拠法は介護保険法で、1997年に制定され2000年に施行されました。保険者は市町村・特別区です。被保険者は、65歳以上の第1号被保険者と、40〜64歳の医療保険加入者である第2号被保険者です。高齢者虐待防止法は2006年に施行された法律で、65歳以上の高齢者に対する身体的虐待、介護・世話の放棄・放任、心理的虐待、性的虐待、経済的虐待を定義しています。そのうえで、養護者や養介護施設従事者等による虐待についての市町村への通報、市町村による事実確認、養護者への支援を定めています。介護現場の職員も対象になるため介護保険と結びつけやすい法律ですが、保険の仕組みを定めた法律ではありません。
3.雇用保険 ― 社会福祉法:雇用保険の根拠法は雇用保険法です。失業したときの求職者給付(基本手当)、教育訓練給付、育児休業給付、介護休業給付などを定め、保険者は政府、窓口は公共職業安定所(ハローワーク)です。社会福祉法は、社会福祉事業(第一種・第二種)、福祉事務所、社会福祉法人、社会福祉協議会、地域福祉計画など、社会福祉分野に共通する基本事項を定める法律で、社会保険の根拠法ではありません。「雇用」という語から、労働基準法や労働者災害補償保険法と取り違えないことも大切です。
4.年金保険 ― 生活困窮者自立支援法:年金保険の根拠法は、国民年金法と厚生年金保険法です。国民年金法は日本国内に住む20歳以上60歳未満の人を原則として加入対象とする基礎年金を、厚生年金保険法は被用者の上乗せ部分を定めています。公務員などの共済年金は、2015年に厚生年金へ一元化されました。生活困窮者自立支援法は2015年に施行された法律で、生活保護に至る前の段階にある人に、自立相談支援事業や住居確保給付金の支給などを行う「第2のセーフティネット」を定めています。経済的な困窮への対応という点で年金と結びつけやすいのですが、税財源による支援制度であり、保険料の拠出を前提とする年金保険とは仕組みが異なります。
覚えるポイント
- 社会保障の4つの柱は、社会保険・社会福祉・公的扶助・公衆衛生です。社会保険は保険料拠出と強制加入、公的扶助は税財源とミーンズテストが特徴です。
- 社会保険は医療・年金・介護・雇用・労災の5つです。雇用保険と労災保険をあわせて労働保険といい、労災保険の保険料は全額事業主が負担します。
- 根拠法の対応は次のとおりです。
医療保険=健康保険法・国民健康保険法・各種共済組合法・高齢者の医療の確保に関する法律など
年金保険=国民年金法・厚生年金保険法
介護保険=介護保険法
雇用保険=雇用保険法
労災保険=労働者災害補償保険法 - 保険者(運営主体)は次のとおりです。
健康保険=全国健康保険協会・健康保険組合
国民健康保険=都道府県と市町村・国民健康保険組合
後期高齢者医療=後期高齢者医療広域連合
介護保険=市町村・特別区
年金・雇用・労災=政府 - 組合せ問題では、社会保険ではない法律(高齢者虐待防止法、社会福祉法、生活困窮者自立支援法、生活保護法など)が紛れ込むのが定番のひっかけです。
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