112AM028|第112回 看護師国家試験 過去問
薬物の分解、排泄の速さの指標となるのはどれか。
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正解: 2
正答
2.生物学的半減期
この問題のポイント
薬物動態の代表的な指標のうち、薬物が体内から消えていく速さを示すものを選ぶ問題です。判断の手がかりは問題文の「分解、排泄の速さ」という言葉です。これは吸収・分布・代謝・排泄のうち後半の「消失」の速さを指しています。血中濃度-時間曲線で各指標がどの部分に当たるかを整理すると、4つの選択肢を確実に区別できます。
解説
薬物動態と血中濃度-時間曲線
体内に入った薬物は、吸収(Absorption)、分布(Distribution)、代謝(Metabolism)、排泄(Excretion)の順に処理されます。頭文字をとってADMEと呼ばれます。
- 問題文の「分解」は、主に肝臓での代謝を指します。
- 「排泄」は、主に腎臓からの尿中排泄を指し、ほかに胆汁を経由した糞便中排泄などがあります。
- 代謝と排泄を合わせて、薬物の「消失」といいます。
内服薬の血中濃度を時間経過でグラフにすると、山型の曲線になります。吸収に伴って濃度が上がり、頂点に達したあと、消失によって下がっていきます。各指標は次のように対応します。
- 曲線の頂点の高さ:最高血中濃度(Cmax)
- 頂点に達するまでの時間:最高血中濃度到達時間(Tmax)
- 曲線と横軸で囲まれた面積:血中濃度-時間曲線下面積(AUC)
- 下降部分で濃度が下がる速さ:生物学的半減期(t1/2)
「分解、排泄の速さ」は曲線の下降部分に当たります。したがって、これを表す指標は生物学的半減期です。
生物学的半減期とは
生物学的半減期は、代謝と排泄によって体内(血中)の薬物濃度が半分に低下するのに要する時間です。
多くの薬物は、一定時間ごとに一定の「割合」が消失します(一次速度過程)。そのため、どの時点から測っても、半減期が1回経過するごとに濃度は半分になります。
- 1半減期で50%
- 2半減期で25%
- 3半減期で12.5%
- 4半減期で約6%
- 5半減期で約3%
半減期が短い薬ほど速く消え、長い薬ほどゆっくり消えます。
半減期は、薬物を処理する能力(クリアランス)と、体内での広がり(分布容積)によって決まります。クリアランスが低下すると半減期は延長します。
- 腎機能が低下した高齢者や腎不全の患者では、腎排泄型の薬物の半減期が延びます。
- 肝機能障害のある患者では、肝代謝型の薬物の半減期が延びます。
どちらの場合も、同じ用量でも血中濃度が高くなり、蓄積して副作用が出やすくなります。そのため、減量や投与間隔の延長が検討されます。
臨床での意味
- 投与間隔の設計:半減期が短い薬は1日に複数回、長い薬は1日1回というように、投与回数を決める根拠になります。
- 定常状態:同じ用量と間隔で投与を続けると、半減期のおよそ4~5倍の時間で、血中濃度が一定の範囲で安定します。効果を判定する時期の目安になります。
- 中止後の消失:投与を中止すると、半減期のおよそ4~5倍の時間で、薬物は体内からほぼ消えます。副作用がいつ頃おさまるか、他剤へ切り替えるときにどれだけ間隔をあけるかの目安になります。
看護師は、高齢者や腎・肝機能が低下した患者で作用が長引いていないかを観察する際に、この考え方を使います。たとえば、睡眠薬による翌朝のふらつきや過鎮静、血糖降下薬による遷延性の低血糖などです。
混同しやすい用語
核医学分野では、似た言葉として「物理学的半減期」があります。これは、放射性同位元素が壊変して放射能が半分になる時間です。
一方、生物学的半減期は、代謝と排泄という生体の働きによって体内量が半分になる時間です。両方を合わせた実際の減り方は「有効半減期」と呼ばれます。
選択肢の確認
1.最高血中濃度:投与後に血中濃度が到達する最も高い値(Cmax)であり、主に作用の強さや副作用の起こりやすさに関わる指標です。薬の効果が得られる濃度の範囲(有効域)は、最小有効濃度と最小中毒濃度の間です。頂点の値が最小有効濃度に届かなければ効果が得られず、最小中毒濃度を超えると中毒症状が出やすくなります。この値は投与量や吸収の程度に強く影響されますが、薬物がどれだけ速く分解・排泄されるかを直接示すものではありません。
2.生物学的半減期:正答。代謝(分解)と排泄によって血中濃度が半分に低下するまでの時間であり、薬物が体内から消失する速さを表す指標です。短いほど速く消失します。腎機能や肝機能が低下すると延長し、蓄積や副作用の原因になります。定常状態に達するまでの時間や、中止後に薬物が消えるまでの時間を見積もる基準にもなります。
3.濃度曲線下面積:血中濃度-時間曲線と横軸で囲まれた面積(AUC)であり、全身循環に入った薬物に体がどれだけさらされたか、つまり曝露量の総量を表す指標です。バイオアベイラビリティ(生物学的利用率)の算出や、後発医薬品の生物学的同等性の評価に、Cmaxとともに用いられます。消失が遅い薬ほどAUCは大きくなりますが、あくまで「量」を示す指標であり、「速さ」を示すものではありません。
4.最高血中濃度到達時間:投与から血中濃度が頂点(Cmax)に達するまでの時間(Tmax)であり、主に吸収の速さを表す指標です。静脈内投与では投与直後に最も高い濃度になります。また、ニトログリセリンの舌下錠は口腔粘膜から速やかに吸収されるため、頂点に早く達します。このように、作用が現れる早さの目安にはなりますが、分解・排泄の速さを示すものではありません。
覚えるポイント
- 血中濃度-時間曲線では、高さがCmax、頂点までの時間がTmax、面積がAUC、下がる速さが半減期です。
- Tmaxは吸収の速さ、AUCは曝露の総量、半減期は消失(代謝と排泄)の速さを表します。
- 定常状態に達するまでの時間と、中止後にほぼ消失するまでの時間は、いずれも半減期のおよそ4~5倍です。
- 腎機能低下では腎排泄型、肝機能低下では肝代謝型の薬物の半減期が延長します。高齢者では蓄積と副作用に注意し、減量や投与間隔の延長を検討します。
- 生物学的半減期は生体による消失、物理学的半減期は放射性同位元素の壊変によるもので、両者を混同しないようにします。
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