112AM027|第112回 看護師国家試験 過去問

健常な女子(15歳)が野外のコンサートで興奮し、頻呼吸を起こして倒れた。このときの女子の体内の状態で正しいのはどれか。

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正解: 1

正答

1.アルカローシスである。

この問題のポイント

興奮をきっかけに起こる過換気(過換気症候群)で、血液ガスと酸塩基平衡がどう変わるかを問う問題です。手がかりは「健常な女子」「興奮」「頻呼吸」の3つです。ここから、基礎疾患のない人が心理的な要因で必要以上に呼吸している状況と読み取れます。換気が増えると二酸化炭素が過剰に排出され、PaCO2が下がってpHが上がる(呼吸性アルカローシス)という流れを理解していれば正答できます。

解説

問題文から状況を読み取る

判断に必要な情報は次のとおりです。

  • 15歳の健常な女子で、基礎疾患はない
  • 野外コンサートで興奮した(心理的な誘因がある)
  • 頻呼吸を起こし、その後に倒れた

酸塩基平衡の観点からみると、換気が増えている状態は大きく2つに分けられます。1つは、糖尿病ケトアシドーシスでみられるクスマウル呼吸のように、代謝性アシドーシスを代償するために換気が増える場合です。このときpHは下がっています。もう1つは、換気そのものが一次的に増える場合で、pHは上がります。本問は「健常」で「興奮」が誘因なので、後者の過換気症候群と考えるのが自然です。過換気症候群は、不安・緊張・興奮などをきっかけに起こることが多く、若い女性に多いとされます。

なお、頻呼吸は呼吸数が増えた状態を表す言葉です。一方、過換気は、体内で産生される二酸化炭素に比べて換気が過剰になり、PaCO2が下がった状態を表します。両者は同じ意味ではありませんが、本問の頻呼吸は、興奮によって換気が必要以上に増えた過換気と読み取ります。

換気・PaCO2・pHの関係

二酸化炭素は血液中で水と反応して炭酸になり、水素イオンと重炭酸イオンに解離します。

CO2 + H2O ⇄ H2CO3 ⇄ H+ + HCO3-

必要以上の換気で二酸化炭素を出しすぎると、この平衡が左に傾いて水素イオンが減り、pHが上がります。

  • PaCO2の基準値は35〜45Torr(mmHg)、pHの基準値は7.35〜7.45です。
  • 過換気ではPaCO2が35Torrを下回り、pHは7.45を超える方向に動きます。
  • 原因が呼吸(二酸化炭素)の異常にあるので、呼吸性アルカローシスです。

腎臓は重炭酸イオンの排泄を増やしてpHを戻そうとします(代償)。ただし、腎臓による代償が十分に現れるには日単位の時間がかかります。数分〜数十分で起こる急性の過換気では代償がほとんど間に合わず、pHの上昇がそのまま現れます。

過換気症候群の症状と酸素の状態

過換気症候群では、息苦しさ(呼吸困難感)、動悸、胸部の圧迫感、強い不安感などを訴えます。実際には十分に換気できていても息苦しさを感じ、その不安がさらに呼吸を速めるという悪循環に陥りやすいのが特徴です。これらに加えて、低二酸化炭素血症(低CO2血症)と呼吸性アルカローシスそのものによって、次の症状が起こります。

  • しびれ・テタニー:アルカローシスでは、血中のカルシウムがアルブミンと結合しやすくなり、生理作用をもつイオン化カルシウムが減ります。その結果、神経・筋の興奮性が高まり、口の周囲や手足のしびれが起こります。手関節と中手指節関節が屈曲し、指節間関節は伸展したまま母指が内転する「助産師の手」などのテタニー症状も現れます。
  • めまい・失神:二酸化炭素には脳血管を広げる作用があります。PaCO2が下がると脳血管が収縮して脳血流が減ります。そのため、めまいや意識が遠のく感じが起こり、本問の女子のように倒れることがあります。

酸素については、換気が増えるのでPaO2はやや上がり、SaO2も100%に近い値になります。一方で、アルカローシスとPaCO2の低下によって酸素解離曲線は左方に移動し、ヘモグロビンは組織で酸素を離しにくくなります。

看護の実際

倒れた場面では、まず意識・呼吸・脈拍と、転倒によるけがの有無を確認します。そのうえで過換気症候群と決めつけず、次のような可能性も考えます。

  • 気管支喘息発作、気胸、肺血栓塞栓症、心疾患
  • 代謝性アシドーシスを代償する呼吸の増加(糖尿病ケトアシドーシスなど)

過換気症候群だけではSpO2は低下しないので、SpO2が低ければほかの原因を疑います。野外であれば熱中症にも注意が必要です。過換気症候群と判断された場合の対応の基本は次のとおりです。

  • 安全で落ち着ける場所に移し、そばに付き添って安心感を与えます。
  • 息を吐くことを意識した、ゆっくりした呼吸を促します。
  • 紙袋を口に当てる再呼吸法は、かつて行われていましたが、現在は推奨されていません。低酸素血症を招くおそれがあり、低酸素による頻呼吸を過換気症候群と取り違えていた場合にはとくに危険だからです。

選択肢の確認

1.アルカローシスである。:正答。頻呼吸(過換気)で二酸化炭素が過剰に排出されるとPaCO2が下がり、水素イオンが減ってpHが上がるので、呼吸性アルカローシスになります。急性の過換気では腎臓による代償がまだ十分に働かないため、pHの上昇がそのまま現れます。なお、糖尿病ケトアシドーシスなどで代償的に換気が増えている場合は、一次的な異常は代謝性アシドーシスで、pHは下がっています。本問は「健常」「興奮」という条件から、一次的な過換気と判断できます。

2.ヘマトクリットは基準値よりも高い。:興奮による過換気で変化するのは血液ガスと酸塩基平衡であり、健常な人のヘマトクリットが基準値を超えて上がる理由はありません。ヘマトクリットは、血液全体の容積に占める赤血球の容積の割合です。高値になるのは、脱水で血漿量が減って血液が濃縮した場合や、多血症の場合です。多血症には、真性多血症と、慢性的な低酸素状態で赤血球が増える二次性のものがあります。「野外」から熱中症や脱水を連想すると選びたくなりますが、本問で示されているのは興奮による頻呼吸です。血液濃縮を示す情報はありません。

3.動脈血酸素飽和度〈SaO2〉は100%を超えている。:SaO2は動脈血中のヘモグロビンのうち酸素と結合しているものの割合なので、どのような状態でも100%を超えることはありません。過換気では動脈血酸素分圧(PaO2)が上がり、SaO2は100%に近づきますが、上限は100%です。これに対してPaO2は分圧なので、高濃度の酸素を吸入すれば100Torrを大きく超えることがあります。「分圧」と「飽和度」を混同しないようにしましょう。パルスオキシメータで測るSpO2も割合なので、上限は100%です。

4.動脈血二酸化炭素分圧〈PaCO2〉は基準値よりも高い。:過換気では二酸化炭素の排出量が産生量を上回るため、PaCO2は基準値(35〜45Torr)より低くなります。PaCO2が基準値より高くなるのは、COPDの増悪や麻薬・鎮静薬による呼吸抑制など、換気が足りない低換気の場合です。このときは呼吸性アシドーシスになり、高度になると意識障害を伴うCO2ナルコーシスを起こします。換気量とPaCO2は逆向きに動く、という関係を取り違えないようにしましょう。

覚えるポイント

  • 換気とPaCO2は逆の関係です。過換気ではPaCO2が下がってpHが上がります(呼吸性アルカローシス)。低換気ではPaCO2が上がってpHが下がります(呼吸性アシドーシス)。
  • 動脈血ガスの基準値は、pH 7.35〜7.45、PaCO2 35〜45Torr、PaO2 80〜100Torr、HCO3- 22〜26mEq/Lです。
  • 過換気症候群では、呼吸困難感、動悸・胸部圧迫感、不安などがみられます。低CO2血症・アルカローシスによる症状としては、イオン化カルシウムの減少によるしびれ・テタニー(助産師の手)と、脳血管の収縮によるめまい・失神が代表的です。
  • 過換気症候群への対応は、安心感を与え、ゆっくり吐く呼吸を促すことです。紙袋による再呼吸法は低酸素血症の危険があるため推奨されません。
  • 代謝性の変化の代表例も押さえましょう。嘔吐(胃酸の喪失)は代謝性アルカローシスです。下痢(重炭酸イオンの喪失)、糖尿病ケトアシドーシス、腎不全は代謝性アシドーシスです。代謝性アシドーシスでは代償として換気が増え、高度になるとクスマウル呼吸がみられます。
  • 飽和度(SaO2・SpO2)は割合なので上限は100%です。ヘマトクリットが上がるのは、脱水による血液濃縮や多血症のときです。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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