112AM022|第112回 看護師国家試験 過去問
薬物の吸収速度が最も速いのはどれか。
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正解: 3
正答
3.静脈内注射
この問題のポイント
投与経路ごとに、薬物が投与部位から血液中へ入るまでの過程を比べる問題です。鍵は、「吸収」を投与部位から全身循環(血液中)へ移行することと正しく理解することです。血管内へ直接入れる静脈内注射には、吸収の過程そのものがありません。各経路で薬物が通る道筋と初回通過効果の有無を整理しておくと、類題にも対応できます。
解説
吸収とは
薬物が体内に入ってから効果を現し、体から消えるまでの過程は、吸収・分布・代謝・排泄の4段階で説明されます。このうち吸収は、薬物が投与部位から全身循環の血液中へ移行する過程です。薬物は血液によって作用部位へ運ばれます。そのため、血液中に入るまでの過程が短いほど、作用は速く現れます。
経路ごとの道筋
- 静脈内注射:薬物を直接静脈内へ入れるため、吸収過程がありません。投与量の全量が全身循環に入り(生物学的利用率100%)、急速に注入すれば投与直後に血中濃度が最も高くなります。
- 筋肉内注射:筋肉は血管が豊富で血流が多いため、注射部位から毛細血管へ比較的速く移行します。皮下組織は筋肉より血流が少ないため、吸収は皮下注射より筋肉内注射のほうが速くなります。
- 直腸内投与:坐剤などが直腸粘膜から吸収されます。直腸下部の静脈血は門脈を経ずに下大静脈へ流れるため、ここから吸収された薬物は肝臓での初回通過効果を受けにくいという特徴があります。一方、直腸上部の静脈血は門脈へ向かうため、その部分から吸収された薬物は肝臓を通過します。
- 経口投与:錠剤などが消化管内で崩壊・溶解し、主に小腸の粘膜から吸収されます。その後、門脈を経て肝臓を通過してから全身循環に入ります。胃内容の排出速度や食事の影響を受けるうえ、肝臓で一部が代謝される(初回通過効果)ため、全身循環に届くまでに時間がかかり、届く量も減ります。
以上から、4つの選択肢のうち吸収速度が最も速いのは、吸収過程を経ない静脈内注射です。作用発現の速さは「静脈内注射>筋肉内注射>皮下注射>経口投与」と整理するのが基本です。筋肉内注射と直腸内投与の順位は、薬物や製剤によって変わります。そのため、試験では「静脈内注射が最速」「経口投与は遅い」「筋肉内注射は皮下注射より速い」という確実な関係を押さえてください。なお、吸入は肺胞の広い表面積から速やかに吸収されるため、作用発現が速い経路の一つです。
看護実践とのつながり
静脈内注射は効果が速く確実な反面、投与した薬物を取り戻すことができません。誤薬や過量投与、アナフィラキシーなどの影響も急速に現れます。そのため、次の3点が重要です。
- 投与前に6R(正しい患者・薬剤・目的・用量・用法・時間)を確認する
- 指示された投与速度を守る
- 投与開始直後から患者を観察する
たとえば塩化カリウム注射液は、急速に静脈内へ入ると高カリウム血症による不整脈や心停止を起こします。必ず希釈して点滴で投与し、静脈内への急速注入はしません。
経口投与は吸収が遅い一方で、簡便・非侵襲的で、患者自身が管理しやすい最も基本的な投与経路です。嘔吐がある、意識障害がある、乳幼児で内服が難しいといった場合には、坐剤による直腸内投与が選ばれることがあります。
選択肢の確認
1.経口投与:消化管内で崩壊・溶解したのち主に小腸から吸収され、門脈を経て肝臓を通過してから全身循環に入ります。そのため、選択肢の中で血中に届くまでに最も時間がかかる経路です。肝臓での初回通過効果により、全身循環に届く量も減ることがあります。この問題では誤りですが、「吸収が遅い経路」「初回通過効果を受ける経路」を問う問題では正答になります。
2.筋肉内注射:血流の豊富な筋肉内に注入するため、皮下注射より速く吸収されます。ただし、注射部位から毛細血管へ移行する吸収過程が必要なので、静脈内注射には及びません。「筋肉内注射と皮下注射のどちらが速いか」を問われれば筋肉内注射が正答になるため、比較対象によって答えが変わる点に注意します。なお、持効性(デポ)製剤のように、あえてゆっくり吸収されるよう設計された筋肉内注射薬もあります。
3.静脈内注射:正答。薬物を直接血管内に投与するため吸収過程がなく、投与量の全量が速やかに全身循環に入ります。作用発現が最も速いため救急時の薬剤投与などに用いられます。一方で、副作用や誤薬の影響も直ちに現れるため、投与中・投与後の観察が欠かせません。
4.直腸内投与:直腸粘膜からの吸収を経る経路であり、吸収過程のない静脈内注射より速くなることはありません。直腸下部から吸収された薬物は門脈を経ずに下大静脈へ入るため、初回通過効果を受けにくいのが特徴です。経口投与が難しい患者(嘔吐、意識障害、乳幼児など)にも使えます。「初回通過効果を受けにくい投与経路」を問う問題では正答になり得ます。
覚えるポイント
- 吸収とは、投与部位から全身循環(血液中)へ移行すること。静脈内注射には吸収過程がなく、作用発現が最も速い。
- 作用発現の速さの基本は「静脈内注射>筋肉内注射>皮下注射>経口投与」。筋肉内注射が皮下注射より速いのは、筋肉の血流が豊富なため。
- 初回通過効果は、消化管から吸収された薬物が門脈を経て肝臓で代謝される現象。経口投与で受け、舌下投与や直腸下部からの吸収では受けにくい。
- 舌下投与は口腔粘膜から吸収され、初回通過効果を受けない。狭心症発作時のニトログリセリン舌下錠のように、速効性が必要な場面で使う。
- 静脈内投与は取り消せない。6Rの確認、投与速度の遵守、開始直後の観察を徹底する。塩化カリウムは希釈して点滴で投与し、急速静注しない。
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