112PM033|第112回 看護師国家試験 過去問
健康に関する指標の記述で正しいのはどれか。
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正解: 3
正答
3.受療率は人口10万人に対する推計患者数である。
この問題のポイント
保健統計の指標について、「何を数え、何で割るか」「どの時点の人を対象にするか」という定義を正確に覚えているかを問う問題です。受療率・推計患者数・平均在院日数は、いずれも厚生労働省の患者調査から得られる指標です。調査の対象施設と、調査日・調査期間の決め方が判断の鍵になります。罹患率と有病率については、「新たな発生」と「ある時点での保有」の違い、そして有病期間との関係を理解しているかがポイントです。
解説
患者調査のしくみ
患者調査は、厚生労働省が3年ごとに実施する標本調査の基幹統計調査です。医療施設を利用する患者の傷病の状況を明らかにすることを目的としています。
- 対象施設:全国の病院・一般診療所・歯科診療所です。助産所や介護保険施設は含まれません。
- 調査の内容:大きく2つに分かれます。
- 10月の指定された1日に受療した入院・外来患者を調べる部分
- 9月の1か月間に退院した患者を調べる部分
指標の定義は、この「いつ、どこで受療した人を数えるか」から理解すると整理しやすくなります。
患者調査から得られる主な指標
- 推計患者数:調査日に医療施設で受療した患者の推計数です。入院と外来(往診・訪問診療を含む)に分けて示されます。
- 受療率:推計患者数を推計人口で割り、人口10万人あたりで表したものです。式は「受療率=推計患者数÷推計人口×100,000」です。入院・外来別、性・年齢階級別、傷病分類別、都道府県別に算出されます。
- 総患者数:調査日には受療していなくても、継続的に医療を受けている人を含めた推計数です。再来外来患者数に平均診療間隔などを掛けて推計します。調査日1日の断面である推計患者数とは別の指標です。
- 退院患者の平均在院日数:9月中に退院した患者の在院日数を合計し、退院患者数で割って求めます。
令和2年患者調査の受療率(人口10万対)は、入院960、外来5,658でした。外来は入院のおよそ6倍です。年齢別にみると、おおむね高齢になるほど高くなります。外来では乳幼児期にも高い傾向があります。
平均在院日数を「入院中の人」で計算しない理由
平均在院日数は、病院報告でも算出されます。病院報告では「在院患者延数÷{(新入院患者数+退院患者数)÷2}」という式を使います。患者調査・病院報告のいずれも、調査時点で入院中の人の在院日数を平均したものではありません。
ある1日に入院している人だけを集めて平均すると、次の2つの問題が生じます。
- 長く入院している人ほどその日に入院している可能性が高いため、長期入院者に偏った集団になります。
- まだ退院していないので、在院期間の途中までしか数えられず、実際の在院期間を表しません。
そのため、在院期間が確定した退院患者などをもとに算出します。
罹患率と有病率
- 罹患率:一定期間に新たに発生した患者数を、その期間の観察対象人口で割ったものです。病気の発生の勢いを表します。
- 有病率:ある時点で疾患をもっている人の数を、人口で割ったものです。その時点で病気を抱えている人の多さを表します。
発生と終息が安定しており、有病率が低い場合には「有病率≒罹患率×平均有病期間」という近似が成り立ちます。
- 急性感染症のように、罹患率が高くても数日で治る疾患は有病率が低くなります。
- 短期間で死亡に至る疾患も、有病率は低くなります。
- 高血圧や糖尿病のような慢性疾患は、長く続くため有病率が高くなります。
- 治療の進歩で死亡が減り療養期間が延びると、罹患率が変わらなくても有病率は上がります。
実践とのつながり
受療率や推計患者数は、地域の医療需要や病床の必要量の検討に使われます。有病率は、医療・介護サービスの必要量の見積もりに役立ちます。罹患率は、予防対策の効果評価や原因の研究に用いられます。地域の健康課題を読み解くうえで、指標ごとの意味を区別しておくことが大切です。
選択肢の確認
1.罹患率が高い疾患は有病率が高くなる。:有病率は罹患率だけでなく、病気が続く期間(有病期間)にも左右されます。そのため、罹患率が高くても有病率が高くなるとは限りません。インフルエンザのように短期間で治る疾患や、短期間で死亡に至る疾患では、罹患率が高くても有病率は低くなります。逆に、罹患率が低くても長く続く慢性疾患では有病率が高くなります。「有病期間が同程度なら、罹患率が高いほど有病率も高い」という条件付きでなければ成り立たない記述です。
2.推計患者数には助産所を利用した者を含む。:推計患者数の基になる患者調査は、病院・一般診療所・歯科診療所を対象としています。医療法で病院・診療所とは別に定義される助産所は、調査対象に含まれていません。助産所を利用した妊産婦や新生児は、推計患者数には計上されません。統計で助産所が区分として登場するのは、たとえば人口動態統計の「出生の場所別」の集計です。この区別と混同しないようにしましょう。
3.受療率は人口10万人に対する推計患者数である。:正答。受療率は、調査日の推計患者数を推計人口で割り、人口10万人あたりで表した指標です。分母は患者数や施設数ではなく人口である点、分子は継続受療者を含む総患者数ではなく調査日の推計患者数である点を押さえましょう。
4.平均在院日数は調査時点で入院している者の在院日数の平均である。:患者調査の平均在院日数は、9月中に退院した患者の在院日数の平均です。病院報告では、在院患者延数を新入院患者数と退院患者数の平均で割って求めます。調査時点で入院中の人を対象にすると、長期入院者に偏るうえ、在院期間も途中までしか数えられず、実際の在院期間を正しく表しません。調査日時点の入院患者数を示すのは、推計患者数(入院)のほうです。
覚えるポイント
- 患者調査は厚生労働省が3年ごとに行う標本調査で、対象は病院・一般診療所・歯科診療所です。助産所は含みません。
- 受療率=推計患者数÷推計人口×10万です。外来受療率は入院受療率より高く、おおむね高齢になるほど高くなります。
- 推計患者数は調査日1日に受療した患者の推計、総患者数は継続受療者を含む推計です。両者を区別しましょう。
- 平均在院日数は、退院患者(または入退院患者の平均)をもとに算出します。調査時点で入院中の人の平均ではありません。
- 有病率≒罹患率×平均有病期間です。短期間で治る・死亡する疾患は有病率が低く、慢性疾患は有病率が高くなります。
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