112PM034|第112回 看護師国家試験 過去問

介護保険法と社会福祉士及び介護福祉士法に基づき、介護福祉士が一定の条件を満たす場合に実施できる医行為はどれか。

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正解: 2

正答

2.喀痰吸引

この問題のポイント

介護福祉士が法律に基づいて「業として」行える医行為の範囲を問う問題です。判断の鍵は、2011年の法改正で社会福祉士及び介護福祉士法に位置づけられた「喀痰吸引等」が、喀痰吸引と経管栄養の2種類(5つの行為)に限られていることです。選択肢のうちこの範囲に入るのは喀痰吸引だけで、摘便・血糖測定・インスリン注射は含まれません。

解説

医行為と介護職の関係

医行為とは、医師の医学的判断と技術をもって行わなければ人体に危害を及ぼす、またはそのおそれのある行為をいいます。医行為を業として行えるのは、医師法により医師に限られます。看護師は保健師助産師看護師法に基づき、医師の指示のもとで「診療の補助」として医行為を行います。このため、介護職員は原則として医行為を行えません。

一方で、在宅や介護施設では痰の吸引や経管栄養を必要とする人が増え、看護職員だけで24時間対応するのは難しい状況がありました。以前は、在宅療養中のALS患者や特別養護老人ホームなどの場面で、一定の条件のもとに介護職員等が行うことを、国が通知によって「やむを得ない措置」として認めていました。これを正式な制度にしたのが、2011年(平成23年)の「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」です。この法律で社会福祉士及び介護福祉士法が改正され、2012年(平成24年)4月から施行されています。問題文が「介護保険法と社会福祉士及び介護福祉士法に基づき」としているのは、この経緯を指しています。

介護福祉士等が行える「喀痰吸引等」と条件

対象となる行為は次の5つです。

  • 喀痰吸引:口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部
  • 経管栄養:胃瘻または腸瘻による経管栄養、経鼻経管栄養

これらは医師の指示のもとで行う診療の補助と位置づけられます。保健師助産師看護師法の規定の例外として、介護福祉士が業として実施できるようになりました。介護福祉士以外の介護職員も、喀痰吸引等研修を修了し、都道府県知事から認定証の交付を受ければ実施できます。

「一定の条件」には、主に次のものがあります。

  • 医師の文書による指示がある
  • 看護職員と連携し、対象者の状態を確認・共有している
  • 本人(または家族)の同意がある
  • 実施する事業所が都道府県知事の登録を受けている
  • 実施者が必要な研修を修了している(介護福祉士も実地研修の修了が必要)
  • 対象者ごとに計画書・報告書を作成し、安全確保の体制を整えている

実施できる範囲にも制限があります。口腔内・鼻腔内の吸引は咽頭の手前までです。気管カニューレ内部の吸引は、カニューレの先端を越えない範囲に限られます。経管栄養でも、胃瘻・腸瘻の状態の確認と、経鼻胃管が正しい位置に入っているかの確認は看護職員が行います。

「医行為ではない」とされる行為との区別

2005年(平成17年)の厚生労働省通知では、次の行為を、容態が安定しているなどの条件つきで、原則として医行為ではないと整理しています。

  • 電子体温計による腋窩での体温測定
  • 自動血圧測定器による血圧測定
  • 軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く)
  • 一包化された内服薬の内服介助、坐薬の挿入
  • 市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器による浣腸

これらは「医行為ではないから」介護職員が行える行為です。「医行為であるが法律の特例で認められる」喀痰吸引等とは、位置づけが異なります。

看護師にとってこの知識は、介護職員と協働するときに必要です。どこまでを任せられるか、どこからを看護職員が担うかを判断し、指導や緊急時対応の役割を果たすための土台になります。

選択肢の確認

1.摘便:肛門から指を挿入して直腸内の便を用手的に除去する行為です。直腸粘膜の損傷や出血、迷走神経反射による血圧低下や徐脈を起こすおそれがあるため医行為にあたり、看護職員が医師の指示のもとで状態を観察しながら行います。法律で介護福祉士に認められているのは痰の吸引と経管栄養の5行為だけで、摘便は含まれません。市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器による浣腸は、条件つきで医行為ではないとされています。これと混同しないようにしましょう。

2.喀痰吸引:正答。社会福祉士及び介護福祉士法に定める「喀痰吸引等」の一つで、口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部の吸引が対象です。医師の文書による指示、看護職員との連携、事業所の都道府県知事への登録、研修の修了などの条件を満たせば、介護福祉士が業として実施できます。ただし、吸引できるのは咽頭の手前まで、またはカニューレの内部までに限られます。

3.血糖測定:指先などを穿刺して採血し血糖値を測る行為は、皮膚を傷つけ、出血や感染のおそれがある医行為です。介護福祉士に法律上認められた行為には含まれません。なお、2022年(令和4年)12月の厚生労働省通知では、持続血糖測定器のセンサーの貼付や測定値の読み取りが医行為に当たらないと整理されました。これは「医行為ではない」という別の枠組みの話であり、介護福祉士に特例で認められた医行為が増えたわけではありません。

4.インスリン注射:皮下に針を刺して薬剤を投与する行為です。単位数の誤りによる低血糖など重大な危険を伴う医行為であり、介護福祉士には認められていません。糖尿病の人が自分で注射する自己注射は本人の行為です。介護職員が関われるのは、医師の指示したタイミングでの声かけや見守り、未使用の注射器の手渡しなどの周辺の支援にとどまります。この周辺の支援も、上記の2022年の通知で整理されたものです。

覚えるポイント

  • 介護福祉士等が行える「喀痰吸引等」は2種類5行為です。喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)と、経管栄養(胃瘻・腸瘻、経鼻経管栄養)です。
  • 根拠は2011年の法改正(2012年4月施行)です。医師の指示のもとで行う診療の補助として、保健師助産師看護師法の例外に位置づけられています。
  • 条件は、医師の文書による指示、看護職員との連携、本人の同意、事業所の都道府県知事への登録、研修の修了です。
  • 範囲の制限として、口腔・鼻腔の吸引は咽頭の手前まで、気管カニューレはカニューレ内部までです。経鼻胃管の位置確認と胃瘻の状態確認は看護職員が行います。
  • 摘便、注射、穿刺を伴う血糖測定は介護福祉士には認められていません。体温測定、自動血圧計、軟膏塗布、ディスポーザブル浣腸器による浣腸などは「医行為ではない」行為として別枠で覚えます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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