112PM032|第112回 看護師国家試験 過去問
生活保護法の扶助の種類とその内容の組合せで正しいのはどれか。
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正解: 1
正答
1.医療扶助 ― 医療にかかる費用
この問題のポイント
生活保護法が定める8種類の扶助について、それぞれ何の費用を賄うのかを問う問題です。判断の鍵は、各扶助の範囲に付いている限定です。教育扶助は義務教育まで、住宅扶助は家賃や補修などの維持費で購入は含まない、出産扶助は分娩そのものの費用に限る、という3点を押さえていれば、選択肢2〜4を除外できます。医療扶助が医療費を賄い、原則として現物給付で行われることは、看護職が臨床で直接かかわる知識でもあります。
解説
生活保護制度の基本
生活保護法は、日本国憲法第25条の生存権の理念に基づく法律です。生活に困窮するすべての国民に、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的としています。
制度の根幹には、次の4つの原理と4つの原則があります。
- 4つの原理:国家責任、無差別平等、最低生活保障、補足性
- 4つの原則:申請保護、基準及び程度、必要即応、世帯単位
補足性の原理とは、保護より先に、資産・能力その他あらゆるものを活用することを求める考え方です。扶養義務者による扶養や他の法律による給付も、保護に優先して行われます。
8種類の扶助とその範囲
生活保護法は保護の種類として次の8つを定め、世帯の状況に応じてこれらを単独で、または組み合わせて行います。
- 生活扶助:衣食その他、日常生活の需要を満たすための費用(食費、被服費、光熱水費など)
- 教育扶助:義務教育に伴って必要な教科書などの学用品、通学用品、学校給食など
- 住宅扶助:家賃・間代・地代などの住居費、住宅の補修その他住宅の維持に必要な費用
- 医療扶助:診察、薬剤・治療材料、医学的処置・手術、入院、居宅での療養上の管理と世話(訪問看護など)、通院などの移送
- 介護扶助:介護保険法の要介護者・要支援者などに対する介護サービス
- 出産扶助:分娩の介助、分娩前後の処置、脱脂綿・ガーゼなどの衛生材料
- 生業扶助:生業に必要な資金・器具、技能の修得、就労のために必要なもの(高等学校等就学費を含む)
- 葬祭扶助:検案、遺体の運搬、火葬・埋葬、納骨など葬祭に必要な費用
給付の方法は、原則として金銭給付です。ただし医療扶助と介護扶助は、原則として現物給付で行われます。医療扶助では、受給者は生活保護法の指定医療機関で診療を受け、医療費は公費から医療機関に支払われます。そのため本人の窓口負担は原則としてありません。
医療扶助と医療保険の関係
生活保護を受けている世帯は、国民健康保険の被保険者から除外されます。後期高齢者医療制度も同様に適用除外です。そのため、これらの制度に加入していた人が保護を受けると、医療費は原則として全額が医療扶助の対象になります。一方、会社の健康保険などの被用者保険に加入している場合は、保険給付が優先されます(補足性の原理による他法優先)。この場合、医療扶助の対象になるのは自己負担分です。
臨床では、経済的な理由で受診や服薬を中断している患者、入院費の支払いに不安を抱える患者に出会うことがあります。医療扶助の仕組みを知っていれば、医療ソーシャルワーカーや福祉事務所につなぎ、必要な医療の継続を支援できます。退院支援で在宅療養の体制を整える場面でも、訪問看護や移送が医療扶助、介護サービスが介護扶助で賄われることを理解しておくと役立ちます。
実施体制
保護の決定と実施は、都道府県知事、市長、および福祉事務所を設置する町村長が行い、実務は福祉事務所が担います。費用は国が4分の3、地方が4分の1を負担します。民生委員は、保護事務の執行に協力する協力機関と位置づけられています。
正答に至る判断
問われているのは「扶助の種類」と「内容」の組合せです。各扶助の範囲には明確な境界があります。
- 教育扶助は義務教育に限られる
- 住宅扶助は住むための費用で、財産の取得にあたる購入は含まない
- 出産扶助は分娩に直接必要な費用に限られる
選択肢2〜4は、いずれもこの境界を越えた内容になっています。限定のない基本的な対応を示している選択肢1が正答です。
選択肢の確認
1.医療扶助 ― 医療にかかる費用:正答。医療扶助は、病気やけがの診察、薬剤・治療材料、処置・手術、入院、訪問看護などの療養上の世話、通院などの移送を対象とし、医療にかかる費用を賄います。原則として指定医療機関での現物給付で行われ、本人の窓口負担は原則としてありません。
2.教育扶助 ― 高等学校以上の教育にかかる費用:教育扶助が対象とするのは義務教育(小学校・中学校など)に伴う費用だけなので、誤りです。具体的には、教科書などの学用品、通学用品、学校給食などが対象です。高等学校等の就学費用は、2005(平成17)年度から**生業扶助の「高等学校等就学費」**として支給されています。「高校の費用なら教育扶助」と思い込みやすい点が引っかけです。大学などへの就学費用は、どの扶助の対象にもなっていません。
3.住宅扶助 ― 住宅の購入にかかる費用:住宅扶助の対象は、借家・借間の家賃や間代、地代、住宅の補修など住宅の維持に必要な費用で、購入費用は含まれません。生活保護は最低限度の生活を保障する制度であり、財産の取得を援助するものではないためです。住宅ローンの返済に保護費を充てることも、原則として認められていません。居住用の持ち家の保有が認められる場合も、住宅扶助で扱うのは補修などの維持費です。
4.出産扶助 ― 新生児の育児用品にかかる費用:出産扶助の範囲は分娩に直接必要な費用に限られ、新生児の育児用品は含まれません。具体的には、分娩の介助、分娩前後の処置、脱脂綿・ガーゼなどの衛生材料が対象です。新生児の衣類など日常生活上の需要は、衣食その他の日常生活を支える生活扶助の領域で扱われます。「出産」という言葉から育児に必要な物品まで含むと考えないよう注意が必要です。
覚えるポイント
- 生活保護の扶助は8種類:生活・教育・住宅・医療・介護・出産・生業・葬祭
- 給付は原則として金銭給付です。医療扶助と介護扶助は原則として現物給付で、それぞれ指定医療機関・指定介護機関を通じて行われます。
- 教育扶助は義務教育までで、高等学校等就学費は生業扶助に含まれます。
- 住宅扶助は家賃・地代・補修などの維持費で、購入費は含みません。出産扶助は分娩の介助・処置・衛生材料で、育児用品は含みません。
- 4原理(国家責任・無差別平等・最低生活保障・補足性)と4原則(申請保護・基準及び程度・必要即応・世帯単位)を区別して覚えます。
- 実施機関は福祉事務所で、費用は国4分の3・地方4分の1です。生活保護受給者は国民健康保険と後期高齢者医療の適用除外で、医療費は医療扶助で賄われます。
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