112PM058|第112回 看護師国家試験 過去問
母体保護法に規定されているのはどれか。
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正解: 4
正答
4.経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのある場合の人工妊娠中絶
この問題のポイント
母性を保護する法律は複数あります。この問題は、それぞれの規定がどの法律に属するかを区別できるかを問うています。母体保護法の柱は「不妊手術」「人工妊娠中絶」「受胎調節の実地指導」の3つで、選択肢の中の「人工妊娠中絶」という語が決め手になります。休業と就業制限は労働基準法、妊娠を理由とする不利益取扱いの禁止は男女雇用機会均等法と整理しておけば、迷わずに解けます。
解説
母体保護法とは
母体保護法は、不妊手術と人工妊娠中絶に関する事項などを定めることで、母性の生命と健康を保護することを目的とする法律です。前身は1948年に制定された優生保護法です。1996年の改正で優生思想に基づく規定が削除され、現在の名称になりました。主な規定は次の3つです。
- 不妊手術:生殖腺を除去せずに生殖を不能にする手術です。妊娠や分娩が母体の生命に危険を及ぼすおそれがある場合などに、本人と配偶者の同意を得て医師が行います。
- 人工妊娠中絶:法律で定められた要件を満たす場合に、指定医師が行います(詳しくは次の項)。
- 受胎調節の実地指導:避妊用の器具を使う受胎調節の指導を、医師以外の者が業として行う場合の規定です。都道府県知事が認定する講習を修了し、知事の指定を受けた助産師・保健師・看護師(受胎調節実地指導員)でなければ行えません。
人工妊娠中絶の要件
法律上、人工妊娠中絶は「胎児が母体外において生命を保続することのできない時期に、人工的に胎児とその附属物を母体外に排出すること」と定義されています。この時期は、厚生省(現・厚生労働省)の通知で通常妊娠満22週未満とされています。
実施できるのは、都道府県医師会が指定する指定医師です。対象となるのは次のいずれかに該当する場合です(第14条)。
- 妊娠の継続または分娩が、身体的または経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのある場合
- 暴行や脅迫によって、または抵抗・拒絶ができない間に姦淫されて妊娠した場合
同意は原則として本人と配偶者の両方から得ます。配偶者が知れないとき、配偶者が意思を表示できないとき、妊娠後に配偶者が亡くなったときは、本人の同意だけで足ります。実施した医師は、その月の手術結果を取りまとめ、翌月10日までに理由を記して都道府県知事に届け出ます。
注意したいのは、「経済的理由」は単独では要件にならず、「母体の健康を著しく害するおそれ」と結びついて初めて要件になる点です。また、胎児の疾患や障害を理由とする中絶の規定(いわゆる胎児条項)はありません。刑法には堕胎罪がありますが、母体保護法の要件を満たして指定医師が行う中絶は処罰されません。なお、妊娠12週以降の中絶は死産の届出の対象にもなります。
働く女性の母性保護は別の法律
母性保護という言葉から母体保護法を連想しがちですが、職場での保護は労働関係の法律が担っています。
- 労働基準法(労働条件の最低基準):産前休業(6週間、多胎妊娠は14週間、本人の請求による)、産後休業(8週間)、妊産婦の危険有害業務の就業制限、妊娠中の軽易業務への転換、妊産婦の請求による時間外労働・休日労働・深夜業の制限、育児時間など
- 男女雇用機会均等法(雇用の場での均等な機会と待遇):妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止、母性健康管理措置(保健指導や健康診査を受ける時間の確保、医師等の指導事項を守るための通勤緩和・休憩・勤務時間短縮など)、ハラスメント防止措置
臨床では、看護師が人工妊娠中絶を受ける女性の同意書を確認したり、身体面・心理面を支えたり、プライバシーを保護したりします。働く妊婦に対しては、医師の指導事項を事業主に伝える「母性健康管理指導事項連絡カード」を活用するよう助言します。どの支援がどの法律に根拠をもつのかを知っておくと、実践でも適切な情報提供ができます。
選択肢の確認
1.産後の休業:産後の休業は労働基準法第65条に定められた規定で、母体保護法には含まれていません。産後8週間は、本人の請求の有無にかかわらず就業させてはならない強制的な休業です。産後6週間を経過した女性が請求し、医師が支障ないと認めた業務に限って就業できます。本人の請求を前提とする産前休業との違いがよく問われます。また、休業中の所得を保障する出産手当金は健康保険法、育児休業は育児・介護休業法の規定です。「休業」という語だけで同じ法律と考えないよう注意しましょう。
2.妊娠中の女性の危険有害業務の就業制限:これは労働基準法第64条の3に定められた規定です。重量物を扱う業務や有害ガスを発散する場所での業務など、妊娠・出産・哺育に有害な業務への就業が制限されます。対象は妊娠中だけでなく、産後1年を経過しない女性も含めた「妊産婦」です。「母体を守る」という趣旨から母体保護法と取り違えやすいのですが、職場での就業制限は労働法の領域です。
3.妊娠したことを理由とした不利益な取扱いの禁止:これは男女雇用機会均等法第9条に定められた規定です。妊娠・出産、産前産後休業の請求や取得などを理由とする解雇、降格、雇止めなどの不利益な取扱いを禁止しています。さらに、妊娠中や産後1年以内の女性の解雇は、事業主が妊娠等を理由とする解雇ではないと証明しない限り無効とされます。育児休業の申出や取得を理由とする不利益取扱いの禁止は、育児・介護休業法で定められている点も区別しておきましょう。
4.経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのある場合の人工妊娠中絶:正答。母体保護法第14条が定める人工妊娠中絶の要件の一つです。条文では「身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」とされており、指定医師が妊娠満22週未満の時期に、原則として本人と配偶者の同意を得て行います。経済的理由は、母体の健康を著しく害するおそれと結びついて初めて要件となる点がポイントです。
覚えるポイント
- 母体保護法の3本柱は、不妊手術・人工妊娠中絶・受胎調節の実地指導です。前身は優生保護法で、1996年に改正・改称されました。
- 人工妊娠中絶は、指定医師(都道府県医師会が指定)が通常妊娠満22週未満に行います。要件は「身体的または経済的理由で母体の健康を著しく害するおそれ」と「暴行・脅迫などによる妊娠」の2つで、胎児条項はありません。
- 中絶の同意は原則として本人と配偶者の両方から得ます。実施した医師は、翌月10日までに都道府県知事へ届け出ます。
- 受胎調節実地指導員は、都道府県知事が認定する講習を修了し、知事の指定を受けた助産師・保健師・看護師です。
- 労働基準法:産前6週間(多胎14週間)は請求による休業、産後8週間は強制休業(6週間後は本人の請求と医師の判断で就業可)です。ほかに、妊産婦の危険有害業務の就業制限、軽易業務への転換、時間外・深夜業の制限を定めています。
- 男女雇用機会均等法は、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止と母性健康管理措置を定めています。育児休業は育児・介護休業法、妊娠の届出と母子健康手帳は母子保健法です。
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