112AM056|第112回 看護師国家試験 過去問

入院中の高齢者への看護師の対応で適切なのはどれか。

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正解: 4

正答

4.退院後の生活を予測して情報収集する。

この問題のポイント

入院という環境の変化が高齢者に与える影響を理解し、その影響を小さくする関わり方を選ぶ問題です。影響としては、混乱、せん妄、疲労、生活機能の低下があります。高齢者は新しい環境に慣れるまで時間がかかり、記憶・聴覚・体力にも余裕が少ないため、次の3つが基本になります。

  • 関わる人の変化を少なくする
  • 情報収集は分けて行う
  • 説明は目に見える形で補う

そのうえで、入院は元の生活に戻るための期間なので、入院時から退院後の生活を見すえて情報を集めることが最も適切な対応です。

解説

入院が高齢者に与える影響

高齢者にとって入院は、病気そのものに加えて「環境が大きく変わる」出来事です。次の3点を押さえておくと、各選択肢の良し悪しを判断できます。

  • リロケーションダメージ(リロケーション効果):住み慣れた場所から病院のように慣れない場所へ移ることで、混乱、不安、抑うつ、せん妄、食欲低下などが起こりやすくなります。場所や設備だけでなく、周りの人の顔ぶれが変わることも負担になります。
  • 生活機能の低下:安静や臥床が続くと、筋力、関節の動き、心肺機能が短期間で落ちます(廃用症候群)。病気が治っても「歩けない」「トイレに一人で行けない」状態になり、自宅に戻れなくなることがあります。
  • 認知・感覚・体力の変化:新しいことを覚えて保つ力や、情報を処理する速さが低下し、集中が続く時間も短くなります。老人性難聴は高い音から聞こえにくくなる感音性難聴なので、早口や高い声の説明は聞き取りにくくなります。

対応の原則

これらをふまえると、入院した高齢者への関わりは次のように整理できます。

  • 人的環境の変化を最小限にする:受け持ち看護師を決め、できるだけ同じ看護師が継続して関わり、顔なじみの関係をつくります。使い慣れた眼鏡、補聴器、時計、日用品を持ち込んでもらうことも混乱の予防になります。
  • 情報収集は短時間・複数回・多方面から:本人の体調や疲れ具合を見ながら、何回かに分けて聴きます。家族、介護支援専門員、かかりつけ医の紹介状、お薬手帳なども活用します。
  • 説明は視覚を併用し、繰り返す:大きな文字で書いたものやカレンダー、時計を使い、低めの声でゆっくり、はっきり伝えます。こうした見当識への働きかけは、せん妄予防にも役立ちます。
  • 入院時から退院を見すえる:入院の目標を「元の生活にどこまで戻れるか」に置いて、ケアと支援を組み立てます。

正答に至る判断

退院支援は、退院が決まってから始めるものではなく、入院時から始まるものです。高齢者は入院中に生活機能が落ちやすく、入院期間も短くなっています。そのため、早い段階で次のような情報を把握しておく必要があります。

  • 入院前のADL・IADL
  • 住まいの構造(段差、階段、トイレや浴室の様子)
  • 同居家族と介護力
  • 要介護認定の有無と利用していたサービス
  • 経済状況
  • 本人と家族の意向

これらが分かると、「退院までに自宅のトイレまで歩けるようにする」のように入院中の目標を具体的に立てられます。リハビリテーション、多職種での話し合い、地域の介護支援専門員や訪問看護との連携も、早めに準備できます。臨床では、入院時のアセスメントで「退院に向けて支援が必要な人」を早く見つけ、病棟と退院支援部門、地域が情報を共有する流れになっています。この問題の正答はその出発点にあたります。

選択肢の確認

1.入院当日から複数の看護師が関わる。:入院直後の高齢者は、慣れない環境にいるだけで混乱や不安が強まりやすく、関わる看護師が次々に変わると、誰に何を頼めばよいか分からなくなります。これは人的環境の変化によるリロケーションダメージを大きくし、せん妄の誘因にもなります。できるだけ担当を固定し、交代するときも情報を共有して対応を統一するのが適切です。多職種がチームで関わること自体は大切ですが、それは「一貫した方針で関わる」という意味であり、顔ぶれを増やすこととは違います。

2.1回の訪室で多くの情報を聴取する。:高齢者は集中が続く時間が短く、入院時は体調も不安定なので、一度に長く聴き取ると疲れや混乱を招きます。答えの正確さも下がります。本人の状態を見ながら短時間の聴取を何回かに分け、家族や介護支援専門員、紹介状、お薬手帳などからも情報を集めるのが適切です。緊急時のアレルギーや服薬の確認のように、すぐ必要な情報だけは優先して確認します。

3.1日のスケジュールは口頭で説明する。:口頭説明そのものは必要ですが、口頭だけでは、聴力や記憶の保持が低下した高齢者には伝わりにくく、忘れやすくなります。検査や食事、入浴の時間などは大きな文字で書いて見える場所に掲示したり、時計やカレンダーを見ながら説明したりして、視覚的な手がかりを併用します。必要に応じて繰り返し伝えることも大切です。

4.退院後の生活を予測して情報収集する。:正答。高齢者は入院中の安静や環境の変化によって生活機能が落ちやすいため、入院時から退院後の生活を見すえて情報を集めることが重要です。入院前の生活機能、住環境、家族の介護力、利用中のサービス、本人の希望を早期に把握すると、入院中の目標が具体的になり、退院支援や地域との連携も遅れずに進められます。

覚えるポイント

  • リロケーションダメージ:住み慣れた環境から移ることで生じる混乱、不安、抑うつ、せん妄などです。予防の基本は、人的・物的環境の変化を最小限にすること(担当の固定、使い慣れた物の持ち込み)です。
  • 高齢者からの情報収集は「短時間・複数回・多方面から」です。本人だけでなく、家族、介護支援専門員、紹介状、お薬手帳も活用します。
  • 高齢者への説明は、低めの声でゆっくり、はっきり話し、文字や掲示などの視覚的手段を併用して、繰り返し伝えます。老人性難聴は高音域から低下する感音性難聴です。
  • 退院支援は入院時から始めます。入院前のADL・IADL、住環境、介護力、利用サービス、本人と家族の意向を早期に把握します。
  • 高齢者の入院では廃用症候群とせん妄が起こりやすいため、早期離床、生活リズムの維持、見当識への働きかけが予防の柱になります。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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