112AM057|第112回 看護師国家試験 過去問

1歳6か月の身体発育曲線(体重)を示す。異常が疑われるのはどれか。

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正解: 3

正答

3.③

この問題のポイント

1歳6か月児の体重の発育曲線を見て、異常を疑う経過を見分ける問題です。発育曲線は、ある時点の値がどこにあるかよりも、測定値をつないだ線が基準曲線(平均・±1.0SD・±2.0SD)と平行に伸びているかで評価します。③は12か月以降ほぼ横ばいになり、それまで重なっていた平均の曲線から下へ離れています。これは体重増加不良にあたるため、異常が疑われます。上寄りの①や小さく生まれた④は、位置が偏っていても基準曲線に沿って増えています。ここが見分けの鍵です。

解説

図は、横軸が月齢(か月)、縦軸が体重(kg)の発育曲線です。上から+2.0SD、+1.0SD、平均、−1.0SD、−2.0SDの5本の基準曲線が引かれています。黒い点は出生時から18か月(1歳6か月)までに測った体重で、点線はそれをつないだものです。①〜④は、図の1.〜4.のグラフにあたります。

発育曲線の読み方

SD(標準偏差)は、同じ月齢の子どもの値がどれだけばらついているかを表す尺度です。正規分布では、平均±1SDの範囲に約68%、±2SDの範囲に約95%が入ります。そのため、−2.0SDから+2.0SDの間がおおむね標準的な範囲です。母子健康手帳の発育曲線はパーセンタイル(小さいほうから数えて何%目にあたるか)で描かれており、3パーセンタイルから97パーセンタイルの帯に94%の子どもが入ります。表し方は違っても、読み方は同じです。

評価では、次の2つを分けて考えます。

  • 位置:同じ月齢の集団の中で、上寄り・中央・下寄りのどこにいるか。
  • 推移:測定値をつないだ線が、基準曲線とほぼ平行に伸びているか(発育の速度が保たれているか)。

体格には個人差があります。上寄りや下寄りの位置でも基準曲線に沿ってたどる子は、多くが体質的に大きい、または小さい子です。反対に、線が基準曲線を下向きに横切る、横ばいになる、減っていくといった動きは、発育の速度が保てなくなったサインです。その時点の値が標準範囲内でも、異常を疑います。急に上向きに横切っていく場合は、肥満傾向に注意します。体重は衣服や食事・排泄の前後でも変わるため、1回の値だけで判断せず、複数の点をつないで傾きをみるのが原則です。

4つのグラフの比較

①は上寄り、②は中央よりやや上、④は−2.0SD付近の下寄りと、位置はそれぞれ違います。しかし、どれも近くの基準曲線と平行に増え続けています。

③だけは様子が違います。12か月までは平均の曲線にほぼ重なって順調に増えていましたが、12か月から18か月にかけて点線がほぼ水平になり、体重は約9.5kgからほとんど増えていません。図の平均の曲線はこの6か月で約9.5kgから約10.5kgへ上がっています。そのため、③の線は平均の曲線から下へ離れ、−1.0SDの曲線に近づいています。

18か月時点の体重だけを比べると、③(約9.6kg)は④(約8.8kg)より重く、±2.0SDの範囲にも入っています。それでも異常が疑われるのは、発育の速度が落ちた③です。値の大小ではなく、線の動きで判断することが、この問題の核心です。

1歳を過ぎると、体重の増え方は乳児期よりゆるやかになります。体重は生後3〜4か月で出生時の約2倍、1歳で約3倍になり、その後は伸びが鈍ります。ただし、このゆるやかさは基準曲線の傾きにすでに反映されています。正常なら、子どもの線も基準曲線と平行にゆるやかになるだけです。③のように基準曲線から離れていく横ばいは、生理的な変化では説明できません。

③の経過から考えること

12か月までは平均に沿っていたので、生まれつきの体格ではなく、1歳以降に何らかの原因が加わったと考えます。体重増加不良の主な原因には次のようなものがあります。

  • 摂取不足:離乳食から幼児食への移行がうまく進まない(離乳の完了は生後12〜18か月ごろ)、食事の量や内容の不足、偏食など。
  • 吸収障害・喪失:慢性の下痢や嘔吐など。
  • 消費の増大:先天性心疾患、慢性の感染症など。
  • 内分泌・代謝の病気。
  • 心理社会的要因:ネグレクトを含む不適切な養育、養育者の心身の不調や経済的困窮。

看護では、次の点をあわせて確認します。

  • 身長と頭囲の曲線
  • 食事の内容・量・回数
  • 排便や嘔吐の状況、病気の経過
  • 運動・言語の発達
  • 家庭での養育状況

一般に、栄養が不足すると体重の伸びが先に鈍ります。一方、甲状腺機能低下症や成長ホルモン分泌不全などの内分泌疾患では、身長の伸びが先に鈍ります。そのため、身長と体重の曲線を並べてみると原因を絞る手がかりになります。必要に応じて小児科の受診につなぎます。虐待が疑われる場合は、児童虐待防止法にもとづき市町村や児童相談所へ通告します。

母子保健法にもとづいて市町村が行う1歳6か月児健康診査は、こうした変化に気づく大切な機会です。母子健康手帳の曲線に点を重ね、保護者と一緒に線の向きを確かめることが早期発見につながります。

選択肢の確認

1.①:出生時は約4.0kgと大きめです(巨大児の基準は4,000g以上)。生後4か月ごろまでは+2.0SD付近、その後は+1.0SDと+2.0SDの間を、基準曲線とほぼ平行に増え続けています。12か月の約11.2kgから18か月の約12.6kgへ約1.4kg増えており、発育の速度は保たれています。上寄りでも曲線を急に上向きに横切る動きはなく、体質的に大きめの子の経過と考えられるため、異常を疑う根拠にはなりません。なお、体重が多いことだけでは肥満と判断できません。身長とのバランス(乳幼児ではカウプ指数=体重(g)÷身長(cm)²×10など)で評価します。

2.②:出生時は約3.5kgで、その後は平均と+1.0SDの間を多少上下しながら、基準曲線に沿って増え続けています(18か月で約11kg)。基準曲線を横切って離れていく動きはありません。位置・推移とも標準的な範囲の順調な経過で、異常を疑う所見はありません。

3.③:正答。出生時から12か月までは平均の曲線にほぼ重なっていましたが、12か月(約9.5kg)から18か月までの6か月間は点線がほぼ水平です。この間の増加は0.1〜0.2kg程度にとどまっています。同じ期間に平均の曲線は約1kg上がるため、線は平均から下へ離れて−1.0SDの曲線に近づいています。18か月の値は±2.0SDの範囲内で、選択肢4より重いものの、発育の速度が急に落ちた体重増加不良のパターンです。身長の推移、食事、疾患、養育環境を確認し、原因を調べる必要があります。

4.④:出生時は約2.0kgで、低出生体重児(2,500g未満)にあたります。その後は−2.0SDの曲線にほぼ沿って(わずかに上を)、基準曲線と平行に増え続けています。12か月の約7.7kgから18か月の約8.8kgへ約1kg増えており、発育の速度は平均の曲線と同程度に保たれています。18か月の体重は4つの中で最も軽いものの、小さく生まれた子がその子なりの道筋で育っている経過です。位置が低いことだけで異常とは判断しません。ただし下限に近いため、身長や発達も含めて経過をみていくことは大切です。

覚えるポイント

  • 発育曲線は「位置」と「推移」を分けてみます。基準曲線と平行に伸びていれば、上寄りや下寄りでも多くはその子なりの発育です。1回の値だけでは判断しません。
  • 異常を疑う推移は、基準曲線を下向きに横切る、横ばい、減少(体重増加不良)です。急に上向きに横切る場合は肥満傾向に注意します。位置が±2SDの範囲やパーセンタイルの3〜97の帯から外れる場合も、推移とあわせて精査を考えます。
  • 正規分布では平均±2SDに約95%が入ります。母子健康手帳の発育曲線は3〜97パーセンタイルの帯で、94%の子どもがこの中に入ります。
  • 体重増加不良では、身長・頭囲の曲線、食事、病気、発達、養育環境(ネグレクト)をあわせて評価します。栄養不足では体重が先に、内分泌疾患では身長が先に伸び悩みます。
  • 体重は生後3〜4か月で出生時の約2倍、1歳で約3倍になります。身長は1歳で約1.5倍、4歳ごろで約2倍です。出生体重2,500g未満は低出生体重児、4,000g以上は巨大児です。
  • 1歳6か月児健康診査と3歳児健康診査は、母子保健法にもとづき市町村が実施します。

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