112AM069|第112回 看護師国家試験 過去問
Aさん(80歳、女性)は1人暮らしで、在宅酸素療法〈HOT〉を受けている。訪問看護師はAさんに停電時を想定した避難行動の指導を行うことにした。Aさんの停電時の避難行動で優先度が高いのはどれか。
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正解: 4
正答
4.酸素濃縮器から酸素ボンベに切り替える。
この問題のポイント
在宅酸素療法(HOT)で使う酸素濃縮器が電気で動く機器であることを踏まえ、停電で何が起こり、何を最初に守るべきかを判断する問題です。手がかりは「在宅酸素療法」「停電時」「1人暮らし」の3つです。「停電は酸素供給の途絶である」と結びつけられるかが鍵になります。避難行動のなかでも、呼吸という生命に直結する機能の確保を最優先に置きます。
解説
問題文から読み取ること
Aさんは80歳で1人暮らしをしており、HOTを受けています。HOTの対象は、COPD、肺結核後遺症、間質性肺炎などによる慢性呼吸不全の人が中心です。酸素を吸入することで、日常生活が保たれている状態です。1人暮らしなので、停電が起きたときにそばで助けてくれる人はいません。したがって指導の目的は、Aさんが自分の力で酸素を確保できるようにすることです。
酸素濃縮器と酸素ボンベの違い
- 酸素濃縮器:室内の空気を取り込み、吸着剤で窒素を除いて高濃度の酸素をつくる据え置き型の装置です。コンセントからの電気で動くため、停電すると酸素の供給が止まります。停電をアラームで知らせる機種も多くあります。
- 酸素ボンベ(携帯用):高圧の酸素を充填した容器で、電気を使わずに酸素を供給できます。外出用・非常用として濃縮器と一緒に用意されることが多い機器です。吸気のときだけ酸素を流す呼吸同調器を付けると、同じボンベでより長く使えます。
液化酸素装置も電気を必要としませんが、日本のHOTでは酸素濃縮器が大部分を占めています。
優先度の判断
停電で濃縮器が止まると、Aさんは酸素吸入が途切れた状態になります。慢性呼吸不全の人では、酸素が途切れると短時間で低酸素血症が進みます。その結果、呼吸困難の増悪、意識レベルの低下、不整脈などにつながるおそれがあります。
避難行動を考えるときも、順序は次のとおりです。まず生命を維持する機能を守り、次に火災などの二次災害を防ぎ、最後に移動や連絡を行います。したがって最初の行動は、電気に頼らない酸素ボンベへ切り替えて吸入を続けることです。ボンベに切り替えておけば、その後に自宅の外へ避難する場合も、酸素を持って移動できます。
平時の指導で押さえること
- ボンベの置き場所を決め、暗がりでもすぐ手に取れる位置に置きます。懐中電灯もそばに備えます。
- 切り替えの手順(バルブを開ける、処方流量に合わせる、カニューレをつなぎ替える)を、訪問時に本人に実際に行ってもらって確認します。
- ボンベの残量と予備の本数を定期的に確認し、何時間もつかを把握しておきます。呼吸同調器が電池式であれば、予備の電池も用意します。
- 酸素供給業者、主治医、訪問看護ステーションの連絡先を一覧にし、電話のそばなど目につく場所に貼っておきます。
- 停電中の明かりに、ろうそくなどの火を使わないよう伝えます。酸素には物を燃えやすくする性質(支燃性)があるため、火気から2m以上離すことが基本です。
- 流量は処方どおりとし、息苦しくても自己判断で増やさないよう伝えます。COPDでは、高濃度の酸素によってCO2ナルコーシスを起こす危険があります。
地域の支援体制とも連動させます。市町村の避難行動要支援者名簿への登録や、個別避難計画の作成を進めます。あわせて、避難先で電源やボンベを確保できるかも確認しておきます。
選択肢の確認
1.電気のブレーカーを落とす。:ブレーカーを落とすのは、電気が復旧したときに損傷した配線や倒れた電気器具から出火する「通電火災」を防ぐための行動です。自宅を離れて避難するときに行うもので、酸素が途絶えているという差し迫った問題は何も解決しません。また、自宅にとどまって復旧を待つ場合にブレーカーを落とすと、電気が戻っても濃縮器が再び動きません。「酸素を確保し、家を出る段階で落とす」と整理しておきましょう。
2.玄関の扉を開けて出口を確保する。:扉を開けておくのは、地震の揺れで扉がゆがんで開かなくなるのを防ぐための行動で、地震のときの一般的な安全行動です。しかし本問の状況は停電であり、出口を確保しても酸素の供給は戻りません。酸素が止まったまま動き回ると酸素の消費量が増え、息苦しさを強めるおそれもあります。
3.訪問看護ステーションに連絡をする。:連絡は、状況を伝えてボンベの追加配送や避難の支援を求めるために必要な行動です。ただし、連絡している間も酸素は止まったままです。災害時は電話がつながりにくいこともあるため、酸素を確保してから行います。ボンベの補充は酸素供給業者に依頼するなど、連絡先ごとの役割も平時に決めておきます。
4.酸素濃縮器から酸素ボンベに切り替える。:正答。酸素濃縮器は電気がなければ動かないため、停電時はただちに電気を必要としない酸素ボンベへ切り替え、処方された流量で吸入を続けます。生命維持に直結する酸素化を守る行動であり、その後の避難でもボンベを持って移動できます。
覚えるポイント
- 酸素濃縮器は電気で動きます。停電したら、まず酸素ボンベに切り替えます。
- 災害時の優先順位は、生命維持(呼吸・循環)→ 二次災害の予防(通電火災など)→ 避難・連絡の順です。
- 酸素は支燃性です。火気から2m以上離し、喫煙は禁止です。停電時もろうそくは使いません。
- 酸素流量は処方どおりにします。COPDでは、高濃度の酸素でCO2ナルコーシスの危険があります。
- ボンベの残量(L)=満充填時の酸素量 ×(現在の圧 ÷ 充填圧)です。使用可能時間は、残量 ÷ 流量で求めます(安全係数0.8を掛けて見積もる方法もあります)。
- HOTの保険適用の目安は、PaO2 55Torr以下の人、またはPaO2 60Torr以下で睡眠時・運動時に著しい低酸素血症をきたす人などです。
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