112AM080|第112回 看護師国家試験 過去問

検査の画像(別冊No. 1)を別に示す。狭心症 angina pectoris の手術に最も重要な検査はどれか。

112AM080の問題画像
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正解: 3

正答

3.C
Cは冠動脈造影(CAG)の画像です。

この問題のポイント

5枚の画像がそれぞれ何の検査かを見分け、狭心症の手術(代表は冠動脈バイパス術)の計画に欠かせない情報が得られる検査を選ぶ問題です。手術では「どの冠動脈の、どこが、どの程度狭いか」を知る必要があります。選択肢の中で、それを血管の形として直接示すのは冠動脈造影です。同じ心臓の検査でも、心筋血流シンチグラフィは虚血の有無と範囲をみる「機能」の検査、冠動脈造影は狭窄の部位と程度をみる「形態」の検査です。この違いが判断の鍵になります。

解説

画像の読み取り

まず、5枚の画像が何の検査かを確認します。

  • A:頭部の水平断です。中央の側脳室や脳溝にある脳脊髄液が白く写っています。CTのように頭蓋骨が白く写っていないことから、頭部MRIのT2強調像と分かります。
  • B:鎖骨と肋骨、黒く写る左右の肺野、中央から向かって右に張り出す心陰影が見えます。向かって右(患者の左)の横隔膜の下には胃泡があります。胸部エックス線写真の正面像です。
  • C:上から入ってくる細い管(カテーテル)の先端から造影剤が流れ込んでいます。冠動脈が太い幹から細い枝へ、樹の枝のように分かれて黒く写っています。冠動脈造影です。
  • D:輪(ドーナツ)の形をした小さな画像が番号順に並び、0〜100%の濃淡スケールが付いています。左心室を輪切りにした断層像で、心筋が輪状に写っています。心筋血流シンチグラフィです。画像は上下2組に並んでおり、この検査では一般に負荷時と安静時の画像を並べて比べます。
  • E:上腹部の水平断で、腹部CTです。画像の左側(患者の右)を大きく占める肝臓、その前方の胆嚢、消化管内のガス、中央後方の椎体が写っています。心臓は撮影範囲に入っていません。

手術に必要な情報と検査の役割

問題文の鍵は「手術に」という言葉です。狭心症があるかどうかを診断する検査ではなく、手術を計画するための検査が問われています。

狭心症は、冠動脈の狭窄や攣縮によって心筋への酸素供給が需要に追いつかなくなり、一時的に心筋虚血が起こる病態です。薬物療法(硝酸薬、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、抗血小板薬など)で虚血や症状を十分に抑えられない場合は、血行再建術を検討します。病変の部位や広がりから予後の悪化が心配される場合も同様です。血行再建術には次の2つがあります。

  • 経皮的冠動脈インターベンション(PCI):カテーテルでバルーンやステントを使い、狭窄を広げます。
  • 冠動脈バイパス術(CABG):外科手術です。

冠動脈バイパス術では、内胸動脈や大伏在静脈、橈骨動脈などをグラフト(迂回路となる血管)として使い、狭窄部より先の冠動脈につなぎます。計画には次の情報が欠かせません。

  • 狭窄がどの冠動脈(右冠動脈、左冠動脈主幹部、左前下行枝、左回旋枝)のどこにあるか
  • 狭窄の程度と長さ、病変のある血管の本数
  • グラフトをつなぐ先の血管の太さや状態、側副血行路の有無

これらを直接描き出すのが冠動脈造影です。橈骨動脈・上腕動脈・大腿動脈のいずれかからカテーテルを入れ、大動脈の根元にある冠動脈の入口まで進めます。そこで造影剤を注入し、エックス線で撮影します。PCIとCABGのどちらを選ぶかも、この所見をもとに判断します。一般に、左冠動脈主幹部病変や多枝病変ではCABGが選ばれることが多くなります。PCIも造影で血管を映しながら行います。急性心筋梗塞では、緊急に冠動脈造影を行い、そのままPCIで血流を再開させるのが一般的です。

一方、心筋血流シンチグラフィは、放射性医薬品を静脈に注射し、心筋への取り込み具合から血流を画像にする検査です。運動や薬剤で負荷をかけたときだけ欠損し、安静時には回復する部分は虚血と判断します。負荷時も安静時も欠損している部分は梗塞です。虚血の範囲や、心筋が生きているか(バイアビリティ)が分かるので、血行再建が必要かを考える材料になります。ただし分かるのは「心筋のどこで血流が足りないか」という機能です。「どの血管のどこがどの程度狭いか」という形態は分かりません。バイパスをどこにつなぐかは、冠動脈造影でなければ決められません。

冠動脈造影の前後の看護

冠動脈造影(心臓カテーテル検査)を受ける患者の看護もよく問われます。

  • 検査前:造影剤アレルギーや喘息の既往、腎機能(造影剤腎症の危険)を確認します。ビグアナイド薬(メトホルミン)はヨード造影剤との併用で乳酸アシドーシスを起こすおそれがあるため、休薬の指示を確認します。穿刺部より先の動脈の拍動(大腿動脈から行う場合は足背動脈など)を確かめ、検査後と比べられるようにしておきます。
  • 検査後:穿刺部の出血・血腫と、穿刺部より先の動脈拍動・皮膚の色・冷感・しびれを観察します。大腿動脈から行った場合は、指示された時間、穿刺した側の脚を曲げずに安静を保ちます。橈骨動脈から行った場合は、止血器具で手首を圧迫したまま早くから歩けます。止血時の迷走神経反射(徐脈、血圧低下、吐き気、冷汗)、不整脈や胸痛、遅れて出る造影剤アレルギーにも注意します。水分制限がなければ水分をとるよう促し、造影剤の排泄を助けます。

選択肢の確認

1.A:脳室や脳溝の脳脊髄液が白く写る頭部MRI(T2強調像)で、脳梗塞や脳腫瘍など頭の中の病変をみる検査です。冠動脈は写らないため、狭窄の部位や程度は分かりません。動脈硬化は全身に及ぶことが多いので、冠動脈バイパス術の前に脳血管の病変を確認する目的で頭部の検査を行うことはあります。しかし、手術の計画に最も重要な検査ではありません。

2.B:肺野と心陰影が写る胸部エックス線写真です。心胸郭比による心拡大の評価(成人の立位正面像では50%が目安)や、肺うっ血・胸水の確認に使います。手術前の一般的な検査として撮影されますが、冠動脈そのものは写りません。どこがどの程度狭いかは分からないため、狭心症の手術に最も重要な検査とはいえません。

3.C:正答。カテーテルを冠動脈の入口まで進め、造影剤を注入して撮影した冠動脈造影です。狭窄の部位と程度、病変のある血管の本数、つなぐ先の血管の状態、側副血行路を直接描き出します。バイパスをどの血管のどこにつなぐか、カテーテル治療と冠動脈バイパス術のどちらを選ぶかを決める根拠になるため、狭心症の手術に最も重要な検査です。

4.D:心筋が輪状に写る左心室の断層像が並んだ心筋血流シンチグラフィです。負荷時と安静時の取り込みを比べ、虚血の有無と範囲、心筋が生きているかを評価します。血行再建が必要かを判断する材料になるので迷いやすい選択肢ですが、示すのは血流が足りない心筋の範囲という機能の情報です。血管のどこがどの程度狭いかは分からないため、手術計画の中心にはなりません。

5.E:肝臓、胆嚢、消化管のガス、椎体が写る上腹部の水平断で、腹部の臓器の病変をみる腹部CTです。心臓は撮影範囲に含まれていません。造影剤を使って心臓を撮影する冠動脈CTであれば、カテーテルを使わずに冠動脈の狭窄を評価できます。しかしEはそれとは別の検査で、狭心症の手術の計画には使いません。

覚えるポイント

  • 狭心症の血行再建(冠動脈バイパス術・PCI)の計画には冠動脈造影が必須です。狭窄の部位・程度・病変のある血管の本数・つなぐ先の血管の状態を直接示します。
  • 心筋血流シンチグラフィは機能の検査です。負荷時に欠損し安静時に回復すれば虚血、両方で欠損していれば梗塞と判断します。
  • 狭心症は、12誘導心電図(労作性狭心症は発作時にST低下、冠攣縮性狭心症は発作時にST上昇)、運動負荷心電図、ホルター心電図、心エコー、冠動脈CT、心筋血流シンチグラフィなどで診断・評価します。血行再建の方針は冠動脈造影で決めます。
  • 画像の見分け方:脳脊髄液が白い頭部画像はMRIのT2強調像、肺野と心陰影は胸部エックス線写真、輪状の心筋像が並ぶのは心筋血流シンチグラフィ、カテーテルと枝分かれする血管が写るのは血管造影です。
  • 冠動脈造影の看護:検査前は造影剤アレルギー・腎機能・ビグアナイド薬・穿刺部より先の動脈拍動を確認します。検査後は穿刺部の出血・血腫、末梢の循環、迷走神経反射、遅れて出るアレルギーを観察し、水分をとるよう促します。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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