112PM050|第112回 看護師国家試験 過去問

シクロホスファミドを投与している患者で注意が必要なのはどれか。

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正解: 4

正答

4.出血性膀胱炎 hemorrhagic cystitis

この問題のポイント

抗悪性腫瘍薬・免疫抑制薬であるシクロホスファミドに特徴的な副作用を問う問題です。鍵になるのは、この薬の代謝で生じるアクロレインが尿中に排泄され、膀胱粘膜を傷害するという機序です。抗がん薬ごとの代表的な副作用を正しく対応づけて覚えているかが問われています。

解説

シクロホスファミドとはどんな薬か

シクロホスファミドはアルキル化薬に分類される抗悪性腫瘍薬です。DNAにアルキル基を結合させてDNA鎖どうしを架橋し、DNAの複製を妨げることで細胞を死滅させます。悪性リンパ腫、乳癌、多発性骨髄腫などのがん化学療法に使われます。また、強い免疫抑制作用があるため、ループス腎炎を伴う全身性エリテマトーデス(SLE)や血管炎などの自己免疫疾患、造血幹細胞移植の前処置にも用いられます。がん病棟だけでなく、膠原病内科や腎臓内科でも扱う薬です。

出血性膀胱炎が起こる機序

シクロホスファミドは、そのままでは作用を示さないプロドラッグです。肝臓の代謝酵素(シトクロムP450)で活性化される過程で、抗腫瘍効果を担う活性代謝物とともに、刺激性の強いアクロレインが生じます。アクロレインは腎臓から尿中に排泄され、膀胱内にとどまる間に膀胱粘膜を直接傷害します。

その結果、次のような症状が現れます。

  • 血尿(肉眼的血尿を含む)
  • 頻尿、排尿時痛、残尿感などの膀胱刺激症状
  • 重症例では、凝血塊による尿閉や大量出血

同じアルキル化薬のイホスファミドでも同じ機序で出血性膀胱炎が起こり、こちらはさらに頻度が高いことで知られています。

予防と看護

予防の原則は「アクロレインを薄める」「膀胱にためない」「無毒化する」の3つです。

  • 十分な輸液と水分摂取で尿量を確保し、尿中のアクロレインを希釈します。
  • 尿意がなくても頻回に排尿を促し、膀胱内に尿を長くためないようにします。経口薬の場合は朝に服用し、就寝前に排尿を済ませるよう指導します。
  • 大量投与時などにはメスナを併用します。メスナは尿中でアクロレインと結合し、無毒化します。

観察項目は、尿の色(血尿の有無)、尿量と水分出納、排尿回数、排尿時痛などの症状です。血尿に気づいたら速やかに医師へ報告します。

大量輸液を行う一方で、本剤は抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)を起こすことがあります。そのため、体重増加、浮腫、低ナトリウム血症の徴候(頭痛、倦怠感、意識障害など)にも注意します。

このほかの副作用には、次のものがあります。

  • 骨髄抑制による感染・出血・貧血
  • 悪心・嘔吐、脱毛
  • 性腺機能障害(無月経や無精子症による不妊)
  • 二次発がん(膀胱癌、急性白血病など)
  • 大量投与時の心筋障害

選択肢の確認

1.緑内障 glaucoma:眼圧上昇に特に注意が必要なのは、瞳孔を散大させて隅角を狭める抗コリン薬(アトロピン、ブチルスコポラミンなど)と、長期使用で眼圧を上げる副腎皮質ステロイド薬です。抗コリン薬は緑内障の患者に禁忌とされます。シクロホスファミドの代表的な副作用ではありません。SLEや血管炎の治療では本剤とステロイド薬を併用することが多いため、併用薬の副作用と混同しないようにします。

2.間質性肺炎 interstitial pneumonia:間質性肺炎・肺線維症を起こす代表的な抗がん薬はブレオマイシンです。ほかにメトトレキサート、分子標的薬のゲフィチニブ、抗不整脈薬のアミオダロンなどが知られています。シクロホスファミドでもまれに報告はありますが、本剤に特徴的で頻度が高いのは出血性膀胱炎なので、本問で選ぶ選択肢ではありません。むしろシクロホスファミドは、膠原病に伴う間質性肺炎の治療に使われることもあります。

3.歯肉の肥厚:歯肉増殖は、抗てんかん薬のフェニトイン、免疫抑制薬のシクロスポリン、カルシウム拮抗薬のニフェジピンなどで起こる副作用です。シクロスポリンは同じく免疫抑制目的で使われるため取り違えやすいのですが、シクロホスファミドの副作用としては一般的ではありません。これらの薬を使う患者には、口腔ケアでプラークを除去することが悪化予防に重要です。

4.出血性膀胱炎 hemorrhagic cystitis:正答。肝臓での代謝で生じたアクロレインが尿中に排泄され、膀胱粘膜を傷害して起こる、本剤の代表的な副作用です。十分な輸液と水分摂取、頻回の排尿、メスナの併用で予防し、血尿や排尿時痛の有無を継続して観察します。

覚えるポイント

  • シクロホスファミド(アルキル化薬)では出血性膀胱炎に注意します。原因は代謝産物のアクロレインで、イホスファミドでも同様に起こります。
  • 予防は「十分な輸液・水分摂取」「頻回の排尿で膀胱に尿をためない」「メスナの併用」です。観察項目は血尿、排尿時痛、尿量、水分出納です。
  • 抗がん薬と代表的な副作用の組み合わせは次のとおりです。ブレオマイシン→間質性肺炎・肺線維症、シスプラチン→腎障害・悪心嘔吐、ビンクリスチン→末梢神経障害・便秘、ドキソルビシン→累積投与量に依存する心筋障害、イリノテカン→下痢。
  • 歯肉増殖を起こす薬はフェニトイン、シクロスポリン、ニフェジピンです。緑内障で注意が必要な薬は抗コリン薬と副腎皮質ステロイド薬です。
  • シクロホスファミドは自己免疫疾患の免疫抑制療法にも使われます。骨髄抑制、性腺機能障害、二次発がん、SIADHにも注意します。

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