112PM107|第112回 看護師国家試験 過去問
次の文を読み106〜108の問いに答えよ。Aさん(28歳、初産婦)は妊娠38週1日、順調な経過で経腟分娩した。産後は夫が育児休業を取得し、自宅で夫と2人で子育てをする予定である。産褥1日、バイタルサインは、体温36.7 ℃、脈拍70/分、整、血圧118/68 mmHg、Hb 12.0 g/dL。子宮底は臍下2横指のところに硬く触れている。悪露は赤色で中等量、凝血の混入はない。Aさんは授乳時に後陣痛を訴えている。会陰縫合部に腫脹や発赤はなく、痛みは自制内である。尿意の自覚があり、残尿感や排尿困難感はない。産褥3日、Aさんの夫から「退院後は私が子どもの沐浴をします。子どもの身体の洗い方は動画で学んだのですが、沐浴のときに注意することはありますか。寒い時期なので心配です」と看護師に質問があった。Aさんの夫への説明で適切なのはどれか。
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正解: 1
正答
1.「着替え用の衣類が冷たくないか、沐浴前に確認しておきましょう」
この問題のポイント
寒い時期に父親が行う新生児の沐浴について、安全で体温を下げない方法を説明する問題です。判断の手がかりは、夫の「寒い時期なので心配です」という言葉です。新生児が熱を失いやすい理由(体温調節の未熟さと熱喪失の4つの経路)と、沐浴の湯温・室温・時間の目安を結びつけて判断します。
解説
事例の整理
Aさんは妊娠38週1日に経腟分娩しています。産褥1日の所見(バイタルサイン、Hb、子宮底の高さと硬さ、悪露の性状、会陰部、排尿)はいずれも正常の範囲で、母体の回復は順調です。児は正期産児で、特別な管理を要する情報は示されていません。
退院後は夫が育児休業を取得し、夫婦2人で育児を行う予定です。夫は沐浴を担う意欲があり、身体の洗い方は動画で学んでいます。そのうえで夫が求めているのは「注意すること」、とくに寒い時期への対策です。したがって説明の中心は洗い方の手技ではなく、沐浴中と沐浴後に児の体温を奪わないための準備と環境調整になります。
新生児が冷えやすい理由
- 体重あたりの体表面積が大きく、皮下脂肪が薄いため、熱が逃げやすい。
- ふるえによる熱産生がほとんどできず、主に褐色脂肪組織の代謝(非ふるえ熱産生)に頼る。熱を作るために酸素とエネルギーを消費するため、冷えること自体が児の負担になる。
- 発汗による放熱も未熟なため、暑すぎる環境ではうつ熱を起こしやすい。つまり「冷やさない」と同時に「温めすぎない」ことも必要です。
熱の失われ方は、次の4つの経路で整理します。
- 蒸散(蒸発):濡れた皮膚から水分が蒸発するときに熱が奪われる。沐浴直後に最も起こりやすい。
- 伝導:接触している冷たい物へ熱が移る。冷えた衣類、タオル、マットに寝かせると起こる。
- 対流:冷たい空気の流れ(すきま風、冷房の風)によって熱が奪われる。
- 輻射:直接触れていない冷たい壁や窓に向かって熱が放散される。
沐浴で押さえること
沐浴で最も体温が下がりやすいのは、湯から上げてから衣類を着せ終えるまでの間です。濡れた皮膚から蒸散で熱が奪われるうえに、冷えた衣類を着せると伝導でさらに熱を失います。そこで、湯から上げたらすぐにバスタオルでくるみ、押さえるようにして水分を拭き取り、あらかじめ広げておいた衣類を手早く着せます。肌着と上着は袖を重ねて通しておき、寒い時期は暖かい部屋に置いておくなどして、冷たくないことを事前に確かめます。選択肢1は伝導による熱喪失を防ぐ具体的な助言であり、動画では伝わりにくい「準備」の部分を補っています。
そのほかの目安は次のとおりです。
- 湯温:38〜40 ℃程度(夏はやや低め、冬はやや高め)。湯温計で測り、さらに肘や前腕の内側でも確かめる。
- 室温:24〜26 ℃程度で、すきま風が入らないようにする。冬は脱衣や着衣をする場所も暖めておく。
- 時間:湯に入れている時間は5分程度を目安にし、全体を手早く終える。
- タイミング:授乳直後は吐きやすいため避け、空腹時は泣いて体力を消耗するため避ける。
- 観察:沐浴前に機嫌、体温、皮膚の状態を確認し、発熱や元気がないときは控える。
- 臍:臍帯が取れて乾燥するまでは、沐浴後に臍の水分を拭き取って乾かす。
退院指導では、父親が自分で学んできた努力と、寒さへの気付きを認めることが大切です。そのうえで、環境・準備・安全確認といった具体的な行動に落とし込んで伝えると、退院後に自信をもって沐浴を続けられます。父親の育児参加を支えることは、母親の産褥期の休養にもつながります。
選択肢の確認
1.「着替え用の衣類が冷たくないか、沐浴前に確認しておきましょう」:正答。沐浴後に冷えた衣類を着せると、湯で温まった体の熱が伝導によって奪われます。着替えとバスタオルを事前に準備して冷たくないことを確かめておけば、湯から上げた後の着衣を短時間で済ませられます。寒い時期という夫の心配に直接応える助言です。
2.「10分程度お湯に浸けて赤ちゃんを温めましょう」:新生児を湯に入れる時間は5分程度が目安で、10分も浸けると児の体力を消耗させ、疲労につながります。ベビーバスの湯は時間とともに冷めるため、長く浸けるほど保温になるわけでもありません。体温を保つ要点は「長く温めること」ではなく、湯から上げた後に冷やさないことです。成人の入浴の感覚で「しっかり温まる」と考えると誤りやすい選択肢です。
3.「ベビーバスには50 ℃のお湯を準備しましょう」:沐浴の湯温は38〜40 ℃程度が目安で、50 ℃では皮膚の薄い新生児が熱傷を負う危険があります。寒い時期に湯温を上げる場合でも、40 ℃前後にとどめます。手の感覚だけに頼らず、湯温計で測り、肘や前腕の内側でも確かめるよう伝えることが大切です。
4.「沐浴する場所の室温は30 ℃に設定しましょう」:沐浴時の室温は24〜26 ℃程度が目安で、30 ℃は高すぎます。新生児は発汗による放熱が未熟なため、暑すぎる環境ではうつ熱を起こすおそれがあります。寒さ対策は室温を極端に上げることではなく、すきま風を防ぐ、脱衣や着衣をする場所も暖めておく、衣類とタオルを準備しておく、といった方法で行います。
覚えるポイント
- 沐浴の目安は、湯温38〜40 ℃(夏はやや低め、冬はやや高め。湯温計と肘で確認)、室温24〜26 ℃、湯に入れる時間5分程度です。
- 新生児の熱喪失は蒸散・伝導・対流・輻射の4経路です。冷えた衣類は伝導、濡れた皮膚は蒸散、すきま風は対流、冷たい窓や壁は輻射に対応させて覚えます。
- 最も冷えやすいのは湯から上げた直後です。着替えとバスタオルを広げて準備してから沐浴を始め、上げたら水分を拭き取ってすぐに着せます。
- 新生児は冷えやすい一方で、発汗による放熱が未熟なためうつ熱も起こしやすいので、「温めすぎ」も避けます。
- 沐浴は授乳直後と空腹時を避け、事前に児の体温・機嫌・皮膚を観察してから行います。
- 父親への指導では、意欲と気付きを認め、動画では補いにくい環境・準備・安全確認を具体的に伝えます。
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