35Q31|第35回 介護福祉士国家試験 過去問
今,発達の実験のために,図のようなテーブル(テーブル表面の左半分が格子柄,右半分が透明な板で床の格子柄が透けて見える)の左端に,Kさん(1歳1か月)を座らせた。テーブルの反対側には母親が立っている。Kさんは,格子柄と透明な板との境目でいったん動くのをやめて,怖がった表情で母親の顔を見た。母親が穏やかにほほ笑むと,Kさんは母親の方に近づいていった。Kさんの行動を説明する用語として,最も適切なものを 1 つ選びなさい。

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正解: 4
正答
4.社会的参照
この問題のポイント
判断に迷う状況で、乳児が養育者の表情や声などを手がかりにして状況を判断し、自分の行動を決めることを「社会的参照」といいます。
この問題では、Kさんが母親の顔を見ただけでなく、母親の穏やかな笑顔を確認した後に行動を変えた点が重要です。
解説
図の装置は「視覚的断崖」と呼ばれるものです。テーブルの右半分には透明な板がありますが、その下にある床の格子柄が透けて見えるため、乳児には急に深くなっているように見えます。
Kさんは、格子柄と透明な板との境目で止まり、怖がった表情で母親の顔を見ています。これは、自分だけでは安全かどうかを判断しにくい状況で、信頼する母親の表情から情報を得ようとしている行動です。
さらに、母親が穏やかにほほ笑むと、Kさんは母親の方へ近づきました。このように、他者の感情表出を手がかりにして状況を解釈し、自分の行動を調整することを「社会的参照」といいます。
ひっかけポイント
母親が登場するため「愛着理論」を選びたくなりますが、問われているのは母子の継続的な情緒的結びつきではありません。「母親の表情を確認し、その反応によって行動を変えた」という一連の過程が、社会的参照を示しています。
介護実践でのポイント
子どもだけでなく、認知機能が低下した人なども、不慣れな場面では支援者の表情や声の調子から状況を判断することがあります。まず実際の安全を確認したうえで、穏やかな表情と声で分かりやすく説明し、不安を無理に押さえ込ませないことが大切です。
選択肢の確認
1.自己中心性
誤りです。
自己中心性とは、主にピアジェの発達理論において、他者には自分と異なる見方や考え方があることを十分に理解しにくい特徴をいいます。本事例のように、他者の表情を手がかりに行動することではありません。
2.愛着理論
誤りです。
愛着は、乳幼児と特定の養育者との間に形成される持続的な情緒的結びつきです。母親が安心の基盤となっていることには関連しますが、本事例で直接示されている行動を表す用語は社会的参照です。
3.向社会的行動
誤りです。
向社会的行動とは、他者を助ける、慰める、分け与えるなど、他者の利益につながる自発的な行動です。Kさんは他者を援助しているのではありません。
4.社会的参照
正しいです。
判断しにくい状況で母親の表情を確認し、その感情表出を手がかりにして自分の行動を決めています。
5.原始反射
誤りです。
原始反射は、モロー反射、探索反射、把握反射など、主に新生児期にみられる刺激に対する生得的で不随意な反応です。本事例は母親の表情を参照した行動です。
覚えるポイント
「迷う・怖がる → 養育者の表情を見る → その表情をもとに行動を決める」という流れがあれば、社会的参照を考えます。