38Q103|第38回 介護福祉士国家試験 過去問
Aさん(85歳、男性)は、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)で、介護老人福祉施設に入所している。ある日、Aさんから、「痰{たん}がからんでいて、咳{せき}をしても出せない」という訴えがあった。介護福祉士が呼吸回数を確認すると、1分間に22回で、ゴロゴロという音がしていた。看護職からは、右肺に痰{たん}が貯留しやすいという情報提供があった。口腔内吸引{こうくうないきゅういん}をすると、粘性の強い透明な痰{たん}が吸引できた。 このとき、介護福祉士が喀痰排出{かくたんはいしゅつ}を促すためにAさんに行う対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
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正解: 3
正答
3.左側を下にした体位を勧める。
この問題のポイント
粘りの強い痰を出しやすくする方法として、加湿、水分、体位、活動、吸引器具の扱いを判断する問題です。
看護職から「右肺に痰が貯留しやすい」と伝えられているため、左側を下にして右肺を上にする体位が、痰を中枢側へ移動させる体位ドレナージにつながります。
解説
Aさんは、痰がからんで咳をしても出せず、呼吸数が1分間に22回で、ゴロゴロという呼吸音があります。さらに、粘性の強い痰が吸引されています。これらから、気道内に分泌物が残っていることを考え、呼吸状態を継続して観察しながら排痰を助ける必要があります。
体位ドレナージは、重力を利用して末梢の気道にある痰を太い気道へ移動させ、咳や吸引で排出しやすくする方法です。この事例では右肺に痰が貯留しやすいという個別情報があるため、左側を下にした側臥位をとり、右肺を上にすることが適切です。右肺にある痰が中枢側へ移動しやすくなり、同時に比較的状態のよい左肺を下にすることで換気と血流の対応を保ちやすくなる場合があります。
ただし、どの肺葉・区域に痰があるかによって適切な角度や体位は異なります。介護福祉士は、看護職等から共有された方法と手順に従い、本人に説明して同意を得たうえで、苦しくない範囲で行います。体位を変えた後は、呼吸数、呼吸音、顔色、SpO2、咳、痰の量や性状を観察します。
湿度30%は乾燥しやすい環境です。気道が乾燥すると痰の粘りが強くなり、排出しにくくなります。また、医学的な水分制限がなければ、適切な水分摂取は痰をやわらかくする助けになります。反対に、水分を一律に控えることは適切ではありません。
吸引チューブは、吸引部位、利用者の状態、カニューレの内径などに合う太さを使用します。太いものへ独断で変更すると、粘膜損傷、低酸素、強い苦痛を起こす危険があります。口腔内吸引で届く範囲にも限界があるため、呼吸状態の変化を看護職へ報告し、多職種で対応します。
ひっかけポイント
痰があるからといって、吸引チューブを太くすれば多く取れるとは限りません。安全な太さ、吸引圧、吸引時間、挿入範囲を守ることが優先です。
介護実践でのポイント
体位変換や排痰支援の途中で、強い息苦しさ、チアノーゼ、意識の変化、著しいSpO2低下などがみられた場合は中止し、安全な体位をとって直ちに看護職等へ報告します。COPDのある人では、普段の呼吸状態との違いを把握することも重要です。
選択肢の確認
1.居室の湿度を30%に保つ。
適切ではありません。
湿度30%は乾燥しやすく、気道粘膜の乾燥や痰の粘稠化につながります。室内は適度な湿度に保ち、加湿器を使用する場合は水や機器を清潔に管理します。
2.水分摂取を控えるように伝える。
適切ではありません。
水分不足は痰をさらに粘り強くする可能性があります。心不全や腎機能障害などによる水分制限がある場合を除き、本人の嚥下状態や医療上の指示を確認して適切な水分摂取を支援します。
3.左側を下にした体位を勧める。
正答。最も適切です。
右肺に痰が貯留しやすいという情報があるため、左側を下にして右肺を上にする体位は、重力を利用して痰を移動させる支援になります。本人の呼吸状態を観察し、共有されたケア方法に沿って行います。
4.太い吸引チューブに変える。
適切ではありません。
吸引チューブの太さは、吸引部位や利用者の状態に合わせて決められます。介護福祉士が独断で太いものへ変更すると、粘膜損傷や低酸素を招く危険があります。
5.ベッド上での安静を勧める。
適切ではありません。
一律の安静は、換気や痰の移動を妨げることがあります。状態に応じた体位変換、深呼吸、咳、可能な範囲の離床などを組み合わせて排痰を促します。ただし、呼吸状態が不安定な場合は無理に活動させず、看護職へ報告します。
覚えるポイント
粘りの強い痰には、適度な加湿、必要な水分、体位変換、咳や呼吸の支援を組み合わせます。
体位ドレナージは、重力を利用して痰を太い気道へ移動させる方法です。
この事例では、右肺を上にするために左側を下にします。
吸引器具の太さや吸引条件を、介護福祉士が独断で変更してはいけません。
排痰支援の前後には、呼吸数、呼吸音、顔色、SpO2、痰の性状を観察します。