9AM62|第9回 公認心理師国家試験 過去問
20 歳の男性A、大学 2 年生。母親Bと精神科クリニックを受診した。Aによると、約 1 年前から、講義中に「前の座席の学生の頭を殴ってしまうのではないか」という考えが繰り返し浮かぶようになった。殴ったりはしないと分かっていても、不安で仕方がなく、気を紛らわせるため、つい爪をかんでしまう。また、 3 か月ほど前、ホームで電車を待っていると、目の前の人を線路に突き落としそうな気がして、強い不安に襲われた。その日以来、電車に乗る際は、Bに同行を求め、「僕は何もしないよね」と何度も確認するようになっており、通学にも大きな支障が出ているという。 Aの状況から考えられる病態を改善する効果が認められている技法として、最も適切なものを 1 つ選べ。
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正解: 2
正答
2
この問題のポイント
この問題では、A の症状から強迫症を考え、その治療技法として曝露反応妨害法を選べるかが問われています。
A には、「人を殴ってしまうのではないか」「線路に突き落としそう」という、自分の意思に反して繰り返し浮かぶ侵入的な考えと、それに伴う不安、確認行為がみられます。
解説
A は 20 歳の大学生です。約1年前から、講義中に「前の座席の学生の頭を殴ってしまうのではないか」という考えが繰り返し浮かぶようになっています。本人は実際には殴らないと分かっているにもかかわらず、不安で仕方がありません。
さらに、駅のホームで「目の前の人を線路に突き落としそう」という考えが浮かび、その後、電車に乗る際には母親 B に同行を求め、「僕は何もしないよね」と何度も確認するようになっています。
これは、本人の意思に反して浮かび苦痛を伴う強迫観念と、不安を下げるために繰り返される強迫行為がみられる状態と理解できます。母親に確認する行為は、安心を得るための確認行為として働いています。
強迫症に対して効果が認められている代表的な認知行動療法の技法が、曝露反応妨害法です。
曝露反応妨害法では、不安を引き起こす刺激や状況に段階的に向き合いながら、確認や回避などの強迫行為を行わないように練習します。これにより、不安が自然に下がることを経験し、強迫行為によって不安を下げる悪循環を断ちます。
事例問題で見るポイント
強迫症では、強迫観念、強迫行為、本人の不合理性の認識、生活への支障を確認します。
公認心理師としての注意点
曝露反応妨害法は、本人の同意と心理教育を十分に行い、無理に恐怖場面へ直面させるのではなく、段階づけて実施します。医師との連携も重要です。
選択肢の確認
1.認知再構成法
判定:誤り。
認知再構成法は、非機能的な自動思考や信念を検討し、より柔軟な考え方を形成する技法です。強迫症の支援で補助的に用いられることはありますが、本問の強迫観念と確認行為を改善する効果が特に認められている技法としては、曝露反応妨害法が最も適切です。
2.曝露反応妨害法
判定:最も適切。
曝露反応妨害法は、強迫症に対して効果が認められている代表的な技法です。不安を引き起こす状況に向き合いながら、確認や回避などの強迫行為を行わないようにすることで、強迫症状の維持要因に働きかけます。
3.習慣逆転療法〈HRT〉
判定:誤り。
習慣逆転療法は、チック症や抜毛症、皮膚むしり症など、習慣化した反復行動への支援で用いられます。A には爪かみがありますが、中心病態は「人を傷つけるのではないか」という強迫観念と確認行為であり、最も適切なのは曝露反応妨害法です。
4.持続エクスポージャー法
判定:誤り。
持続エクスポージャー法は、PTSD に対する治療法として知られ、トラウマ記憶や回避に働きかけます。A の主症状はトラウマ記憶ではなく、強迫観念と確認行為であるため、最も適切ではありません。
5.眼球運動による脱感作と再処理法〈EMDR〉
判定:誤り。
EMDR は、PTSD などトラウマ関連症状への治療法として用いられます。本事例では、トラウマ体験に関連した侵入記憶よりも、強迫観念と強迫行為が中心であるため、曝露反応妨害法が適切です。
覚えるポイント
- 強迫症では、強迫観念と強迫行為を確認します。
- 強迫症に対する代表的技法は、曝露反応妨害法です。
- 確認行為や回避は一時的に不安を下げますが、長期的には強迫を維持します。
- HRT はチックや抜毛などの習慣化した反復行動、EMDR や持続エクスポージャー法は PTSD と関連します。