115A026|第115回 歯科医師国家試験 過去問
75 歳の男性。下顎右側の鈍痛を主訴として来院した。 2年前に下顎歯肉扁平上 皮癌に対して放射線治療を受けたという。初診時の口腔内写真 (別冊No. 4A 、 エックス線画像 (別冊No. 4B 、CT (別冊No. 4C 及び生検時のH-E 染色病理組織 像 (別冊No. 4D を別に示す。 最も考えられるのはどれか。 1つ選べ。

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正解: a
正答
a
この問題のポイント
頭頸部放射線治療後に照射野の顎骨へ生じる放射線性顎骨壊死を、腫瘍再発や放射線誘発腫瘍と区別します。
解説
症例は75歳男性で、下顎歯肉扁平上皮癌に対する放射線治療から2年後、同側下顎に鈍痛が出現しています。この経過でまず考えるのは、照射によって血管、骨細胞、骨髄、軟組織が障害され、治癒能力が低下して生じる放射線性顎骨壊死です。
下顎骨は上顎骨より血流が乏しく、比較的高線量を受けると骨壊死を生じやすい部位です。抜歯、義歯による外傷、歯性感染などを契機に発症することもあります。疼痛、骨露出、排膿、瘻孔、病的骨折などを呈することがあります。
画像・病理で見るポイント
口腔内写真では骨露出や潰瘍、エックス線・CTでは骨硬化、骨破壊、腐骨形成の有無を確認します。病理では壊死骨と腫瘍細胞の有無を確認し、再発癌との鑑別を行います。
画像の確認
実画像では、下顎臼歯部に黄褐色で粗造な骨様組織の露出があり、パノラマおよびCTでは同部に不整な硬化像と骨構造の乱れがみられる。組織像では広い好酸性硬組織内に細胞の乏しい骨小腔が目立ち、明瞭な腫瘍性細胞増殖は示されていない。これらの可視所見は骨壊死を選ぶ根拠になる。
選択肢の確認
a.骨壊死
正答。最も考えられます。
放射線治療を受けた下顎に、治療後の経過をおいて鈍痛が出現しているため、放射線性顎骨壊死が最も合致します。
b.骨肉腫
誤り。
骨肉腫では腫瘍細胞が悪性類骨を形成します。高齢者の照射野に生じる可能性はありますが、放射線誘発肉腫として考えるには一般により長い潜伏期間と病理学的な悪性所見が必要です。
c.悪性リンパ腫
誤り。
悪性リンパ腫は顎骨病変を形成することがありますが、病理では異型リンパ球のびまん性増殖が問題になります。放射線治療後の照射部位に生じた本症例の経過からは骨壊死が優先されます。
d.放射線誘発癌
誤り。
放射線誘発癌は照射野内に発生し、原発癌とは異なる組織型で、十分な潜伏期間を経ることが重要です。治療2年後という経過は典型的ではありません。
e.扁平上皮癌の再発
誤り。
再発癌も必ず鑑別しますが、その場合は生検で異型扁平上皮細胞の浸潤性増殖を確認します。本問では放射線治療後の顎骨障害として骨壊死が最も考えられます。
覚えるポイント
- 放射線性顎骨壊死は、照射による低血流・低細胞性・低酸素状態と線維化を背景に生じます。
- 下顎骨は上顎骨より発生しやすい部位です。
- 放射線治療後の顎骨病変では、骨壊死、腫瘍再発、二次癌を画像と病理で鑑別します。