第105回
105PM049|第105回 助産師国家試験 過去問
次の文を読み48〜50の問いに答えよ。Aさん(42歳、初産婦)は妊娠27週0日に自宅で突然、破水し、産婦人科病棟に入院した。入院の翌日、胎児心拍数陣痛図で高度遅発一過性徐脈を認め、緊急帝王切開術による出産となった。なお、経過中、羊水混濁は認められなかった。児の出生体重は1,051 g。Apgar〈アプガー〉スコアは1分後3点、5分後7点。手術室で気管挿管を伴う新生児蘇生術を受けて全身状態は落ち着き、NICUに収容されて人工呼吸器管理を開始した。生後1時間のバイタルサインは体温(直腸温)35.8 ℃、呼吸数50/分、心拍数140/分、血圧40/28 mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉92%であった。また、出生後排尿排便は認められていない。生後12時間が経過した。保育器内で人工呼吸器管理を行っていたところ、突如、呼吸運動の停止に伴い経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉低下と徐脈を認める発作が出現した。皮膚刺激で速やかに改善するものの、同様の発作が1時間に5、6回の頻度で認められた。その際のバイタルサインは、体温(腋窩温)36.8 ℃、呼吸数70/分、心拍数160/分、血圧45/30 mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉95%であった。鑑別すべき疾患はどれか。
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正解1
正答
1.敗血症
この問題のポイント
在胎27週で、早産期の前期破水を経て生まれた極低出生体重児に、生後12時間で無呼吸発作が繰り返し起きている場面です。早産児の無呼吸は、呼吸中枢の未熟性だけでなく、感染症などの二次的な原因でも起こります。そのため、生後早期に無呼吸が出たときは、原因となる疾患を必ず鑑別しなければなりません。前期破水という母体側の背景から、早発型敗血症を最初に疑えるかが問われています。
解説
事例の整理
- 母体は42歳の初産婦です。妊娠27週0日に自宅で突然破水しており、早産期の前期破水にあたります。入院の翌日に高度遅発一過性徐脈が出て、緊急帝王切開となりました。羊水混濁はありませんでした。
- 児は在胎27週1日(破水の翌日)に生まれ、出生体重は1,051 gです。28週未満なので超早産児、1,000 g以上1,500 g未満なので極低出生体重児に分類されます。Apgarスコアの1分値3点は重症仮死にあたり、5分値は7点まで改善しています。気管挿管を伴う蘇生の後、NICUで人工呼吸器管理を受けています。
- 生後12時間の時点で、呼吸運動の停止にSpO2低下と徐脈を伴う発作が、1時間に5、6回起きています。発作は皮膚刺激で速やかに回復します。このときの呼吸数は70/分(多呼吸)、心拍数は160/分、体温は腋窩温36.8℃です。
生後早期の無呼吸発作と前期破水
新生児の無呼吸発作とは、20秒以上の呼吸停止、または20秒未満でも徐脈やチアノーゼ(SpO2低下)を伴うものをいいます。早産児では、呼吸中枢の未熟性による未熟児無呼吸発作がよくみられます。ただしこれは、他の原因を除いて初めて診断できる除外診断です。未熟児無呼吸発作が目立ってくるのは、生後数日たってからのことが多いとされます。生後24時間以内のような早い時期の無呼吸では、次のような二次的な原因をまず考えます。
- 感染症(敗血症、髄膜炎)
- 頭蓋内出血(脳室内出血)などの中枢神経の異常
- 低血糖や電解質異常
- 体温の異常(低体温、高体温)
- 貧血
皮膚刺激で回復する点は、未熟性による発作と共通しています。そのため、この反応だけで原因を見分けることはできません。
本例で最も重視すべき背景は前期破水です。破水で卵膜のバリアが失われると、腟の細菌が上行して絨毛膜羊膜炎を起こしやすくなります。逆に、絨毛膜羊膜炎そのものが前期破水や早産の引き金になっていることもあります。胎児は、感染した羊水を吸い込んだり飲み込んだりすることで、出生前から感染を受けます。
このように、母体由来の菌によって生後早期に発症するものを早発型敗血症といいます。発症時期は生後72時間以内とする定義が一般的で、生後7日未満とする定義もあります。主な起因菌はB群溶血性レンサ球菌(GBS)と大腸菌です。本例のような児で早発型敗血症のリスクが高くなる理由には、次のようなものがあります。
- GBSのスクリーニング検査は妊娠末期に行います。そのため27週の早産では、母体の保菌の有無がわからないまま出生を迎えることが多くなります。
- 早産(37週未満)であることと、破水から18時間以上たって出生することは、いずれも早発型GBS感染症の危険因子です。
- 母体IgGが胎盤を通って胎児へ移る量は、妊娠後期に大きく増えます。そのため、早産児は受け取る抗体が少なくなります。好中球の機能や皮膚のバリアも未熟です。
新生児敗血症の見つけ方と対応
新生児の敗血症は、発熱のようなわかりやすい症状で始まるとは限りません。初期には、次のような非特異的な変化として現れます。
- 「なんとなく元気がない」、活気の低下
- 無呼吸、多呼吸、頻脈
- 低体温または発熱(体温の不安定)
- 皮膚色の不良、末梢循環不全
- 哺乳不良、腹部膨満、血糖の異常
本例では、生後1時間と比べて、呼吸数が50/分から70/分へ、心拍数が140/分から160/分へ増えています。無呼吸の頻発とあわせると、全身状態が変化しつつあると読み取れます。血圧は生後1時間から大きく変わっていません。しかし新生児の敗血症はショックへ急速に進むことがあるため、経時的な観察が欠かせません。体温は正常ですが、保育器で環境温を調節しているため、体温の変化は表に出にくくなっています。正常体温であることは、感染を否定する根拠になりません。以上から、この時点で最も鑑別すべき疾患は敗血症です。
感染を疑ったら、抗菌薬の投与前に、血液培養、血算(白血球数や未熟な好中球の割合)、CRPなどの検体を採取します。そして結果を待たずに、速やかに抗菌薬を開始するのが原則です。CRPは発症直後にはまだ上昇していないことがあるため、経時的に評価します。新生児敗血症は髄膜炎を合併することもあります。「早産児だから無呼吸は当然」と考えて観察だけにとどめるのは危険です。
実践の場面では、次の点が大切になります。
- 発作の回数・持続時間・回復に必要だった刺激の程度を記録します。本例のように短時間に何度も起こる場合や、刺激への反応が鈍くなってきた場合は、速やかに医師へ報告します。
- 皮膚色、末梢の冷感、毛細血管再充満時間、筋緊張、腹部の状態、血糖値、保育器の温度設定の変化もあわせて観察します。
- 気管チューブや血管カテーテルなどの医療器具の留置は、生後しばらくしてから起こる遅発型敗血症の危険因子です。手指衛生やカテーテル管理を徹底します。
- 分娩前には、絨毛膜羊膜炎の徴候を把握して、新生児の担当者へ引き継ぎます。破水後の母体の発熱・頻脈・白血球数の増加、子宮の圧痛、羊水や腟分泌物の悪臭、胎児頻脈などです。これが児の感染の早期発見につながります。
選択肢の確認
1.敗血症:正答。前期破水を経て早産で生まれた児は、上行性の子宮内感染を背景に、生後早期に全身感染を起こす危険が高い状態です。新生児の全身感染では、無呼吸発作が最初の徴候になることがよくあります。本例では生後12時間という早い時期に発作が頻発しており、多呼吸と心拍数の増加も伴っています。未熟性による無呼吸と決めつける前に必ず鑑別し、検査と治療を始めるべき疾患です。
2.壊死性腸炎:腸管の未熟性や虚血に、経腸栄養や細菌の関与が加わって、腸管壁が壊死する疾患です。典型的な症状は腹部膨満、胃内残渣の増加、胆汁性嘔吐、血便で、腹部エックス線では腸管壁内ガスがみられます。初期から、無呼吸・徐脈・体温の不安定・活気の低下といった非特異的な全身症状を伴うことがあります。これらは腹部の所見と同時に、あるいはそれに先立って現れることもあります。修正Bell分類でも、StageⅠ(疑い例)の全身所見としてこれらが挙げられており、選択肢1と紛らわしい疾患です。ただし多くは、経腸栄養を始めたり増やしたりした後、生後1週以降に発症します。在胎週数が短いほど、発症時期が遅い傾向があります。生後12時間で消化器症状の記載もない本例には当てはまりません。極低出生体重児では常に注意すべき疾患であり、母乳栄養が予防に働くことも押さえておきましょう。
3.未熟児網膜症:網膜の血管が完成しないうちに生まれた早産児で、網膜血管が異常に増殖する疾患です。在胎週数が短く出生体重が小さいほど、また高濃度酸素にさらされるほど起こりやすくなります。生後数週以降の眼底検査で見つかる、眼の局所の病変です。無呼吸や徐脈といった全身症状は起こさないため、この場面の鑑別疾患にはなりません。ただし本例は発症リスクが高く、今後の定期的な眼底検査の対象になります。なお、眼底検査の刺激そのもので無呼吸や徐脈が誘発されることがあるため、検査中は呼吸・循環を監視します。
4.胎便吸引症候群:低酸素などのストレスで胎児が子宮内に胎便を出し、その胎便で混濁した羊水を出生前後に吸い込んで起こる呼吸障害です。消化管が成熟して胎便が出やすい正期産児や過期産児に多く、早産児ではまれです。典型的には出生直後からの呼吸窮迫として現れるため、生後12時間で新たに出た無呼吸発作とは合いません。何より本例では、経過中に羊水混濁が認められていません。問題文のこの一文が、この選択肢を除外する手がかりになっています。
覚えるポイント
- 早産期の前期破水は、絨毛膜羊膜炎を経て早発型敗血症につながります。主な起因菌はGBSと大腸菌です。早産、破水から18時間以上たっての出生、分娩時の母体発熱が危険因子です。
- 新生児敗血症の初期症状は非特異的です。無呼吸、多呼吸、頻脈、体温の不安定(低体温を含む)、活気の低下、哺乳不良、皮膚色の不良に注意します。保育器内では、体温が正常でも感染は否定できません。
- 無呼吸発作は、20秒以上の呼吸停止、または20秒未満でも徐脈やチアノーゼを伴うものです。未熟児無呼吸発作は除外診断です。生後早期の無呼吸では、感染、頭蓋内出血、低血糖などの二次性の原因をまず疑います。
- 在胎37週未満で生まれた児が早産児で、そのうち28週未満が超早産児です。出生体重1,500 g未満は極低出生体重児、1,000 g未満は超低出生体重児です。事例では破水日と出生日を区別して在胎週数を読み取ります(本例は27週0日に破水し、27週1日に出生)。
- 壊死性腸炎は、経腸栄養を始めた後の早産児に多い疾患です。腹部膨満・胃内残渣・血便と、腸管壁内ガスが特徴です。初期から無呼吸・徐脈・体温の不安定などの全身症状を伴うことがあり、敗血症と紛らわしい点に注意します。
- 未熟児網膜症は、早産・低出生体重・高濃度酸素が危険因子となる眼の病変で、眼底検査で評価します。胎便吸引症候群は羊水混濁が前提で、正期産児や過期産児に多い疾患です。
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