第106回
106AM022|第106回 助産師国家試験 過去問
妊婦の状態とそれに関連して生じやすい新生児への影響の組合せで正しいのはどれか。
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正解3
正答
3.抗てんかん薬の定期内服 ― 出血性疾患
この問題のポイント
妊娠中の母体の状態(疾患、抗体、薬剤、感染)が、胎盤を介して新生児にどのような影響を及ぼすかを問う問題です。考え方の軸は「何が胎盤を通過し、児の何を障害するか」です。抗てんかん薬によるビタミンK欠乏、母体IgG抗体による血球の破壊、胎内感染による発育障害を機序から整理すれば、正誤を判断できます。
解説
母体から児への影響の多くは、胎盤を通過する物質や病原体によって起こります。代表的なものは、IgG抗体(胎盤を通過する唯一の免疫グロブリン)、薬剤、病原体、ブドウ糖です。この問題の4つの組合せも、言葉の連想ではなく、機序がつながるかどうかで判断します。
抗てんかん薬と新生児の出血
フェニトイン、フェノバルビタール、カルバマゼピン、プリミドンなどの抗てんかん薬は、肝臓の薬物代謝酵素(シトクロムP450)を誘導します。これらの薬は胎盤を通過して胎児にも作用し、ビタミンKの分解を促進します。
新生児は、もともと次の理由でビタミンKが不足しやすい状態にあります。
- ビタミンKは胎盤を通過しにくく、出生時の貯蔵量が少ない
- 腸内細菌叢が未確立で、腸内細菌によるビタミンK2の産生が少ない
- 母乳に含まれるビタミンKが少ない
ビタミンKは、肝臓で凝固因子の第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子を働ける形にするために必要です。そのため、不足すると出血傾向になります。新生児・乳児のビタミンK欠乏性出血症は、発症時期によって3つに分けられます。
- 早発型:生後24時間以内。母体の薬剤(抗てんかん薬、抗結核薬、ワルファリンなど)が代表的な原因
- 古典型:生後2〜7日ごろ。消化管出血による新生児メレナが代表
- 遅発型:生後2週以降。母乳栄養児に多く、頭蓋内出血を起こしやすい
日本では新生児にビタミンK2シロップを経口投与して予防しています。出生後・産科退院時・1か月健診時の3回投与が広く行われてきました。2021年に関連学会が示した提言では、生後3か月まで週1回投与する方法も示されています。酵素誘導型の抗てんかん薬を内服する母体には、分娩前からビタミンKを投与することがあります。出生後は児へのビタミンK投与を遅らせないようにします。あわせて、吐血、下血、臍や穿刺部位からの出血、大泉門の膨隆や哺乳不良など頭蓋内出血を疑う徴候を観察します。
抗てんかん薬を内服する妊婦への看護も重要です。自己判断で中止すると、けいれん発作による低酸素や外傷で母児ともに危険になります。そのため、内服の継続を支援します。バルプロ酸などには神経管閉鎖障害のリスクがあるので、妊娠前からの葉酸補充も大切です。また、フェノバルビタールなどを内服していた母体から生まれた児では、出生後の振戦や易刺激性などの離脱症状にも注意します。
母体の状態と新生児への影響(頻出の組合せ)
- 特発性血小板減少性紫斑病(ITP):抗血小板抗体が胎盤を通過し、新生児の血小板が一過性に減少することがある
- 不規則抗体陽性:IgG型の抗体が児の赤血球を破壊し、胎児・新生児溶血性疾患(貧血、黄疸、重症では胎児水腫)を起こす
- 抗SS-A抗体陽性:新生児ループスを起こすことがある(皮疹などは一過性、先天性完全房室ブロックは不可逆)
- バセドウ病(TSH受容体抗体):新生児に一過性の甲状腺機能亢進症を起こすことがある
- 糖尿病:母体の高血糖で胎児が高インスリン血症となり、巨大児、新生児低血糖、多血症、高ビリルビン血症、呼吸窮迫症候群が起こりやすい
- 妊娠高血圧症候群、喫煙、胎内感染:胎児発育不全となり、light-for-dates児が生まれやすい
以上から、機序で正しく結び付く組合せは選択肢3だけです。
選択肢の確認
1.血小板減少 ― light-for-dates児:母体の血小板減少が新生児に影響するのは、主にITPなど免疫性の場合です。その影響は発育の遅れではなく、新生児の血小板減少です。ITPではIgG型の抗血小板抗体が胎盤を通過し、児の血小板を破壊します。そのため頭蓋内出血などに注意し、出生後数日間は児の血小板数を経時的に確認します。一方、妊娠後期にみられる軽度の妊娠性血小板減少症は、児にほとんど影響しません。light-for-dates児は、出生体重が在胎期間別出生時体格標準値の10パーセンタイル未満の児です。HELLP症候群など妊娠高血圧症候群に関連する病態では、母体の血小板減少と胎児発育不全が同時にみられることがあります。ただし発育不全の原因は胎盤の循環障害であり、血小板減少そのものではありません。
2.不規則抗体陽性 ― 多血症:母体の不規則抗体によって児に起こるのは赤血球の破壊(溶血)であり、多血症とは逆の貧血が生じます。不規則抗体とは、ABO血液型の抗A・抗B抗体(規則抗体)以外の赤血球抗原に対する抗体で、抗D、抗E、抗cなどがあります。IgG型の不規則抗体は胎盤を通過し、対応する抗原をもつ胎児の赤血球を破壊します。その結果、児には貧血と、生後24時間以内に出現する早発黄疸などの高ビリルビン血症が生じます。重症例では胎内で胎児水腫に至ったり、出生後に核黄疸を起こしたりします。多血症(静脈血ヘマトクリット65%以上)が起こりやすいのは、糖尿病母体児、双胎間輸血症候群の受血児、慢性的な低酸素状態にあった胎児発育不全児、臍帯結紮が遅れた場合などです。
3.抗てんかん薬の定期内服 ― 出血性疾患:正答。「定期内服」とあることから、胎児が分娩直前まで薬剤に曝露されていると読み取れます。酵素誘導作用のある抗てんかん薬は胎盤を通過して胎児のビタミンK分解を促進し、ビタミンK依存性凝固因子(Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ)の不足を招きます。その結果、生後24時間以内に発症する早発型のビタミンK欠乏性出血症が起こりやすくなります。医師の指示による母体と児へのビタミンK投与と、出生後の出血徴候の観察が看護のポイントです。
4.サイトメガロウイルス感染症への罹患 ― 巨大児:サイトメガロウイルスの先天性感染で起こりやすい発育の異常は胎児発育不全であり、巨大児とは結び付きません。妊娠中の感染は、初感染だけでなく再活性化や再感染でも先天性感染を起こすことがあります。症候性の児では、胎児発育不全、小頭症、脳室周囲石灰化、肝脾腫、黄疸、血小板減少による点状出血、網脈絡膜炎などがみられます。最も多い後遺症は感音難聴で、出生時に無症状でも後から難聴が現れることがあります。先天性感染かどうかは、生後3週間以内の尿などからウイルスを検出して診断します。巨大児(出生体重4,000g以上)の代表的な原因は、糖尿病(妊娠糖尿病を含む)、肥満、妊娠中の過剰な体重増加、過期妊娠です。
覚えるポイント
- 酵素誘導型の抗てんかん薬(フェニトイン、フェノバルビタール、カルバマゼピン)を内服する母体の児は、ビタミンKの分解が進み、早発型ビタミンK欠乏性出血症を起こしやすくなります。ビタミンK依存性凝固因子はⅡ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹです。
- ビタミンK欠乏性出血症は、早発型(生後24時間以内、母体の薬剤)、古典型(生後2〜7日、新生児メレナ)、遅発型(生後2週以降、母乳栄養児に多く頭蓋内出血)の3型に分けて覚えます。
- 母体のIgG抗体は胎盤を通過し、児に病態を起こすことがあります。母体ITPによる新生児の血小板減少、TSH受容体抗体による新生児の甲状腺機能亢進症、新生児ループスの皮疹などは、母体由来の抗体が消えるとともに軽快する一過性の病態です。一方、抗SS-A抗体による先天性完全房室ブロックは不可逆で、多くの例でペースメーカーが必要になります。不規則抗体による溶血も、重症例では胎児水腫による胎児死亡や、核黄疸による後遺症を起こすことがあります。
- 巨大児や多血症を見たら、まず糖尿病母体児を思い浮かべます。ほかに新生児低血糖、高ビリルビン血症、呼吸窮迫症候群、低カルシウム血症も起こりやすくなります。
- 胎内感染(サイトメガロウイルスなど)は、胎児発育不全、小頭症、難聴と結び付きます。サイトメガロウイルスでは感音難聴と脳室周囲石灰化が特徴です。
- 抗てんかん薬を内服する妊婦には、自己判断で中断しないよう支援し、妊娠前からの葉酸補充を勧めます。出生後は児の出血徴候と離脱症状を観察します。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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