第106回
106AM021|第106回 助産師国家試験 過去問
栄養成分と新生児に対する効果の組合せで正しいのはどれか。
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正解1
正答
1.オリゴ糖 ― 感染防御
この問題のポイント
母乳に含まれる成分と、その成分が新生児にもたらす働きを正しく結びつけられるかを問う問題です。選択肢には糖質(オリゴ糖)、酵素(リパーゼ、ラクターゼ)、ビタミン(ビタミンC)が並んでいます。誤りの選択肢は、成分と効果を入れ替えた組合せで作られています。酵素なら何を分解するのか、ビタミンなら欠乏で何が起こるのかを、成分ごとに正確に対応させることが鍵です。
解説
この設問の「栄養成分」は、母乳に含まれる成分だけでなく、それを消化する酵素も含めた広い意味で使われています。まず各成分の本来の役割を思い出し、右側に書かれた効果と一致するかを一つずつ照合すると、迷わずに解けます。
オリゴ糖:消化されずに働く感染防御因子
母乳中のオリゴ糖(ヒトミルクオリゴ糖)は、乳糖と脂質に次いで多い固形成分です。牛乳にはごくわずかしか含まれません。乳児の小腸ではほとんど消化・吸収されず、エネルギー源にならないまま大腸まで届きます。そこで次のような仕組みにより感染防御に働きます。
- プレバイオティクスとしての作用:ビフィズス菌の栄養源となり、その増殖を促します(ビフィズス因子)。ビフィズス菌がつくる乳酸や酢酸で腸内が酸性に傾き、病原菌が増えにくい環境になります。
- おとり(デコイ)受容体としての作用:腸の上皮細胞表面の糖鎖と似た構造をもちます。そのため病原体がオリゴ糖のほうに結合し、上皮への付着が妨げられます。
- 免疫の調節や、腸管のバリア機能の維持にも関わると考えられています。
母乳栄養児では腸内細菌叢の中でビフィズス菌が優勢になり、消化管感染症にかかりにくくなります。その理由の一つがこのオリゴ糖です。
母乳の感染防御因子は、オリゴ糖のほかにも次のものがよく出題されます。これらは初乳に特に多く含まれます。
- 分泌型IgA:粘膜表面で病原体の侵入を防ぎます。
- ラクトフェリン:鉄と結合して細菌の増殖を抑えます。
- リゾチーム:細菌の細胞壁を分解します。
- 白血球などの生きた細胞
初乳は成乳に比べて、たんぱく質や免疫物質が多く、乳糖と脂質は少ないという特徴もあわせて押さえておきましょう。
酵素:リパーゼとラクターゼの違い
新生児は、膵液中のリパーゼや胆汁酸の分泌が未熟です。そのため脂肪を消化する力が十分ではありません。母乳には胆汁酸刺激性リパーゼが含まれており、腸管内で胆汁酸によって活性化され、脂肪の分解を助けます。この酵素は牛乳由来の育児用ミルクには含まれていません。また加熱で失活するため、低温殺菌したドナーミルクでは活性がほぼ失われます。
一方、ラクターゼは小腸粘膜の刷子縁にある酵素で、乳糖をブドウ糖とガラクトースに分解します。母乳の糖質の大部分は乳糖なので、ラクターゼは糖質の消化に欠かせません。名前の語源(lipo=脂肪、lacto=乳)で覚えると、「脂肪を分解するのはリパーゼ、乳糖を分解するのはラクターゼ」と区別しやすくなります。
ビタミン:欠乏症との対応
- ビタミンC:コラーゲンの合成に必要です。欠乏すると血管壁や骨膜がもろくなり、歯肉出血や骨膜下出血を起こす壊血病になります。乳児の壊血病はメラー・バーロー病とよばれます。
- ビタミンD:腸管からのカルシウムとリンの吸収を促し、骨の石灰化を助けます。乳幼児で欠乏するとくる病を起こします。成人では骨軟化症になります。
- ビタミンK:血液凝固因子の合成に必要です。欠乏すると、新生児・乳児のビタミンK欠乏性出血症(新生児メレナや頭蓋内出血)を起こします。
母乳は多くの点で理想的な栄養ですが、ビタミンDとビタミンKの含有量が少ないことが知られています。そのため新生児にはビタミンK2シロップの予防投与が行われます。完全母乳栄養で日光に当たる機会が少ない乳児では、ビタミンD不足によるくる病に注意が必要です。助産師には、母乳の利点を伝えるだけでなく、母乳で不足しやすい栄養素とその補い方まで説明できることが求められます。
選択肢の確認
1.オリゴ糖 ― 感染防御:正答。母乳中のオリゴ糖は消化されずに大腸へ届きます。そこでビフィズス菌を増やして腸内を酸性に保ち、さらに病原体と結合して腸上皮への付着を防ぎます。栄養素としてより、腸内環境を整えて感染を防ぐ因子として働く点が、この成分の要点です。
2.リパーゼ ― 壊血病予防:リパーゼは中性脂肪を脂肪酸などに分解する酵素で、壊血病の予防とは関係がありません。母乳中の胆汁酸刺激性リパーゼは、膵機能が未熟な新生児の脂肪の消化吸収を助けます。リパーゼの本来の働きは選択肢4の右側に書かれている内容で、両者の効果を入れ替えた形になっています。壊血病の予防に関わるのはビタミンCです。
3.ビタミンC ― くる病予防:ビタミンCが欠乏して起こるのは壊血病で、くる病を予防するのはビタミンDです。ビタミンCはコラーゲン合成に必要な水溶性ビタミンです。人は体内で合成できないため、食事(乳児では乳汁)から摂取します。「ビタミンD・骨の石灰化・くる病」「ビタミンC・コラーゲン・壊血病」と、働きと欠乏症をセットで区別しましょう。
4.ラクターゼ ― 脂肪の消化吸収の補助:ラクターゼは乳糖をブドウ糖とガラクトースに分解する小腸刷子縁の酵素で、脂肪ではなく糖質の消化に関わります。脂肪の消化吸収の補助と正しく組み合わさるのはリパーゼです。ラクターゼの活性が不足すると、乳糖が分解されないまま大腸へ届きます。その結果、下痢や腹部膨満を起こす乳糖不耐症の原因になります。
覚えるポイント
- 母乳中のオリゴ糖は消化されずに大腸へ届き、ビフィズス菌の増殖(プレバイオティクス)と病原体の付着阻止(おとり受容体)によって感染を防ぎます。
- 母乳の感染防御因子は、オリゴ糖、分泌型IgA、ラクトフェリン、リゾチーム、白血球です。免疫物質は初乳に多く含まれます。
- リパーゼは脂肪を、ラクターゼは乳糖を分解します。母乳の胆汁酸刺激性リパーゼは新生児の脂肪消化を助け、加熱で失活します。
- ビタミンと欠乏症の対応は、ビタミンCが壊血病、ビタミンDがくる病、ビタミンKが新生児・乳児のビタミンK欠乏性出血症です。
- 母乳で不足しやすいのはビタミンDとビタミンKです。ビタミンKはK2シロップの予防投与で補います。
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