第106回

106AM020|第106回 助産師国家試験 過去問

Basedow〈バセドウ〉病合併妊娠について正しいのはどれか。

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正解2

正答

2.妊娠初期のチアマゾールの服用は胎児の先天異常と関連がある。

この問題のポイント

バセドウ病合併妊娠について、検査所見、妊娠から産褥までの病勢の変化、抗甲状腺薬の選び方、新生児への影響をまとめて問う問題です。病態の中心はTSH受容体抗体(TRAb)による甲状腺の刺激です。これに加えて「妊娠中は免疫寛容で軽快し、産後に反動で悪化する」という流れと、チアマゾールの催奇形性を押さえれば、各選択肢を根拠をもって判定できます。

解説

病態と検査所見

バセドウ病は、TSH受容体に結合して甲状腺を刺激する自己抗体(TRAb)によって、甲状腺ホルモンが過剰に作られる自己免疫疾患です。FT4とFT3は高値になります。下垂体は負のフィードバックでTSHの分泌を抑えるため、TSHは低値(多くは測定感度以下)になります。

妊娠・産褥期の病勢の変化

  • 妊娠初期:hCGはTSHと構造が似ており、TSH受容体を弱く刺激します。このため初期には甲状腺機能が一時的に亢進しやすく、バセドウ病が悪化したように見えることがあります。同じ時期には妊娠一過性甲状腺機能亢進症も起こります。こちらはhCGによるもので、TRAb陰性、つわり・妊娠悪阻に伴いやすく、妊娠中期までに自然に軽快します。バセドウ病との鑑別が必要です。
  • 妊娠中期〜後期:妊娠に伴う免疫寛容で自己抗体の産生が抑えられ、病勢は軽快することが多くなります。抗甲状腺薬を減量・中止できる例もあります。
  • 産後:免疫抑制が解除される反動で、産後数か月のうちに再燃・増悪しやすくなります。産後の甲状腺中毒症では、無痛性甲状腺炎(破壊性で多くはTRAb陰性)との鑑別も必要です。

抗甲状腺薬の選び方と胎児・新生児への影響

主な抗甲状腺薬は、チアマゾール(MMI)とプロピルチオウラシル(PTU)です。MMIを妊娠初期の器官形成期に服用すると、次のような先天異常(MMI関連奇形)との関連が報告されています。

  • 頭皮欠損(先天性皮膚欠損)
  • 臍帯ヘルニア、臍腸管遺残
  • 食道閉鎖
  • 後鼻孔閉鎖

このため妊娠初期はMMIを避け、PTUや無機ヨウ素(ヨウ化カリウム)へ切り替えることが推奨されています。PTUには重篤な肝障害の副作用があるので、妊娠中期以降はMMIへ戻すことも検討されます。妊娠を希望する女性や、MMIの内服中に妊娠が分かった女性への支援では、自己判断で服薬を中断せず、早く主治医に相談するよう伝えることが大切です。

抗甲状腺薬は胎盤を通過します。過量になると胎児に甲状腺機能低下症や甲状腺腫を起こすため、妊娠中は必要最小量で母体のFT4を基準範囲の上限付近に保ちます。放射性ヨウ素内用療法は、妊娠中・授乳中は禁忌です。

コントロール不良の甲状腺機能亢進症は、次のリスクを高めます。

  • 流産、早産、胎児発育不全
  • 妊娠高血圧症候群
  • 母体の心不全
  • 甲状腺クリーゼ(分娩、帝王切開、感染などが誘因)

TRAbはIgGなので胎盤を通過し、胎児や新生児の甲状腺を刺激して新生児バセドウ病(新生児甲状腺機能亢進症)を起こすことがあります。リスクが高いのは、妊娠後期の母体TRAbが高値の場合です。手術やアイソトープ治療の後で母体の甲状腺機能が正常でも、TRAbが残っていれば起こりえます。

出生後は、胎盤経由で児に入っていた抗甲状腺薬が数日で消えます。そのため、生後数日たってから頻脈、多呼吸、哺乳不良、体重増加不良、多汗、甲状腺腫などが現れることがあります。母体由来の抗体が消えるにつれて、自然に軽快する一過性の病態です。助産師は、出生直後だけでなく数日間の経過観察を意識する必要があります。

選択肢の確認

1.血中甲状腺刺激ホルモン〈TSH〉が高値である。:バセドウ病では甲状腺ホルモンが過剰になるため、負のフィードバックで下垂体からのTSH分泌が抑えられ、TSHは低値となります。TSHが高値になるのは、橋本病(慢性甲状腺炎)などによる原発性甲状腺機能低下症です。なお、妊娠初期はhCGの作用で健常な妊婦でもTSHがやや低下します。

2.妊娠初期のチアマゾールの服用は胎児の先天異常と関連がある。:正答。器官形成期にチアマゾールを服用すると、頭皮欠損、臍帯ヘルニア、臍腸管遺残、食道閉鎖、後鼻孔閉鎖などの先天異常との関連が報告されています。このため妊娠初期はプロピルチオウラシルや無機ヨウ素に切り替えます。妊娠を希望する段階から治療薬について相談しておくことも重要です。

3.妊娠後期に増悪し出産後に軽快することが多い。:実際の経過はこの記述と逆です。妊娠中期から後期は免疫寛容でTRAbの産生が抑えられて軽快することが多く、出産後に免疫抑制が解除されると再燃・増悪しやすくなります。さらに妊娠初期はhCGの刺激で一時的に悪化することがあります。「初期に悪化しやすい→中期〜後期に軽快→産後に増悪」という流れで覚えておくと取り違えません。

4.授乳によって新生児に甲状腺機能亢進症が起こる。:新生児の甲状腺機能亢進症は、母体のTRAb(IgG)が胎盤を通過して児の甲状腺を刺激することで起こり、授乳が原因ではありません。抗甲状腺薬の母乳への移行もわずかで、常用量であれば授乳を続けられます。「母体TRAbが高値なら出生後数日間の観察が必要」という知識と混同しないようにしましょう。

覚えるポイント

  • バセドウ病はTRAb陽性、FT4・FT3高値、TSH低値です。TSH高値は原発性甲状腺機能低下症(橋本病など)の所見です。
  • 妊娠経過は、初期にhCGで一時的に悪化しやすく、中期〜後期は免疫寛容で軽快し、産後に再燃・増悪します。
  • 妊娠初期はチアマゾールを避け、プロピルチオウラシルまたは無機ヨウ素を使います。関連する先天異常は頭皮欠損、臍帯ヘルニア・臍腸管遺残、食道閉鎖、後鼻孔閉鎖です。
  • 抗甲状腺薬は胎盤を通過し、過量では胎児が甲状腺機能低下症になります。母体FT4は基準範囲の上限付近を目標にし、放射性ヨウ素は妊娠中・授乳中は禁忌です。
  • 新生児バセドウ病の原因は母体TRAbの経胎盤移行です。生後数日して症状が出ることがあり、一過性に経過します。授乳は原因ではなく、常用量の抗甲状腺薬なら授乳を続けられます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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