第106回
106AM019|第106回 助産師国家試験 過去問
正期産で双胎児を出産した産褥1日の褥婦は母乳育児を希望している。第1子の吸啜は問題がないが、第2子の吸啜がやや弱い。この褥婦への助産師の対応で適切なのはどれか。
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正解2
正答
2.2人同時授乳の方法を指導する。
この問題のポイント
双胎の褥婦で、2人の児の吸啜力に差がある場合の母乳育児支援を問う問題です。判断の手がかりは「第1子の吸啜は問題ない」「第2子の吸啜がやや弱い」という差です。一方の児が吸うことで起こる射乳反射は両側の乳房に及ぶため、同時授乳にすれば強い児の力を弱い児にも生かせます。また産褥1日は乳汁分泌を確立していく時期で、回数を制限しない頻回授乳が基本になります。
解説
状況の整理
- 正期産の双胎・産褥1日:乳汁はまだ初乳の段階で、これから分泌量が増えていく時期です。
- 母乳育児を希望:本人の意思に沿って、母乳で育てられるよう分泌の確立を支援することが求められます。
- 第1子は吸啜良好、第2子はやや弱い:低血糖、脱水、過度の体重減少といった医学的な問題は示されていません。
乳汁分泌を支える2つのホルモン
乳頭が吸われると、その刺激が脳へ伝わり、2つのホルモンが分泌されます。
- プロラクチン:下垂体前葉から分泌され、乳腺での乳汁産生を促します。
- オキシトシン:下垂体後葉から分泌され、乳腺房を囲む筋上皮細胞を収縮させて乳汁を押し出します(射乳反射)。
オキシトシンは血流に乗って全身に届くため、片側の乳頭を吸われただけでも両側の乳房で射乳が起こります。
分娩後は、胎盤娩出によるプロゲステロンの低下をきっかけに、産後2〜3日ごろから乳汁分泌が急に増えます。その後は「吸われて出た分だけ作られる」という需要と供給の関係で分泌量が決まっていきます。そのため、産褥早期にどれだけ多く、どれだけ頻回に乳頭を刺激したかが、その後の分泌量を左右します。
同時授乳が有効な理由
吸啜の強い第1子と弱い第2子を同時に抱いて授乳すると、第1子のしっかりした吸啜で射乳反射が起こり、反対側の乳房にも乳汁が流れ出します。第2子は吸う力が弱くても乳汁を得やすくなり、疲れて途中で眠ってしまうことも減ります。ほかにも次の利点があります。
- 授乳にかかる時間がおよそ半分になり、2人を交互に授乳し続けるよりも母親の休息を確保しやすくなります。
- 両側の乳房が同時にしっかり刺激されるため、プロラクチンの分泌が促され、分泌の確立につながります。
- 2人の授乳リズムがそろい、育児の見通しが立てやすくなります。
オキシトシンには子宮を収縮させる作用もあります。子宮が大きく伸展していた双胎の褥婦は弛緩出血のリスクが高いため、頻回の授乳は子宮復古を助けるという意味も持ちます。
指導の実際
抱き方は次のような方法を、授乳クッションや枕を使って一緒に練習します。
- 両脇に1人ずつ抱える方法(両側のフットボール抱き)
- 2人を交差させる横抱き
- 横抱きと脇抱きの組み合わせ
産褥1日は疲労が強い時期です。最初は助産師が児を手渡し、1人ずつ吸着(ラッチオン)を確認しながら行います。毎回必ず同時にする必要はなく、1人ずつの授乳と組み合わせてかまいません。
あわせて、第2子については次の点を観察します。
- 嚥下音
- 排尿・排便の回数
- 体重減少の程度
- 黄疸
- 覚醒状態
摂取が足りない兆候があれば、まず手で搾った初乳をスプーンやカップで与えることを検討します。
選択肢の確認
1.授乳は時刻を決めて行う。:産褥早期に乳汁分泌を確立するには、児が欲しがるサインに合わせて1日8回以上吸わせる自律授乳(応答的授乳)が基本です。欲しがるサインには、口を動かす、手を口に持っていく、探索反射などがあり、泣くのは遅いサインです。時刻を決めると授乳回数と乳頭刺激が制限され、分泌量が伸びにくくなります。吸啜の弱い第2子は1回の哺乳量が少ないため、間隔を固定するとかえって摂取不足に陥りやすくなります。時間を決める規則授乳は以前に行われていた方法であり、現在の推奨とは異なるため不適切です。
2.2人同時授乳の方法を指導する。:正答。吸啜の強い第1子の刺激で起こる射乳反射が両側の乳房に及ぶため、同時に吸っている第2子は弱い吸啜でも乳汁を得やすくなります。両側の乳房が同時に刺激されて分泌の確立が進み、授乳時間の短縮で母親の休息も確保できます。本人の母乳育児の希望に沿った、双胎に特有の有効な支援です。
3.最初は混合栄養で授乳することを勧める。:第2子の吸啜が「やや弱い」という情報だけでは、低血糖や脱水、過度の体重減少といった人工乳を補足する医学的適応は示されていません。産褥1日から人工乳を足すと、児が満たされて乳房を吸う回数と時間が減り、乳汁分泌の確立が遅れます。哺乳瓶の乳首は乳房より少ない力で飲めるため、吸啜の弱い児ほど乳房を嫌がるようになるおそれもあります。補足が必要になった場合も、まず搾った母乳を与えることを優先し、人工乳は医学的適応があるときに限ります。したがって不適切です。
4.それぞれの児に決まった乳房で授乳する。:児ごとに乳房を固定すると、吸啜の弱い第2子が担当する側は刺激が弱いままになります。その結果、その乳房の分泌量が落ちて左右差が生じ、第2子の摂取量がさらに減るという悪循環になりかねません。授乳ごと、あるいは日ごとに左右を入れ替えれば、吸啜の強い第1子が両側の乳房を十分に刺激でき、両側の分泌を保てます。2人とも吸啜が良好で分泌が安定していれば左右を決める方法をとる場合もありますが、吸啜力に差があるこの事例では不適切です。
覚えるポイント
- プロラクチン(下垂体前葉)は乳汁産生、オキシトシン(下垂体後葉)は射乳反射と子宮収縮を担います。オキシトシンの作用は両側の乳房に及びます。
- 双胎の母乳育児では、吸啜の強い児の刺激で起こる射乳を弱い児に生かす同時授乳が有効です。抱き方は両側フットボール抱き、交差横抱き、その組み合わせです。
- 左右の乳房は授乳ごと・日ごとに入れ替え、吸啜力の差による分泌の左右差を防ぎます。
- 産褥早期は時刻を決めず、児の欲しがるサインに応じて1日8回以上授乳します。泣くのは遅いサインです。
- 母乳以外の補足は、低血糖、脱水、過度の体重減少などの医学的適応があるときに限ります。補足が必要でも、まず搾母乳を優先します。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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