第106回

106AM018|第106回 助産師国家試験 過去問

Aさん(34歳、初産婦)は妊娠40週1日で正常分娩した。分娩所要時間は25時間30分で出血量は400 ml。胎盤娩出時、牽引にわずかな抵抗があった。胎盤の計測で、卵膜が子宮内に残存している可能性があると判明した。このときのAさんへの説明で正しいのはどれか。

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正解1

正答

1.「腟から血の塊や膜のようなものが出たら教えてください」

この問題のポイント

胎盤娩出後に卵膜遺残が疑われた褥婦へ、助産師がどう説明するかを問う問題です。卵膜遺残は子宮復古不全、晩期出血、産褥感染につながることがあります。一方で、少量であれば悪露とともに自然に排出されることも多いため、褥婦自身が排出や異常に気づいて知らせられるよう、具体的に伝えることが鍵です。あわせて、後陣痛の性質と、授乳によって子宮収縮が促される産褥の生理も押さえておく必要があります。

解説

問題文の手がかりを整理する

  • 34歳の初産婦で、妊娠40週1日の正期産、正常分娩です。
  • 分娩所要時間は25時間30分です。初産婦としては長めですが、遷延分娩(初産婦30時間以上、経産婦15時間以上)には当たりません。
  • 出血量は400mLで、経腟分娩で異常出血とされる500mL以上には達していません。
  • 胎盤娩出時に、牽引にわずかな抵抗がありました。卵膜が子宮壁から十分にはがれないうちに引かれ、途中で裂けた可能性を示しています。
  • 胎盤の計測で卵膜の欠損がみつかり、子宮内への残存が疑われています。

分娩経過はおおむね正常範囲にあり、この場面の課題は「卵膜が子宮内に残っているかもしれない」という一点に絞られます。

子宮内遺残で起こりうること

胎盤娩出後の止血は、子宮筋が強く収縮して胎盤剥離面の血管を締めつけること(生物学的結紮)によって得られます。子宮内に卵膜や胎盤片、凝血が残ると、子宮が十分に収縮・退縮できず、子宮復古不全を起こしやすくなります。その結果、次のような経過をとることがあります。

  • 悪露が多い、赤色悪露が長引く、いったん褐色になった悪露が再び鮮紅色に戻る
  • 遺残物が血塊や膜状の組織として腟から排出される
  • 遺残物を押し出そうとする子宮収縮により、後陣痛が強く感じられる
  • 遺残物が細菌の温床となり、子宮内膜炎などの産褥熱を起こす(発熱、下腹部痛、悪露の悪臭)
  • 産褥期に入ってから突然多量に出血する(晩期出血)

少量の卵膜遺残は、子宮収縮を促しながら経過をみるうちに悪露とともに排出されることが多いです。これに対して、胎盤母体面の分葉が欠けていて胎盤片の遺残が疑われる場合は、出血の危険が大きく、医師による除去処置が検討されます。卵膜の遺残と胎盤片の遺残は区別して理解しておきましょう。なお、胎盤娩出時には胎盤をゆっくり回転させ、卵膜をねじるようにして引き出すと、卵膜が途中で切れにくくなります。

助産師の説明として求められること

入院中も退院後も、悪露やパッドを最も身近に観察できるのは褥婦自身です。遺残の可能性があることを率直に伝え、「何が出たら」「どのような変化があったら」知らせればよいのかを、平易な言葉で具体的に説明します。排出物を確認できれば、助産師は胎盤計測で分かった欠損と照らし合わせ、遺残が解消したかどうかの判断材料にできます。

助産師は並行して、子宮底の高さと硬さ、悪露の量・色・臭い、体温、下腹部痛を継続して観察します。異常があれば医師の診察(超音波検査など)につなげます。説明は不安をあおったり、褥婦に自分を責めさせたりしない表現で行い、「早く気づけば対処できる」という見通しとともに伝えることが大切です。

選択肢の確認

1.「腟から血の塊や膜のようなものが出たら教えてください」:正答。卵膜が遺残していれば、悪露とともに血塊や膜状の組織として排出されることがあります。褥婦が気づいて知らせれば、助産師が排出物を確認して遺残の解消を判断でき、出血や感染の早期発見にもつながります。専門用語を使わず、褥婦が自分で観察できる内容を具体的に伝えている点でも、適切な説明です。

2.「お産に時間がかかったことが原因として考えられます」:卵膜遺残は、卵膜が子宮壁に強く付着していたり、胎盤娩出時の牽引で卵膜が裂けたりすることで起こります。本問でも、牽引時の抵抗がその経過を示しています。分娩時間の長さを原因とする根拠はなく、25時間30分は初産婦の遷延分娩の基準にも達していません。遷延分娩は子宮筋の疲労を介して弛緩出血のリスク因子になるため、「長い分娩が産後の異常を招く」と結びつけやすい点に注意が必要ですが、弛緩出血と卵膜遺残は別の病態です。さらに、お産の長さが原因であるかのような説明は、褥婦に自責の念を抱かせるおそれもあります。

3.「子宮内に異物があると後陣痛が弱まります」:子宮内に卵膜や凝血などの遺残物があると、子宮はそれを排出しようとして収縮するため、後陣痛はむしろ強くなるとされています。後陣痛は産褥早期にみられる子宮収縮による痛みで、経産婦や授乳時に強く感じやすいのが特徴です。遺残物によって子宮復古は遅れやすくなりますが、「後陣痛が弱まる」という説明は事実と逆です。後陣痛が異常に強い、あるいは長引く場合は、遺残を疑う手がかりになります。

4.「授乳は控えてください」:授乳時の乳頭刺激によって下垂体後葉からオキシトシンが分泌され、子宮収縮が促されます。その結果、子宮復古が進み、遺残した卵膜の排出にも有利に働きます。卵膜遺残は授乳を制限する理由にはならず、むしろ早期からの頻回授乳を支援します。授乳の中止や制限が検討されるのは、授乳を避けるべき薬剤の使用や一部の感染症など、別の理由がある場合です。

覚えるポイント

  • 胎盤娩出後は、母体面の分葉の欠損と卵膜の欠損を確認します。欠損があれば子宮内遺残を疑い、胎盤片の遺残は卵膜より出血の危険が大きいと考えます。
  • 子宮内遺残は子宮復古不全を招き、悪露の増量、赤色悪露の遷延や再出現、晩期出血、産褥熱の原因になります。
  • 後陣痛が強くなるのは、経産婦の場合、授乳時、子宮内に遺残物(卵膜・胎盤片・凝血)がある場合です。
  • 授乳はオキシトシン分泌を介して子宮収縮と子宮復古を促すため、遺残が疑われても授乳は勧めます。
  • 遷延分娩の基準は初産婦30時間以上、経産婦15時間以上です。経腟分娩では出血量500mL以上を異常出血とします。
  • 褥婦への説明は、自分で観察できる内容を平易な言葉で具体的に伝え、自責感を生まない表現にします。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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