第105回

105AM012|第105回 助産師国家試験 過去問

Aさん(32歳、1回経産婦)は本日午前11時に3,100 gの児を正常分娩した。分娩所要時間は7時間30分で出血量は150 mL。分娩後1時間経過した時点で「上の子のお産は丸1日かかりました。やはり2回目は早いですね」と話した。体温37.0 ℃、脈拍84/分、血圧122/66 mmHg。出血量は25 mL、子宮底は臍高で硬度は良好だった。尿意はまだない。この時のAさんへの助産ケアで適切なのはどれか。

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正解4

正答

4.食事や水分摂取を促す。

この問題のポイント

正常分娩から1時間後(分娩第4期)の褥婦について、まず経過が正常かどうかを評価し、そのうえでこの時点で必要な援助を選ぶ問題です。出血量、子宮底の高さと硬さ、バイタルサインはすべて正常範囲にあり、分娩後1時間で尿意がないことも異常ではありません。この2点を押さえると、分娩で消耗した体力と水分を補う援助が最も適切だと判断できます。

解説

事例の情報を整理する

  • 分娩経過:1回経産婦で、分娩所要時間は7時間30分です。遷延分娩の定義(初産婦30時間以上、経産婦15時間以上)には当たらず、正常な経過です。
  • 出血量:分娩時150 mLと分娩後1時間の25 mLを合わせて175 mLです。経腟分娩で異常出血とされる500 mLを大きく下回っています。
  • バイタルサイン:体温37.0 ℃、脈拍84/分、血圧122/66 mmHgです。ショックインデックス(脈拍÷収縮期血圧)は84÷122で約0.7となり、1未満です。循環血液量の減少を疑う所見はありません。
  • 子宮の状態:子宮底は臍高で、硬度は良好です。子宮収縮は良好で、弛緩出血の徴候はありません。
  • 排尿:尿意はまだありません。
  • 言動:前回の分娩と比べて「2回目は早いですね」と自分から分娩体験を語っており、落ち着いて会話ができています。
  • 時刻:分娩が午前11時なので、現在は正午ごろ、ちょうど昼食の時間帯です。

分娩第4期の観察と評価

胎盤娩出後の2時間は分娩第4期と呼ばれます。弛緩出血、産道裂傷や血腫による出血、血圧の変動が起こりやすいため、出血量、子宮底の高さと硬さ、バイタルサイン、膀胱充満の有無を繰り返し観察します。胎盤娩出直後の子宮底は臍下2〜3横指程度ですが、その後は骨盤底筋の緊張の回復などにより上昇し、分娩後12時間ごろには臍高から臍上1横指程度になるのが一般的な経過です。Aさんは子宮底が硬く、出血も少量なので、子宮収縮は良好と判断できます。ここまでの評価から、Aさんは「異常への対処」ではなく「正常な回復を支える援助」が必要な段階にあります。

分娩後の母体に必要なもの

分娩は長時間にわたる激しい筋肉運動です。エネルギーを大量に消費し、発汗や努責時の呼吸で多くの水分も失います。陣痛中は十分に飲食できないことが多く、出血による水分の喪失も加わります。そのため、特に制限のない正常分娩後は、早い時期に食事と水分を摂ってもらうことが回復の基本になります。

食事と水分の補給には次のような意義があります。

  • 疲労の回復と脱水の予防につながります。初回歩行時の立ちくらみや転倒の予防にも役立ちます。
  • 尿がつくられて膀胱が充満し、自然な尿意と排尿につながります。
  • この後に始まる授乳に向けて、体力と水分を整えます。

Rubinの母親役割獲得過程では、産褥早期は受容期とされます。褥婦は受け身で依存的になり、食事や睡眠などの基本的欲求を満たすことに関心が向き、分娩体験を繰り返し語るのが特徴です。Aさんが自分から分娩を振り返っている様子はこの時期によくみられる姿で、助産師は話を聴きながら、基本的欲求を満たす援助を行います。

排尿の考え方

分娩時には胎児の頭が膀胱と尿道を圧迫します。そのため分娩後は、膀胱・尿道のむくみや膀胱の感覚の鈍さ、腹壁のゆるみ、会陰の痛みなどから、尿意が起こりにくく排尿しにくい状態になりがちです。分娩後1時間で尿意がないのはよくあることです。一方、産褥早期は利尿が進むため、膀胱は短時間で充満していきます。

膀胱が充満すると子宮は上方へ押し上げられ、多くは右側へ偏ります。これが子宮収縮を妨げ、弛緩出血の原因になります。このため、分娩後数時間以内の自然排尿を目標にします。水分摂取を促し、初回歩行の際にトイレでの排尿を試み、外陰部に温水をかけたり水の流れる音を聞かせたりして尿意を誘います。それでも排尿できず膀胱が充満している場合に、初めて導尿を検討します。

選択肢の確認

1.睡眠を促す。:分娩後の休息は大切です。Aさんも早朝から陣痛が続いていたと考えられ、疲労はあるはずです。しかし現在は分娩第4期で観察が続いている時間帯であり、Aさん自身も分娩体験を語るなど覚醒して会話しています。時刻も正午ごろの昼食時です。まず消耗したエネルギーと水分を補い、そのあと落ち着いて休めるよう環境を整えるのが自然な順序です。この時点で優先して促すことではありません。

2.導尿を行う。:導尿は尿路感染や尿道損傷のリスクがある侵襲的な処置です。自然排尿を試みても排尿できず、膀胱充満によって子宮底の上昇や偏位、収縮不良が生じている場合に行います。Aさんは分娩後1時間で、尿意がないこと自体は正常範囲です。子宮底も硬く、出血も少量で、膀胱充満の影響はみられません。今は水分摂取や排尿の誘導によって自然排尿を待つ段階です。

3.腹帯を強く締める。:産褥期の腹帯は、ゆるんだ腹壁を支えて体動時の安定感を得るために、ゆるめに用いる程度のものです。強く締めると腹部を圧迫し、不快感や呼吸・循環の妨げとなり、子宮を不自然に圧迫することにもなります。強く締めても子宮復古が促されるという根拠はなく、適切な援助ではありません。

4.食事や水分摂取を促す。:正答。分娩経過、出血量、子宮収縮、バイタルサインはいずれも正常です。分娩で失ったエネルギーと水分を補うことが、疲労の回復、脱水や起立時のふらつきの予防、自然排尿、授乳の準備につながります。受容期にある褥婦の基本的欲求を満たす援助でもあり、昼食時という時間帯にも合っています。

覚えるポイント

  • 分娩第4期(胎盤娩出後2時間)は、出血量・子宮底の高さと硬さ・バイタルサイン・膀胱充満を重点的に観察します。経腟分娩で出血量500 mL以上は異常出血です。
  • 子宮底の目安は、胎盤娩出直後が臍下2〜3横指、分娩後12時間ごろが臍高から臍上1横指程度です。膀胱が充満すると子宮は上方(多くは右方)へ偏り、収縮不良から弛緩出血の原因になります。
  • 分娩直後に尿意がないのはよくあることです。まず水分摂取とトイレ誘導で自然排尿を促し、それでも出ずに膀胱充満がある場合に導尿します。導尿は最初の手段ではありません。
  • 正常な経過の褥婦には、食事・水分補給、休息、早期離床(初回歩行は付き添う)を支援します。「異常がないなら基本的ニーズの充足」が選択の基準になります。
  • 遷延分娩は初産婦30時間以上、経産婦15時間以上です。
  • Rubinの受容期は、受け身で依存的になり、食事や睡眠への関心が強く、分娩体験を繰り返し語る時期です。話を傾聴し、基本的欲求を満たす援助を行います。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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