第105回
105AM002|第105回 助産師国家試験 過去問
放射線被ばくの時期と児への影響との組合せで正しいのはどれか。
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正解2
正答
2.妊娠8週 ― 胎児奇形
この問題のポイント
胎内で放射線を被ばくしたときの児への影響は、被ばくした時期の発生段階によって異なります。問題文の週数は最終月経開始日から数える妊娠週数です。受精後の週数(妊娠週数から2週を引いた値)に置き換え、着床前期・器官形成期・胎児期のどこにあたるかを判断することが鍵になります。
解説
時期によって影響が変わる理由
放射線には、細胞分裂が盛んで分化が進んでいない細胞ほど影響を受けやすいという性質があります(ベルゴニー・トリボンドーの法則)。胚・胎児は全体として成人より感受性が高く、しかも時期ごとに盛んに増殖・分化している組織が異なります。そのため、同じ線量を浴びても、被ばくした時期によって現れる影響が変わります。
時期ごとの代表的な影響
放射線の影響は受精後週数で示されることが多いので、妊娠週数(受精後週数+2週)に換算して整理します。
- 着床前期(受精後約2週まで=妊娠4週未満):全か無か(all or none)の時期です。胚が死亡して流産になるか、残った細胞が失われた分を補って影響を残さないかのどちらかになります。奇形は生じないとされます。
- 器官形成期(受精後約2〜8週=妊娠4〜10週頃):心臓、中枢神経、四肢、顔面などの器官がつくられる時期で、奇形が最も問題になります。
- 胎児期のうち受精後8〜15週(妊娠10〜17週頃):大脳皮質のニューロンが盛んに増殖・移動する時期で、精神発達遅滞(小頭症を伴うこともあります)に対する感受性が最も高くなります。
- 受精後16〜25週(妊娠18〜27週頃):精神発達遅滞のリスクは残りますが、感受性は低下し、より高い線量でなければ生じません。
- 妊娠28週頃以降:器官形成期も、放射線で精神発達遅滞が生じうる時期も過ぎています。そのため、奇形や精神発達遅滞が問題になることはほとんどありません。
妊娠後期に感受性が下がるのは、放射線の影響を受けやすい大脳皮質ニューロンの増殖・移動が盛んな時期を過ぎたためです。脳の発達が終わったためではありません。妊娠後期には脳溝の形成、シナプス形成、髄鞘化などが進んで脳は大きく成長し、その発達は出生後も続きます。早産児が脳室周囲白質軟化症を起こしやすいのも、この時期の脳が未熟なためです。
この問題の妊娠8週は受精後約6週で、器官形成期のただ中にあたります。したがって「胎児奇形」との組合せが正しいと判断できます。
確定的影響と確率的影響
流産(胚・胎児の死亡)、奇形、精神発達遅滞、発育遅延は確定的影響です。閾値線量があり、それを下回る被ばくでは起こりません。一方、小児がん(白血病など)の発生は確率的影響で、閾値がないと仮定されます。確率的影響は奇形のように特定の時期に限られません。そのため、妊娠後期の被ばくでも「影響がまったくない」とは言えず、発がんのリスクは残ると理解しておきます。
実践での活かし方
妊娠と気づかずにX線検査を受け、不安を訴える女性は少なくありません。適切に行われたほとんどの診断用X線検査では、胎児線量は確定的影響の閾値を下回ります。国際放射線防護委員会(ICRP)は、胎児線量100mGy未満では放射線のリスクを理由に人工妊娠中絶を正当化できないとしています。助産師は、被ばくした時期と線量の両面から正しい情報を提供し、不必要な不安や中絶を避けられるよう支援します。また、妊娠可能な年齢の女性が腹部・骨盤部の検査を受ける前には、最終月経と妊娠の可能性を確認することが基本です。
選択肢の確認
1.妊娠3週 ― 中枢神経障害:妊娠3週は受精後およそ1週で、着床前後の時期にあたります。この時期の被ばくは「全か無か」に従い、流産になるか影響を残さないかのどちらかになります。奇形や中枢神経障害は生じないとされます。放射線による中枢神経障害の代表である精神発達遅滞が問題になるのは受精後8〜25週で、とくに受精後8〜15週(妊娠10〜17週頃)です。したがって、この組合せは誤りです。
2.妊娠8週 ― 胎児奇形:正答。妊娠8週は受精後約6週で、器官形成期(受精後約2〜8週、妊娠4〜10週頃)にあたります。多くの器官が形成されている最中なので、閾値を超える線量を被ばくすると、その時点で形成中の器官に奇形が生じるおそれがあります。薬剤の時期区分では妊娠8週から相対過敏期に入ります。しかし放射線の影響の区分では、器官形成期を受精後8週(妊娠10週頃)までとして扱います。そのため、妊娠8週は奇形が問題になる時期に含まれます。
3.妊娠15週 ― 流産:妊娠15週は受精後約13週で、大脳皮質のニューロンが盛んに増殖・移動する時期にあたります。放射線の影響としては精神発達遅滞が最も問題になります。被ばくによる流産(胚死亡)が代表的な影響とされるのは着床前期(妊娠4週未満)です。胎児期の被ばくで胎児死亡に至るのは、非常に高い線量を浴びた場合に限られます。妊娠15週は流産の定義(妊娠22週未満)の範囲内ですが、この時期に特徴的な影響として流産を組み合わせるのは誤りです。
4.妊娠35週 ― 精神発達遅滞:妊娠35週は受精後約33週です。器官形成期も、放射線で精神発達遅滞が生じうる時期(受精後25週=妊娠27週頃まで)も過ぎているため、奇形や精神発達遅滞が生じる危険はほとんどありません。脳の成長・成熟そのものはこの時期も続いていますが、放射線の影響を受けやすい大脳皮質ニューロンの増殖・移動が盛んな時期はすでに終わっています。この時期に考慮すべきなのは、閾値がないと仮定される小児がんなどの確率的影響です。精神発達遅滞と組み合わせるべきなのは、感受性が最も高い妊娠10〜17週頃(受精後8〜15週)です。したがって、この組合せは誤りです。
覚えるポイント
- 妊娠週数=受精後週数+2です。問題文が「妊娠〜週」か「受精後〜週」かを必ず確認してから時期を判断します。
- 着床前期(妊娠4週未満)は「全か無か」で、流産になるか影響が残らないかのどちらかです。奇形は起こらないとされます。
- 器官形成期(受精後2〜8週=妊娠4〜10週頃)は奇形、受精後8〜15週(妊娠10〜17週頃)は精神発達遅滞の感受性が最も高い時期です。妊娠28週頃以降は奇形・精神発達遅滞をほぼ考えません。これは放射線に弱い時期を過ぎたためで、脳の発達は出生後も続きます。
- 流産・奇形・精神発達遅滞・発育遅延は閾値のある確定的影響、小児がんは閾値なしと仮定される確率的影響です。ICRPは、胎児線量100mGy未満では放射線のリスクを理由とした中絶は正当化されないとしています。
- 薬剤の催奇形性の時期区分(妊娠4週未満=無影響期、4〜7週=絶対過敏期、8〜15週=相対過敏期、16週以降=潜在過敏期)は妊娠週数で示されます。放射線の時期区分は受精後週数で示されることが多いので、換算して混同しないようにします。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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