第105回

105AM027|第105回 助産師国家試験 過去問

妊娠中のヒトパルボウイルスB19感染による児への影響で正しいのはどれか。

解答・解説を見る

正解1

正答

1.貧血

この問題のポイント

ヒトパルボウイルスB19が胎児に及ぼす影響を、ほかの母子感染症の所見と区別できるかを問う問題です。判断の鍵は、このウイルスが赤芽球系前駆細胞に感染して赤血球の産生を止めるという性質です。胎児では高度の貧血から心不全、胎児水腫、胎児死亡へ進むことがあります。ほかの選択肢は、風疹、トキソプラズマ、サイトメガロウイルス、産道感染の代表的な所見と結び付けて除外できます。

解説

ヒトパルボウイルスB19とは

B19は伝染性紅斑(りんご病)の原因ウイルスです。主に飛沫や接触で感染し、幼児から学童の間で流行します。

  • 小児では、両頰の紅斑と四肢のレース状(網目状)の紅斑が特徴です。
  • 成人では発疹が目立たず、関節痛や関節炎が前面に出ることが多いです。不顕性感染も少なくありません。
  • 感染力が高いのはウイルス血症の時期で、特徴的な紅斑が出るころには感染力はほぼなくなっています。そのため、発疹が出てから隔離しても流行を防ぎにくいです。保育士、教員、小さな子のいる家庭の妊婦などは、気付かないうちに感染していることがあります。
  • ワクチンや特異的な抗ウイルス薬はありません。

なぜ貧血になるのか

B19は、赤血球系の細胞表面にあるP抗原(グロボシド)を受容体として赤芽球系前駆細胞に感染し、その細胞を破壊します。

  • 健康な成人では、赤血球の寿命が約120日と長いため、産生が一時的に止まっても臨床的な貧血はほとんど目立ちません。
  • 遺伝性球状赤血球症など赤血球の寿命が短い溶血性疾患の患者では、急激な無形成発作(aplastic crisis)を起こします。

胎児もこの「赤血球の寿命が短く、造血が盛ん」という条件に当てはまります。胎児期は肝臓を中心に活発に造血しながら循環血液量を急速に増やしており、赤血球の寿命も成人より短いです。そのため、産生が止まると短期間で高度の貧血に陥ります。

胎児水腫に至る経路

基本の流れは次のとおりです。

高度の貧血 → 酸素供給を保つための高拍出性心不全 → 皮下浮腫・胸水・腹水・心嚢液の貯留 → 非免疫性胎児水腫 → 胎児死亡

ウイルスによる胎児の心筋炎が加わることもあります。胎内で感染しても自然に回復する例は多く、必ず重症化するわけではありません。ただし、妊娠前半の感染で胎児への影響が大きいとされています。

臨床・助産の場面で

  • 妊婦の感染が疑われる場合は、IgM抗体などで母体の感染を確認します。その後しばらくは超音波で、胎児の腹水・胸水・皮下浮腫・心拡大を観察します。あわせて中大脳動脈収縮期最高血流速度(MCA-PSV)の上昇から胎児貧血を推定します。
  • 高度の貧血が疑われれば、胎児採血と、臍帯静脈からの胎児輸血(子宮内輸血)が検討されます。
  • 予防の基本は、流行期の手洗い、マスク、食器を共用しないなどの一般的な感染対策です。小児と接する機会の多い妊婦への保健指導で伝える内容です。

ほかの母子感染との違い

B19は、風疹のように器官形成期に作用して形態異常(奇形)を起こす病原体とは位置付けられていません。問題の中心は、貧血とその結果としての胎児水腫です。ほかの選択肢はいずれも別の病原体の代表的な所見なので、「病原体と特徴的所見の組み合わせ」で判断できます。

選択肢の確認

1.貧血:正答。B19は赤芽球系前駆細胞に感染して赤血球の産生を一時的に止めます。造血が盛んで赤血球の寿命が短い胎児ではヘモグロビン値が急速に下がり、高拍出性心不全から胎児水腫・胎児死亡に至ることがあります。これが胎内感染で最も問題となる影響です。超音波によるMCA-PSVの測定と胎児輸血は、まさにこの病態を評価し治療するためのものです。

2.結膜炎:新生児に起こる代表的な眼の感染症は、淋菌やクラミジア・トラコマチスが分娩時に産道で感染して起こるものです。B19の胎内感染とは病原体も感染経路も異なります。淋菌性は生後数日以内に強い膿性眼脂と眼瞼腫脹で発症し、角膜穿孔の危険があります。クラミジア性は生後1〜2週ごろとやや遅れて発症し、肺炎を合併することがあります。妊婦健診でのクラミジア検査や出生後の抗菌薬点眼は、この産道感染を防ぐための対策です。

3.心奇形:心臓の形成異常は先天性風疹症候群の三大症状の一つで、動脈管開存や末梢肺動脈狭窄が代表的です。風疹は妊娠初期、特に器官形成期の感染で、心臓・眼(白内障)・耳の障害を起こしやすくなります。一方、B19は形態異常を起こす病原体とはされておらず、胎児への影響は造血障害が中心です。

4.水頭症:脳脊髄液の貯留による脳室拡大、頭蓋内石灰化、網脈絡膜炎は、先天性トキソプラズマ症の古典的三徴です。トキソプラズマは生肉の摂取や猫の糞便を介して感染するため、妊婦には加熱調理や手洗いを指導します。B19で起こる胎児水腫は、体腔や皮下に液体がたまる状態で、脳室に液体がたまる状態ではありません。名前が似ているため混同しないよう注意が必要です。

5.内耳性難聴:内耳の障害による感音難聴は、先天性風疹症候群と先天性サイトメガロウイルス感染症で問題となります。サイトメガロウイルスでは、小頭症や脳室周囲石灰化とともに、出生時には目立たず後から進行する感音難聴がみられることがあります。小児の非遺伝性感音難聴の原因として重要です。B19の胎内感染では、難聴は主要な影響ではありません。

覚えるポイント

  • パルボウイルスB19は赤芽球系前駆細胞(P抗原)に感染し、胎児の高度貧血 → 高拍出性心不全 → 非免疫性胎児水腫・胎児死亡を起こします。奇形は主な影響ではありません。
  • 胎児貧血は超音波(水腫の所見、MCA-PSVの上昇)で評価し、治療は胎児輸血です。
  • 伝染性紅斑は、発疹が出るころには感染力がほぼありません。ワクチンはないため、流行期の妊婦は手洗い・マスクなど一般的な対策で予防します。
  • 先天性風疹症候群の三大症状は、心奇形(動脈管開存など)、白内障、感音難聴です。
  • 先天性トキソプラズマ症は水頭症・頭蓋内石灰化・網脈絡膜炎、先天性サイトメガロウイルス感染症は小頭症・脳室周囲石灰化・進行性の感音難聴が特徴です。
  • 新生児の結膜炎は産道感染によるもので、淋菌性は早期に重症化し、クラミジア性はやや遅れて発症し肺炎を合併することがあります。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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