第105回

105AM028|第105回 助産師国家試験 過去問

37歳の初産婦。妊娠40週3日に陣痛発来で入院した。子宮口5cm開大ころから努責感が抑制できず、陣痛発作時にいきんでいたところ、子宮口8cm開大から急激に全開大となり分娩に至った。会陰右側切開術を施行。児の娩出直後から腟口から鮮紅色の出血が持続的にある。胎盤娩出後の子宮底は臍下3横指で硬く触れる。子宮底を圧迫して凝血塊の排出は認められない。このときの助産師の対応で適切なのはどれか。

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正解3

正答

3.頸管把持鉗子を準備する。

この問題のポイント

分娩直後に続く出血について、子宮収縮の状態と出血の性状から原因を見分け、次に行う対応を選ぶ問題です。子宮底は臍下3横指で硬く、凝血塊もたまっていないので、弛緩出血は考えにくくなります。そのうえで鮮紅色の出血が持続しているため、産道損傷を疑います。全開大前からの努責と、8cmから急激に全開大した経過が、頸管裂傷を疑う決め手です。

解説

問題文の手がかりを整理する

  • 37歳の初産婦(高年初産):軟産道の伸展性が低い傾向があり、産道損傷の背景因子になります。
  • 子宮口5cm開大ころから努責を抑制できず、陣痛発作時にいきんでいた:子宮口が全開大する前から努責していたことを示します。
  • 8cm開大から急激に全開大となり分娩:頸管が十分に伸展しないうちに、児頭が強い力で通過したと考えられます。
  • 児娩出直後から腟口より鮮紅色の出血が持続:胎盤娩出前から始まっています。色は動脈性を思わせる鮮紅色で、途切れずに流れ続けています。
  • 胎盤娩出後の子宮底は臍下3横指で硬い、圧迫しても凝血塊なし:胎盤娩出直後の子宮底は臍下2〜3横指で硬く触れるのが正常です。子宮収縮は良好で、子宮腔内に血液もたまっていないと判断できます。

分娩後出血の原因を整理する枠組み

分娩後出血の原因は、4つのTで整理すると見落としが減ります。

  • Tone:子宮収縮不良による弛緩出血
  • Trauma:頸管裂傷・腟壁裂傷・会陰裂傷・子宮破裂などの産道損傷
  • Tissue:胎盤・卵膜の遺残
  • Thrombin:凝固障害

本問では、子宮底が硬く位置も正常で、圧迫しても凝血塊が出ないため、Toneは否定的です。胎盤はすでに娩出され、子宮収縮も良好なので、遺残を強く疑う所見もありません。凝固障害を疑わせる背景(常位胎盤早期剥離、急激な全身状態の悪化など)も示されていません。一方で、全開大前の努責と急速な開大という損傷の原因がそろっているため、Traumaとして頸管裂傷を第一に考えます。

弛緩出血と頸管裂傷の違いは、次のように比べて覚えます。

  • 弛緩出血:主に胎盤娩出後に起こります。出血は暗赤色で、間欠的に凝血塊を伴って流出します。子宮は軟らかく、子宮底は高くなります。子宮を圧迫すると血液や凝血塊が出てきます。
  • 頸管裂傷:児娩出直後から起こります。出血は鮮紅色で、持続的に流出します。子宮収縮は良好です。

頸管裂傷の確認と助産師の役割

頸管裂傷は、子宮口が全開大する前の努責、急速な分娩進行、鉗子分娩・吸引分娩、巨大児などで起こりやすくなります。好発部位は頸管の側方(3時・9時方向)です。頸管は腟の奥にあるため、外陰の視診や内診指だけでは、裂傷の部位や広がりを確かめられません。

確認では、腟鏡で腟壁を展開し、頸管把持鉗子で頸管の縁を把持します。把持する位置を少しずつずらしながら、全周を観察します。裂傷が見つかれば医師が縫合します。断裂した血管は上方へ退縮していることがあるため、縫合は裂傷の上端よりやや上から始めます。

助産師は次のことを並行して行い、医師の診察と縫合がすぐ始められるように整えます。

  • 医師へ報告する
  • 腟鏡・頸管把持鉗子・縫合セット・照明を準備する
  • 出血量を計測する
  • バイタルサインとショックインデックス(心拍数÷収縮期血圧)で循環状態を評価する
  • 静脈路確保の準備をする

産婦への声かけと説明も欠かせません。

実践へのつなげ方

分娩後の出血を見たら、まず子宮底を触れて収縮を確認します。軟らかければ弛緩出血への対応を始めます。硬いのに出血が続く場合は、産道のどこから出ているかを探します。この順序で考えることが、原因に合った止血への最短経路になります。

また本問の産婦のように全開大前に努責感が強い場合は、短促呼吸(「ハッハッ」と短く吐く)で努責を逃がすよう支援します。肛門部の圧迫で努責感を和らげることも有効です。これらは頸管裂傷や頸管浮腫の予防につながる大切な助産ケアです。

選択肢の確認

1.会陰切開部に裂傷がないか確認する。:会陰切開創が延びて裂けた場合も、鮮紅色の出血は起こりえます。ただし切開創は外陰部にあり、直視で観察でき、縫合時にも当然確認される部位です。本問の出血は腟口から流れ出ているので、出血源は切開創より奥にあると考えるのが自然です。さらに経過は頸管裂傷の典型です。切開部の確認だけで済ませると、腟の奥の裂傷を見逃して止血が遅れます。切開創の辺縁から直接出血している場合や、縫合前に創の延長を確かめる場面であれば、適切な観察になります。

2.子宮底輪状マッサージをする。:輪状マッサージは、子宮筋を刺激して収縮を促す弛緩出血への処置です。本問では子宮底が臍下3横指で硬く、収縮は良好です。マッサージをしても、産道の損傷からの出血は止まりません。子宮が軟らかく子宮底が高い場合や、圧迫で暗赤色の血液や凝血塊が出てくる場合であれば、まず行う対応です。

3.頸管把持鉗子を準備する。:正答。子宮収縮が良好なのに鮮紅色の出血が続くことから、産道損傷が考えられます。全開大前の努責と急速な開大という経過から、頸管裂傷を強く疑います。頸管は腟鏡で展開し、鉗子で把持しながら全周を観察しなければ評価できません。そのため、腟鏡や縫合器具とあわせて鉗子を用意し、医師の診察と縫合に備えることが、この時点で求められる対応です。

4.子宮収縮薬を準備する。:オキシトシンやメチルエルゴメトリンなどの子宮収縮薬は、子宮の収縮を強めて弛緩出血を治療・予防する薬剤です。本問ではすでに子宮が硬く収縮しています。さらに収縮を強めても、裂傷からの出血を止める効果はなく、原因への対応になりません。子宮が軟らかい、マッサージをしても収縮が保てないといった場合に選ぶ対応です。

5.導尿する。:膀胱が充満すると子宮の収縮が妨げられ、子宮底が上方や側方へ押し上げられて、弛緩出血の誘因になります。そのため、子宮底が高い、側方へ偏っている、軟らかいといった所見があれば排尿の援助を考えます。本問では子宮底が正常な高さで硬く触れ、膀胱充満を示す所見はありません。出血の原因への対応として優先されません。

覚えるポイント

  • 分娩後出血は4T(Tone・Trauma・Tissue・Thrombin)で整理します。最初に子宮底を触れて収縮を確かめます。
  • 弛緩出血は、胎盤娩出後・暗赤色・間欠的・凝血塊あり・子宮が軟らかいのが特徴です。対応は輪状マッサージ、子宮収縮薬、双手圧迫、膀胱を空にすることです。
  • 頸管裂傷は、児娩出直後から・鮮紅色・持続的・子宮収縮良好が特徴です。腟鏡と頸管把持鉗子で全周を確認し、医師が縫合します。好発部位は3時・9時方向です。
  • 頸管裂傷のリスク因子は、全開大前の努責、急速な分娩進行、鉗子分娩・吸引分娩、巨大児、軟産道の伸展不良(高年初産など)です。
  • 胎盤娩出直後の子宮底は、臍下2〜3横指で硬く触れるのが正常です。
  • ショックインデックスは心拍数÷収縮期血圧です。妊産婦ではSI 1で約1.5L、SI 1.5で約2.5Lの出血を推定します。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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