第105回

105AM029|第105回 助産師国家試験 過去問

Aさん(27歳、初産婦)は身長160 cm、非妊時体重58 kgである。妊娠39週5日で、3,560 gの男児を正常分娩した。分娩時出血量は300 mL、産後2日の採血でHb 11.0 g/dLであった。授乳は1日8〜10回行っている。Aさんに推奨される1日の栄養付加量で正しいのはどれか。

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正解5

正答

5.エネルギー350 kcal

この問題のポイント

授乳婦の栄養付加量を「日本人の食事摂取基準」に沿って答える問題です。事例には数値が多く出てきますが、Aさんは普通体重で分娩経過も正常範囲です。1日8〜10回授乳しているので、母乳栄養の授乳婦として標準の付加量を当てはめればよいと読み取ることが鍵になります。出題当時の基準は日本人の食事摂取基準(2020年版)で、授乳期の付加量を妊娠期の付加量と混同せずに区別できるかが問われています。

解説

事例から読み取ること

  • 体格:BMIは58÷(1.6×1.6)≒22.7で、普通体重です。体格を理由に付加量を調整する必要はありません。
  • 分娩経過:妊娠39週5日の正期産で、正常分娩です。出血量300 mLは、経腟分娩で分娩時異常出血とされる500 mLに達していません。
  • 産後2日のHb 11.0 g/dL:分娩による出血や循環血液量の変化の影響を受ける時期なので、軽度の低下はありえます。ただし、付加量の数字そのものを変える情報ではありません。鉄を多く含む食品を意識するよう伝える程度の所見です。
  • 授乳1日8〜10回:母乳栄養が確立しつつあることを示しています。授乳婦のエネルギー付加量は、母乳だけで育てた場合の哺乳量をもとに算出されているため、そのまま当てはめられます。

付加量の考え方と授乳婦の値

妊婦と授乳婦の必要量は、本人の年齢区分(Aさんは18〜29歳女性)の値に「付加量」を上乗せして求めます。鉄については、授乳中は月経が再開していないことが多いため、「月経なし」の値に付加量を加えます。

2020年版の授乳婦の付加量(エネルギーは推定エネルギー必要量、その他は推奨量)は次のとおりです。

  • エネルギー:+350 kcal
  • たんぱく質:+20 g
  • 鉄:+2.5 mg
  • 葉酸:+100 μg
  • カルシウム:付加量なし

エネルギー付加量は、次の差として算出されています。

  • 母乳として分泌されるエネルギー:哺乳量約0.78 L/日×約663 kcal/Lで、約517 kcal
  • 差し引く分:産後の体重減少(体脂肪などの動員)によってまかなわれる約170 kcal

差し引きは約350 kcalになります。このため、授乳期の付加量は妊娠後期(+450 kcal)より小さい値です。

臨床では、退院前の栄養指導で「授乳中は妊娠中ほど多く食べる必要はないが、エネルギーとたんぱく質はしっかり補う」と伝えます。そのうえで、体重の戻り方や授乳回数を見ながら個別に調整します。混合栄養や人工栄養であれば、母乳の分泌量に応じて付加量は少なくなります。

なお、出題当時は2020年版(2020〜2024年度に使用)が基準でした。現在は2025年版が適用されているため、最新の数値は2025年版で確認してください。

選択肢の確認

1.葉酸10 μg:授乳婦の葉酸の付加量は、母乳に分泌される葉酸を補う目的で、推奨量として1日100 μg(推定平均必要量では80 μg)とされています。10 μgは桁が一つ小さい値です。妊娠中期・後期の付加量は推奨量で240 μgとさらに多くなっています。これとは別に、妊娠を計画している女性や妊娠初期の妊婦には、神経管閉鎖障害のリスクを下げるため、サプリメントなどからプテロイルモノグルタミン酸を1日400 μg摂取することが勧められています。

2.鉄分10 mg:授乳婦の鉄の付加量は推奨量で1日2.5 mgで、母乳中に失われる鉄を補う量として「月経なし」の値に加えます。10 mg前後は、胎児・胎盤の発育や循環血液量の増加で鉄需要が大きく増える妊娠中期・後期の付加量(推奨量9.5 mg)に近い値です。そのため、妊娠期の値と取り違えやすい選択肢です。AさんはHb 11.0 g/dLなので鉄を意識した食事は大切ですが、推奨される付加量が10 mgになるわけではありません。治療として鉄剤が必要かどうかは医師が判断します。

3.タンパク質5g:授乳婦のたんぱく質の付加量は、母乳中のたんぱく質を補うため、推奨量で1日20 g(推定平均必要量では15 g)とされています。5 gでは不足します。5 gは妊娠中期の付加量にあたる値です。妊娠初期は付加なし、妊娠後期は推奨量で25 gと、時期によって段階的に変わることもあわせて覚えます。

4.カルシウム300 mg:授乳婦にはカルシウムの付加量は設定されていません。授乳中は尿中へのカルシウム排泄が減り、骨からの動員によって母乳中のカルシウムがまかなわれます。この骨量の減少は離乳後に回復することが確認されています。妊娠中も腸管からの吸収率が高まることで需要増加に対応できるため、妊婦にも付加量はありません。ただし、カルシウムはもともと不足しがちな栄養素なので、年齢相応の推奨量を確保するよう指導します。

5.エネルギー350 kcal:正答。出題当時の2020年版では、授乳婦の推定エネルギー必要量の付加量は1日350 kcalです。母乳として分泌されるエネルギー(約517 kcal)から、産後の体重減少でまかなわれる分(約170 kcal)を差し引いて算出されています。Aさんは1日8〜10回授乳しており、母乳栄養の授乳婦としてこの付加量が当てはまります。

覚えるポイント

  • 授乳婦の付加量(2020年版):エネルギー+350 kcal、たんぱく質+20 g、鉄+2.5 mg、葉酸+100 μg、カルシウムは付加なし。
  • 妊婦のエネルギー付加量は初期+50、中期+250、後期+450 kcal。授乳期(+350 kcal)は妊娠後期より少ない。
  • 授乳婦のエネルギー付加量は「母乳のエネルギー量−体重減少分」で求められ、母乳栄養を前提としている。混合栄養では減らして考える。
  • 鉄の付加量は、授乳期+2.5 mgに対し、妊娠中期・後期は+9.5 mgと大きい。妊婦・授乳婦の付加量は「月経なし」の値に上乗せする。
  • たんぱく質の付加量は、妊娠初期0 g、中期+5 g、後期+25 g、授乳期+20 g(いずれも推奨量)。
  • カルシウムは妊娠期・授乳期とも付加量なし。理由は吸収率の上昇、尿中排泄の減少、離乳後の骨量回復。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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