第105回

105PM011|第105回 助産師国家試験 過去問

Aさん(22歳、初産婦)は妊娠41週2日で陣痛発来し、分娩所要時間18時間で体重3,950 gの女児を出産した。会陰裂傷第2度、分娩時出血量は350 mL。分娩後2時間で、子宮底の高さは臍下2横指で硬く触れた。Aさんが尿意を訴えたためトイレ歩行を試みると、恥骨部に強い痛みを訴えて歩行できず、車椅子で帰室した。帰室後のAさんへの助産師の説明で正しいのはどれか。

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正解2

正答

2.「骨盤ベルトの装着をしましょう」

この問題のポイント

分娩後の初回歩行で恥骨部に強い痛みが出て歩けなくなった褥婦をアセスメントし、適切な説明を選ぶ問題です。手がかりは次の3点です。

  • 3,950 gと大きめの児を経腟分娩している。
  • 痛みが恥骨部に限局し、歩行(荷重)で誘発されている。
  • 子宮収縮は良好である。

これらから恥骨結合離開を疑い、骨盤輪を外から締めて安定させる骨盤ベルトが対応の柱になることを押さえます。

解説

事例の情報を整理する

  • 22歳の初産婦で、妊娠41週2日の分娩です。正期産(37週0日〜41週6日)の範囲内です。
  • 分娩所要時間は18時間です。初産婦としてはやや長めですが、遷延分娩(初産婦30時間以上、経産婦15時間以上)には当たりません。
  • 児は3,950 gです。巨大児の基準(4,000 g以上)には届きませんが、大きめの児が産道を通過しています。
  • 会陰裂傷は第2度で、会陰の筋層までの裂傷です。肛門括約筋には及んでいません。
  • 出血量は350 mLです。経腟分娩の異常出血の目安(500 mL以上)を下回り、正常範囲です。
  • 分娩後2時間の子宮底は臍下2横指で、硬く触れています。分娩直後の子宮底は臍下2〜3横指が目安なので、子宮収縮は良好で、弛緩出血の徴候はありません。
  • 尿意があってトイレ歩行を試みたところ、恥骨部の強い痛みで歩けませんでした。

分娩第4期(胎盤娩出後2時間)までの経過に大きな異常はありません。問題は、立って歩こうとしたときに初めて現れた恥骨部の痛みです。子宮ではなく骨盤(恥骨結合)に原因がある痛みと考えるのが自然です。

恥骨結合離開の成り立ち

妊娠中はリラキシン、エストロゲン、プロゲステロンの作用で、恥骨結合や仙腸関節を支える靱帯が緩みます。骨盤輪にゆとりが生じ、恥骨結合の間隙も生理的に少し広がります。これは児が産道を通りやすくするための変化です。

ここに次のような力が加わると、恥骨結合が過度に開いて靱帯が損傷されることがあります。

  • 大きな児頭や肩の通過
  • 長時間の強い開脚姿勢での娩出
  • 急速な娩出、吸引・鉗子分娩
  • 肩甲難産時の股関節の強い屈曲・開排

主なリスク因子は、初産、大きな児、器械分娩、肩甲難産などです。一般に、恥骨結合の間隙が10 mmを超えて開いた状態を恥骨結合離開と呼ぶことが多いです。

症状と対応

典型的な症状は次のとおりです。

  • 分娩後の初回歩行時などに恥骨部の強い痛みが出る。
  • 立ち上がる、歩く、寝返る、片脚に体重をかける、脚を持ち上げるなどの動作で痛みが増す。
  • 痛みが鼠径部や大腿、腰部に広がることがある。
  • 左右に体を揺らすような歩き方(あひる歩行)になる。
  • 恥骨結合部に圧痛があり、ときに間隙を触れる。

診断は医師が症状と触診で行い、必要に応じてX線や超音波で間隙を確認します。

治療は保存的療法が基本です。痛みの強い時期の安静、骨盤ベルトによる骨盤輪の固定、鎮痛薬の使用、歩行器などを使った段階的な離床を組み合わせます。多くは数週間から数か月で改善します。

骨盤ベルトは、大転子と恥骨結合の高さで骨盤を周囲から締めて使います。開いた恥骨結合と、連動して不安定になった仙腸関節を安定させることで、動作時の痛みを和らげ、日常生活動作や育児を再開しやすくします。助産師がその場で導入でき、痛みの軽減と早期離床の両方に役立つ説明です。

帰室後の助産師の関わり

  • 医師に報告し、痛みの部位・程度・誘発動作、圧痛の有無を観察して記録します。
  • 移動は車椅子などで介助し、転倒を防ぎます。
  • 尿意への対応も欠かせません。分娩後は膀胱の充満が子宮収縮を妨げ、弛緩出血の誘因にもなります。ポータブルトイレや床上での排泄を援助し、自尿がなければ医師の指示で導尿を検討します。
  • 授乳では、側臥位授乳やクッションで姿勢を整え、骨盤への負担を減らします。
  • 鎮痛薬は、アセトアミノフェンなど授乳と両立できる薬剤が選ばれます。

選択肢の確認

1.「初めての歩行のときに生じる一時的な痛みです」:初回歩行時には、起立性低血圧によるめまい・失神や、会陰の創部痛がみられることがあります。しかし、恥骨部に限局して歩行できないほどの強い痛みは、正常な産褥経過として説明できるものではありません。一時的と説明して様子をみると、医師への報告や診断が遅れます。さらに無理な歩行で転倒したり、離開や痛みが悪化したりするおそれがあります。

2.「骨盤ベルトの装着をしましょう」:正答。大きめの児の経腟分娩後、歩行で誘発される恥骨部の強い痛みから恥骨結合離開が疑われます。骨盤ベルトで大転子と恥骨結合の高さから骨盤輪を締めると、離開部と仙腸関節が安定し、動作時の痛みが軽くなって離床や育児を進めやすくなります。安静、鎮痛薬、転倒予防とあわせて行う、保存的治療の中心となる対応です。

3.「産後の子宮収縮に伴う痛みです」:後陣痛は、子宮の収縮によって下腹部に周期的に生じる痛みです。授乳時のオキシトシン分泌で強まり、経産婦で強く感じやすく、多くは分娩後2〜3日で軽くなります。この事例は初産婦で、子宮底は硬く収縮良好です。痛みは恥骨部に限局し、歩行(荷重)で誘発されているため、後陣痛の特徴と合いません。後陣痛と説明すると、骨盤の損傷を見逃すことになります。

4.「母乳栄養は中止しましょう」:恥骨結合離開は骨盤の靱帯・関節の問題であり、乳汁の分泌や母乳の質には影響しません。鎮痛薬も授乳と両立できるものが選ばれます。授乳は子宮復古を促し、母子の関係づくりにも重要なので、側臥位授乳やクッションで姿勢を工夫して続けます。母乳を控える判断は、授乳と両立しにくい薬剤を使う場合や一部の母体感染症など、別の理由で検討されるものです。

覚えるポイント

  • 分娩後の初回歩行で恥骨部痛と歩行困難があれば、恥骨結合離開を疑います。背景にはリラキシンなどによる靱帯の弛緩があり、大きな児、初産、器械分娩、肩甲難産などがリスク因子です。
  • 典型的な所見は、荷重・寝返り・片脚立ちで増す恥骨部痛、あひる歩行、恥骨結合部の圧痛です。
  • 対応は、安静、骨盤ベルト(大転子の高さで骨盤輪を固定)、鎮痛薬、転倒予防と段階的な離床です。授乳は姿勢を工夫して継続します。
  • 後陣痛との鑑別点は3つです。後陣痛は子宮収縮による下腹部の周期的な痛みで、経産婦と授乳時に強く、2〜3日で軽減します。
  • 押さえる数値は次のとおりです。巨大児は4,000 g以上、経腟分娩の異常出血は500 mL以上、遷延分娩は初産婦30時間・経産婦15時間、分娩直後の子宮底は臍下2〜3横指です。
  • 分娩後の排尿確認は重要です。膀胱充満は子宮収縮を妨げるため、歩行できない褥婦にも排泄の援助を忘れないようにします。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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