第105回
105PM010|第105回 助産師国家試験 過去問
正常分娩において、胎盤が剝離していると判断できるのはどれか。
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正解2
正答
2.腟口近くで臍帯を挟んだコッヘルが手前に大きく下がってきた時点
この問題のポイント
分娩第3期に、胎盤が子宮壁から剝がれたことを示す「胎盤剝離徴候」を読み取れるかを問う問題です。鍵になるのは、臍帯の動き(アールフェルド徴候、キュストネル徴候)と、子宮底の位置・子宮体の形と硬さ(シュレーダー徴候)が、剝離の前と後でどう変わるかの理解です。出血は剝離に伴って起こりますが、出血の有無や経過時間だけでは剝離を判定できない点にも注意します。
解説
胎盤が剝がれるしくみ
胎児が娩出されると、子宮は急に収縮して容積が小さくなり、胎盤付着部の面積も縮みます。胎盤そのものは収縮しないため、付着面との間にずれが生じ、脱落膜の海綿層で剝がれ始めます。剝離面からの出血は胎盤の後ろにたまって血腫(胎盤後血腫)をつくり、剝離の進行を助けます。完全に剝がれた胎盤は、子宮下部から腟へ下降して娩出されます。
胎盤剝離徴候は、この「剝がれて下がる」という変化を、主に臍帯の動きと子宮の形の変化から、体の外側で確かめる所見です。
主な胎盤剝離徴候
- シュレーダー徴候:胎児娩出直後で胎盤がまだ付着しているあいだは、子宮底は臍高付近にあり、子宮体は幅広く軟らかく触れます。胎盤が剝離して子宮下部へ下降すると、子宮体は押し上げられて硬く細長くなり、子宮底は臍上へ上昇して右に傾きます。
- アールフェルド徴候:腟口の位置で臍帯をコッヘル鉗子で挟んでおきます。胎盤が剝離して下降すると、腟外に出ている臍帯が長くなり、鉗子が下がってきます。
- キュストネル徴候:恥骨結合の上を手で圧迫して子宮を押し上げます。未剝離では、臍帯が胎盤ごと引かれて腟内に引き込まれます。剝離していれば引き込まれません。
- ストラスマン徴候:一方の手で臍帯を軽く持ち、もう一方の手で子宮底を軽く叩きます。未剝離では臍帯に振動が伝わり、剝離していれば伝わりません。
- クライン徴候:産婦に腹圧をかけてもらうと、臍帯が腟外へ下降します。腹圧をやめたときに臍帯が腟内へ戻れば未剝離、戻らなければ剝離と判断します。
- ミクリッツ-ラデッキー徴候:剝離した胎盤が腟内に下がって直腸を圧迫し、産婦が便意(いきみたい感じ)を訴えます。
臍帯でみる徴候は、「胎盤が付着していれば、臍帯は子宮の動きにつられて腟内へ引き戻され、叩いた振動も伝わる。剝離すれば、臍帯は腟外へ下がったまま戻らない」と考えると、判定の向きを取り違えにくくなります。
本問の判断
問われているのは「剝離している」と判断できる所見なので、剝離した後に現れる変化を選びます。選択肢2の「コッヘルが手前に大きく下がってきた」はアールフェルド徴候そのもので、胎盤が剝がれて下降したことを示します。
ほかの選択肢は、いずれも剝離していると判断する根拠になりません。
- 選択肢1の「臍帯が腟内に引き込まれる」は、キュストネル徴候でいう未剝離の所見です。
- 選択肢3のように、出血からの経過時間で剝離を判定する基準はありません。
- 選択肢4の「臍高で軟らかく」は、シュレーダー徴候でいう剝離前の子宮の状態です。
実践での意味
剝離徴候の確認は、胎盤を安全に娩出させるための前提です。未剝離のまま臍帯を強く引くと、臍帯の断裂や子宮内反症を招くおそれがあります。1つの徴候だけに頼らず、複数の徴候で剝離を確認してから胎盤を娩出させます。代表的な方法がブラント-アンドリュース法で、一方の手で臍帯を軽く牽引し、もう一方の手で恥骨結合の上から子宮を頭側へ押し上げます。
胎盤娩出後は、次の点を観察します。
- 胎盤・卵膜に欠損がないか
- 子宮底の高さと硬さ(子宮収縮の状態)
- 出血量
胎盤娩出後の子宮は、硬く収縮しているのが正常です。この時期に子宮が軟らかく触れる場合は、子宮収縮不良を疑います。子宮底の輪状マッサージを行いながら出血量を確認し、弛緩出血を早期に発見します。一方、剝離前の子宮が軟らかく触れるのは正常な経過です。同じ「軟らかい」でも、時期によって意味が異なります。
分娩第3期(胎児娩出から胎盤娩出まで)の所要時間は、初産婦で15〜30分、経産婦で10〜20分が目安です。胎児娩出後30分を過ぎても胎盤が娩出されない場合は、癒着胎盤などを疑い、医師と連携します。
選択肢の確認
1.恥骨結合上の下腹部を圧迫して臍帯が腟内に引き込まれるのを確認した時点:これはキュストネル徴候の手技で、臍帯が腟内に引き込まれるのは、胎盤がまだ子宮壁に付着していることを示す所見です。胎盤が子宮と一体になっているため、子宮を押し上げると臍帯も一緒に引っ張られます。剝離していれば、圧迫しても臍帯は引き込まれません。「圧迫すると臍帯が動く」という点だけを覚えていると、判定の向きを取り違えやすい選択肢です。
2.腟口近くで臍帯を挟んだコッヘルが手前に大きく下がってきた時点:正答。アールフェルド徴候です。子宮壁から剝がれた胎盤が子宮下部から腟へ下降すると、それに伴って腟外に出ている臍帯が長くなります。そのため、腟口の位置で挟んでいた鉗子が手前に下がってきます。胎盤が付着したままでは臍帯はほとんど動かないので、鉗子の下降は胎盤が剝離して下降したことを示す所見と判断できます。
3.腟から暗赤色の血液の流出が確認されて5分が経過した時点:「出血から一定時間が経てば剝離している」という基準はなく、経過時間は剝離の判定根拠になりません。暗赤色の出血は子宮内からの出血と考えられ、剝離の始まりに伴ってみられることはあります。しかし、剝離が完了したことまでは示しません。また、出血の出方は剝離の様式によって異なります。シュルツェ様式(中央から剝がれ、胎児面から娩出)では、血液が胎盤後血腫として卵膜に包まれるため、外出血は胎盤娩出後に目立ちます。ダンカン様式(辺縁から剝がれ、母体面から娩出)では、娩出前から外出血がみられやすくなります。なお、子宮収縮が良好なのに鮮紅色の出血が続く場合は、頸管裂傷などの軟産道損傷を疑います。出血は量と性状を観察し、剝離の判定は臍帯や子宮の徴候で行います。
4.子宮底部が臍高で軟らかく触知できた時点:子宮底が臍高にあり、子宮体が幅広く軟らかく触れるのは、胎盤がまだ子宮壁に付着している剝離前の状態です。胎盤が剝離して子宮下部へ下降すると、子宮体は硬く細長くなり、子宮底は臍上へ上昇して右に傾きます(シュレーダー徴候)。子宮底の高さに注目するのは正しいものの、剝離を示すのは臍高ではなく臍上への上昇です。この時期の子宮が軟らかいのは正常な経過ですが、まだ剝離していないので、臍帯を引かずに剝離徴候が現れるのを観察します。なお、子宮底は胎児娩出直後の臍高付近から、剝離後に臍上へ上がり、胎盤娩出直後には臍下2〜3横指まで下がります。
覚えるポイント
- 胎盤剝離徴候は「剝がれて下がる」ことの現れです。臍帯は腟外へ下がってきて、子宮は硬く細長くなり、子宮底が上がります。
- 臍帯でみる主な徴候として、アールフェルド徴候は鉗子が下がれば剝離、キュストネル徴候は恥骨上の圧迫で臍帯が引き込まれれば未剝離、ストラスマン徴候は子宮底を叩いた振動が臍帯に伝われば未剝離、クライン徴候は腹圧をやめても臍帯が腟内へ戻らなければ剝離と判定します。
- シュレーダー徴候では、剝離前に臍高付近で幅広く軟らかかった子宮が、剝離後に硬く細長くなり、子宮底が臍上へ上昇して右に傾きます。胎盤娩出直後の子宮底は臍下2〜3横指です。
- 子宮が軟らかく触れることの意味は、時期で異なります。剝離前は正常な経過ですが、胎盤娩出後は子宮収縮不良のサインであり、弛緩出血に注意します。
- 出血の出方は剝離様式で異なります。シュルツェ様式は胎盤娩出後、ダンカン様式は娩出前から外出血がみられやすくなります。出血の有無や時間経過だけで剝離を判定しません。
- 未剝離での臍帯牽引は、臍帯断裂や子宮内反症の危険があります。複数の徴候で剝離を確認してから娩出させます。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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