第106回

106PM037|第106回 助産師国家試験 過去問

次の文を読み36~38の問いに答えよ。A女子高校から助産師に1年生(15、16歳)全員への健康教育と個別の健康相談の依頼があった。健康教育の目的は「自分の身体を知ること」である。A女子高校の1年生の入学時の身体測定値は全国平均と同等であった。A女子高校の養護教諭から助産師に、1年生は特に月経前に頭痛、腹痛、イライラや不安感を訴えて保健室に来る生徒が多いという情報提供があった。助産師が行う健康教育の内容で優先するのはどれか。

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正解4

正答

4.月経前症候群の説明

この問題のポイント

集団への健康教育で優先するテーマを、対象集団の実態から選ぶ問題です。判断の鍵は、養護教諭が伝えた「月経前に頭痛、腹痛、イライラや不安感を訴えて保健室に来る生徒が多い」という情報です。症状の出る時期(月経前)と内容(身体症状と精神症状)が月経前症候群(PMS)に一致します。また「身体測定値は全国平均と同等」という情報から、体格に関連する月経異常を優先する根拠はないと判断できます。

解説

問題文から読み取る手がかり

  • 対象は女子高校1年生(15、16歳)の全員で、集団への健康教育です。
  • 目的は「自分の身体を知ること」です。
  • 身体測定値は全国平均と同等です。やせや肥満など、体格に起因する月経異常を疑わせる情報はありません。
  • 養護教諭によると、月経前に頭痛、腹痛、イライラ、不安感を訴えて保健室に来る生徒が多く、学校生活に支障が出ています。

健康教育では、一般に大切とされる知識を網羅的に教えるのではなく、対象集団の実態と困りごとに合わせて優先順位をつけます。養護教諭は生徒の保健室利用を日常的に見ている立場にあり、その情報は集団のニーズを示す重要な根拠になります。

月経前症候群(PMS)とは

日本産科婦人科学会の定義では、PMSは「月経前3〜10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減退ないし消失するもの」です。

  • 精神症状:イライラ、怒りっぽさ、不安、抑うつ、情緒不安定、集中力の低下、眠気や不眠など
  • 身体症状:頭痛、下腹部痛や下腹部膨満感、腰痛、乳房の張りや痛み、むくみ、体重増加、便秘など

原因は完全には解明されていません。排卵後の黄体期に起こるエストロゲン・プロゲステロンの変動と、それに対するセロトニンなど脳内の神経伝達物質の反応が関与すると考えられています。精神症状が強く、日常生活に著しい支障をきたすものは月経前不快気分障害(PMDD)と呼ばれます。

生徒の訴えのうち、頭痛と腹痛は身体症状、イライラと不安感は精神症状にあたります。さらに「月経前」という時期も定義にそのまま当てはまります。

健康教育で伝える内容

「自分の身体を知る」という目的に沿って、次のような内容を伝えます。

  • 月経周期に伴うホルモンの変化によって、月経前に心身の不調が起こりうること。多くの女性にみられる現象で、自分だけではないこと。
  • 基礎体温や症状を記録し(症状日記)、不調が月経周期のどの時期に出るのかを自分で確かめる方法。
  • セルフケアの方法。規則正しい睡眠、適度な運動、バランスのよい食事、カフェインや塩分の取りすぎを控えることなどです。症状が出やすい時期を見越して予定を調整する工夫も役立ちます。
  • 症状が強く学校生活に支障がある場合は、婦人科や思春期外来に相談できること。低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬、漢方薬、SSRIなどが治療に用いられることがあります。

不調の周期性を自分で把握できると、「なぜ具合が悪いのか分からない」という不安が軽くなり、対処の見通しが立ちます。これは思春期の女性が自分の身体とうまく付き合う力、つまりセルフケア能力を育てることにつながります。

他のテーマとの比較

月経発来の機序(視床下部-下垂体-卵巣系)は全員に必要な基礎知識で、PMSを説明する土台として触れる価値があります。ただし優先する内容の中心には、生徒が実際に困っている症状への理解と対処を置くのが適切です。無月経は体格や訴えから示唆される情報がありません。月経困難症は症状の現れる時期が異なります。

選択肢の確認

1.無月経の種類:無月経には、満18歳になっても初経が起こらない原発性無月経と、それまであった月経が3か月以上停止する続発性無月経があります。思春期では、過度なダイエットや激しい運動による体重減少性無月経が問題になります。しかし本問では身体測定値が全国平均と同等で、やせを示す情報はありません。養護教諭から寄せられた訴えも、月経が止まることではなく月経前の不調です。集団教育の優先課題とはいえず、無月経が疑われる生徒には個別の健康相談で対応するのが適切です。

2.月経発来の機序:視床下部のGnRH、下垂体のFSH・LH、卵巣のエストロゲン・プロゲステロンによって子宮内膜が周期的に変化するしくみは、「自分の身体を知る」という目的に沿う基礎知識です。ただし初経の平均年齢は12歳前後であり、15、16歳の多くはすでに月経を経験しています。思春期の体の変化は小学校・中学校の保健学習でも学んでいます。この内容だけでは一般的な知識の伝達にとどまり、生徒が困っている症状への対処には直結しないため、優先度は選択肢4より下がります。月経周期のしくみは、PMSを理解する前提として説明の中に組み込むとよいでしょう。

3.月経困難症への対応:月経困難症は、月経期間中に月経に随伴して起こる病的症状(下腹部痛、腰痛、頭痛、悪心、イライラなど)であり、症状が出るのは月経中です。思春期に多いのは器質的疾患のない機能性(原発性)月経困難症です。主な原因は子宮内膜で産生されるプロスタグランジンによる子宮の過剰収縮とされ、NSAIDsなどで対応します。症状の内容は生徒の訴えと重なりますが、本問では「月経前に」訴えると明示されているため、時期が合いません。症状名だけで判断せず、月経周期のどの時期に症状が出るかで区別することが大切です。

4.月経前症候群の説明:正答。月経前に現れ、月経開始とともに軽快・消失する身体症状(頭痛、腹痛)と精神症状(イライラ、不安感)という特徴が、養護教諭の情報と時期・内容ともに一致します。多くの生徒に共通する困りごとであり、症状の記録、セルフケア、受診の目安を伝えることは「自分の身体を知る」という目的にも合うため、最も優先すべき内容です。

覚えるポイント

  • 月経前症候群(PMS):月経前3〜10日の間続く身体的・精神的症状で、月経発来とともに減退・消失します。黄体期に起こる症状です。
  • 月経困難症:月経期間中の随伴症状です。思春期は機能性(プロスタグランジンによる子宮の過剰収縮)が多く、器質性は子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫などが原因です。PMSとは症状の時期で鑑別します。
  • 精神症状が主体で、生活に著しい支障があるものは月経前不快気分障害(PMDD)です。
  • 無月経の分類:原発性は満18歳になっても初経がないもの、続発性は月経が3か月以上停止したものです。思春期はやせ・体重減少と過度な運動に注意します。
  • PMSのケア:症状日記や基礎体温で周期との関係を把握し、睡眠・運動・食生活を整えます。症状が強ければ受診につなげます。
  • 集団健康教育のテーマは、養護教諭などの関係者からの情報や実態から見えるニーズを優先して選びます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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