第105回
105PM019|第105回 助産師国家試験 過去問
高校1年生を対象に健康教育を行うこととした。健やか親子21(第2次)の指標を踏まえた内容で優先度が高いのはどれか。
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正解4
正答
4.性感染症の防止
この問題のポイント
健やか親子21(第2次)の基盤課題B「学童期・思春期から成人期に向けた保健対策」の指標のうち、高校生の年代に直結するものを選ぶ問題です。手がかりは「高校1年生」という対象と「指標を踏まえた」という条件です。健康水準の指標に「十代の性感染症罹患率」と「十代の人工妊娠中絶率」が置かれていることを知っていれば判断できます。あわせて、性行動が始まる時期に予防の知識を届ける意義も押さえておきましょう。
解説
健やか親子21(第2次)の枠組み
健やか親子21は、母子保健の主要な取り組みを関係者・関係機関が一体となって進める国民運動計画です。第2次は2015年度から10年間の計画として始まり、出題当時(2022年2月)も推進中でした。目指す姿は「すべての子どもが健やかに育つ社会」で、3つの基盤課題と2つの重点課題で構成されています。
- 基盤課題A:切れ目ない妊産婦・乳幼児への保健対策
- 基盤課題B:学童期・思春期から成人期に向けた保健対策
- 基盤課題C:子どもの健やかな成長を見守り育む地域づくり
- 重点課題①:育てにくさを感じる親に寄り添う支援
- 重点課題②:妊娠期からの児童虐待防止対策
各課題には「健康水準の指標」「健康行動の指標」「環境整備の指標」が設定され、目標値に照らして評価されます。
基盤課題Bの指標
高校1年生は基盤課題Bの対象です。健康水準の指標には、次のものが含まれます。
- 十代の自殺死亡率、十代の人工妊娠中絶率、十代の性感染症罹患率
- 児童・生徒における痩身傾向児の割合、肥満傾向児の割合
- 歯肉に炎症がある十代の割合
健康行動の指標には、十代の喫煙率・飲酒率や、朝食を欠食する子どもの割合があります。
つまり、食生活や体格、口腔の健康も思春期保健の視野に入っています。そのうえで、年齢を「十代」で区切り、性と生殖の健康を直接示す指標が複数置かれていることが、この課題の大きな特徴です。
高校1年生に性感染症の防止が優先される理由
- 性行動が始まる年代だからです。 高校生の年代では、性行動を始める人が出てきます。知識が不十分なまま性交を経験すると、コンドームを使わない、相手が複数になるといった行動につながり、性感染症と予期しない妊娠のリスクが高まります。十代の性感染症罹患率と人工妊娠中絶率はまさにこの年代を映す指標で、性行動が始まる前後に正確な知識を届けることが指標の改善に直結します。
- 将来の生殖機能に長く影響するからです。 最も多い性感染症である性器クラミジア感染症は、女性では自覚症状に乏しいまま進みます。子宮頸管炎から卵管炎・骨盤腹膜炎へ広がり、卵管性不妊や異所性妊娠の原因になります。妊娠中に感染が残っていると、産道感染によって新生児に結膜炎や肺炎を起こすこともあります。梅毒は2010年代前半から報告数の増加が続き、出題当時も若年女性を含めて増加が問題になっていました。
- 予防の方法がはっきりしているからです。 コンドームの正しい使用、パートナーとの同時検査・同時治療、症状がなくても検査を受けられる場所や相談窓口などは、伝えれば行動の変化につながりやすい内容です。
- 助産師の専門性が最も生きる領域だからです。 性と生殖に関する健康は助産師の中核的な領域です。学校から依頼を受けて行う思春期の性教育は、助産師が担う代表的な地域活動です。
一方、食育・う歯の予防・肥満の予防は、いずれも大切な健康教育です。ただし学童期から継続して取り組む生活習慣の課題であり、高校1年生に限って優先度を押し上げる根拠は性感染症ほど強くありません。
実践では、知識を伝えるだけでなく、次のような内容まで組み立てると効果的です。
- 自分の意思を伝える力(同意の大切さ、断る力)
- 困ったときに相談できる先
こうした内容は、十代の自殺死亡率を含む思春期保健全体にもつながります。
なお、健やか親子21(第2次)はその後最終評価が行われました。現在は、成育基本法に基づく成育医療等基本方針のもとで推進される国民運動として位置づけられています。
選択肢の確認
1.食育:朝食の欠食は基盤課題Bの健康行動の指標に含まれ、生涯の食習慣の土台をつくる点で食育には意義があります。ただし、食育は乳幼児期から学童期を通して家庭・学校・地域で継続的に進める取り組みです。高校1年生という対象で優先度を比べると、十代の性と生殖に関する指標のほうが直結します。思春期の女子では過度なダイエットによる「やせ」の予防と組み合わせて扱われることもあります。
2.う歯の予防:健やか親子21(第2次)では、むし歯は基盤課題Aの「むし歯のない3歳児の割合」として幼児期を中心に扱われています。十代の口腔の指標は「歯肉に炎症がある十代の割合」です。高校生の口腔保健では、う歯よりも歯肉炎・歯周病の予防が主な課題になります。したがって、この年代の指標を踏まえた内容としてはずれています。う歯予防が中心になるのは乳幼児期から学童期で、仕上げ磨きやフッ化物の利用と結びつけて問われます。
3.肥満の予防:肥満傾向児の割合は基盤課題Bの健康水準の指標に含まれ、思春期保健の一部ではあります。しかし肥満は学童期から続く食事・運動・睡眠の生活習慣の課題です。高校1年生で新たにリスクが急増し、取り返しのつかない結果につながる性感染症や予期しない妊娠と比べると、この時期に優先する理由は弱くなります。思春期、特に女子では肥満だけでなく痩身傾向(やせ)も指標になっている点と混同しないようにしましょう。
4.性感染症の防止:正答。「十代の性感染症罹患率」は基盤課題Bの健康水準の指標で、「十代の人工妊娠中絶率」とともに高校生年代の性と生殖の健康を直接示します。性行動が始まる時期の高校1年生に、コンドームの正しい使用、無症状でも感染しうること、検査・相談ができる場所を伝えることは、指標の改善と将来の不妊・異所性妊娠の予防に直結します。助産師の専門性を最も発揮できる健康教育の内容でもあります。
覚えるポイント
- 健やか親子21(第2次)の構成は、基盤課題A(妊産婦・乳幼児)、B(学童期・思春期〜成人期)、C(地域づくり)と、重点課題①(育てにくさを感じる親への支援)、②(妊娠期からの児童虐待防止)です。
- 基盤課題Bの健康水準の指標は「十代」の3つ(自殺死亡率・人工妊娠中絶率・性感染症罹患率)に加え、痩身傾向児・肥満傾向児の割合、歯肉に炎症がある十代の割合です。
- 口腔の指標は年代で異なります。むし歯は「むし歯のない3歳児の割合」(基盤課題A)、十代は「歯肉の炎症」です。
- 性器クラミジア感染症は最も多い性感染症です。女性は無症状が多く、卵管性不妊・異所性妊娠の原因になり、母子感染では新生児の結膜炎・肺炎を起こします。治療はパートナーと同時に行います。
- 思春期の健康教育は、性行動が始まる前に、予防(コンドーム)・避妊・検査・相談先を具体的に伝えることが柱です。
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