第105回

105PM020|第105回 助産師国家試験 過去問

Aさん(28歳)は無月経を主訴に産婦人科医院を受診し、妊娠の診断を受けた。助産師が次回の妊婦健康診査までに母子健康手帳の交付を受けるよう説明したところ、Aさんから公費の助成が受けられる妊婦健康診査について質問があった。助産師の説明で正しいのはどれか。

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正解3

正答

3.「血液検査の項目にはHIV抗体検査が含まれています」

この問題のポイント

母子保健法に基づいて市町村が公費で助成する妊婦健康診査の標準的な内容を問う問題です。判断の鍵は、国が示す「妊婦に対する健康診査についての望ましい基準」で、毎回行う基本項目と時期を決めて行う医学的検査を区別できるかどうかです。あわせて、受診間隔と妊娠初期の血液検査の項目を覚えているかが問われています。

解説

場面の整理

Aさんは妊娠と診断されたばかりで、まだ母子健康手帳を受け取っていません。

  • 妊娠した人は、市町村長に妊娠の届出を行います(母子保健法第15条)。
  • 市町村は、届出をした人に母子健康手帳を交付します(同法第16条)。
  • 多くの市町村では、手帳の交付と同時に妊婦健康診査の受診票(補助券)を配ります。これを医療機関に提出すると健診費用の助成を受けられます。

妊娠を確かめるための最初の受診は、助成の対象外となることが多いです。そのため、次回の健診までに手帳の交付を受けるよう勧めた助産師の説明は理にかなっています。

妊婦健康診査と公費助成のしくみ

正常な妊娠は疾病ではないため、妊婦健康診査は医療保険の給付対象になりません。そこで母子保健法第13条に基づき、市町村が健康診査を行い、その費用を助成しています。

平成27年(2015年)には、同条に基づいて厚生労働大臣が「妊婦に対する健康診査についての望ましい基準」を定め、受診回数と内容の標準を示しました。国は、おおむね14回分の健診費用を市町村への地方財政措置の対象としています。助成の上限額や運用は市町村ごとに異なり、上限を超えた分が自己負担になることもあります。

望ましい基準の主な内容は次のとおりです。

  • 受診間隔:妊娠初期〜23週は4週間に1回、24〜35週は2週間に1回、36週〜分娩は1週間に1回です。妊娠8週前後に初診した場合、合計14回程度になります。
  • 毎回行う基本的な項目:健康状態の把握(妊娠週数に応じた問診・診察)、検査計測、保健指導の3つです。検査計測は、子宮底長、腹囲、血圧、浮腫、尿化学検査(糖・蛋白)、体重(初回は身長も)です。
  • 必要に応じて時期を決めて行う医学的検査:血液検査、子宮頸がん検診(細胞診)、超音波検査、性器クラミジア検査、HTLV-1抗体検査、B群溶血性レンサ球菌(GBS)検査などです。

血液検査を行う時期と項目は次の3回です。

  • 妊娠初期に1回:血液型(ABO・Rh、不規則抗体)、血算、血糖、B型肝炎抗原、C型肝炎抗体、HIV抗体、梅毒血清反応、風疹ウイルス抗体
  • 妊娠24〜35週に1回:血算、血糖
  • 妊娠36週以降に1回:血算

HIV抗体検査を妊娠初期に行う意味

HIVは、胎内、分娩時、母乳を通じて母子感染します。妊娠早期に感染が分かれば、次の対策を組み合わせて母子感染率を大きく下げられます。

  • 妊娠中からの抗HIV薬の投与
  • 選択的帝王切開
  • 母乳を止めて人工栄養にする
  • 新生児への抗HIV薬の予防投与

本人が感染に気づいていないこともあるため、妊娠を機に検査を受ける意義は大きいといえます。検査は本人の同意を得て行います。

注意したいのは、スクリーニング検査には偽陽性があることです。妊婦集団は感染者の割合が低いため、陽性と出ても実際には感染していない例が相対的に多くなります(陽性的中率が低くなる)。確定検査の結果が出るまで「感染している」とは伝えず、不安に配慮して説明することが実践上とても大切です。

選択肢の確認

1.「血液検査を毎回行います」:望ましい基準で毎回行うのは、問診・診察、子宮底長・腹囲・血圧・浮腫・尿検査・体重の計測、保健指導です。血液検査は妊娠初期、24〜35週、36週以降にそれぞれ1回行うもので、採血を毎回するわけではありません。したがって誤りです。毎回行う尿検査(糖・蛋白)と取り違えないようにしましょう。

2.「保健指導の費用は自己負担です」:保健指導は、健康状態の把握・検査計測と並ぶ「毎回行う基本的な項目」に位置づけられ、健診の一部として公費助成の対象に含まれます。内容は、食事や生活のアドバイス、妊娠・出産・育児への不安や悩みへの対応、母子保健サービスの情報提供などです。したがって誤りです。助成上限を超えた分が自己負担になることはありますが、保健指導という項目が助成から外れているわけではありません。

3.「血液検査の項目にはHIV抗体検査が含まれています」:正答。妊娠初期に1回行う血液検査に、HIV抗体検査が含まれています。同じ採血で、B型肝炎抗原、C型肝炎抗体、梅毒血清反応、風疹ウイルス抗体なども調べます。早期に感染を把握できれば、抗HIV薬や分娩方法の選択などの母子感染予防策を講じられることが根拠です。

4.「妊娠初期は2週に1回の妊婦健康診査が助成の対象になります」:妊娠初期から23週までの標準的な受診間隔は4週間に1回です。2週間に1回は妊娠24〜35週の間隔なので、時期を取り違えています。したがって誤りです。妊娠高血圧症候群や早産などのリスクが高まる後半ほど間隔を短くする、と理解すると覚えやすくなります。

覚えるポイント

  • 妊婦健康診査は母子保健法第13条に基づいて市町村が実施・助成します。正常妊娠は医療保険の対象外で、国はおおむね14回を標準としています。
  • 受診間隔は「23週まで4週ごと、24〜35週は2週ごと、36週以降は毎週」です。
  • 毎回行うのは、健康状態の把握、検査計測(子宮底長・腹囲・血圧・浮腫・尿の糖と蛋白・体重)、保健指導です。血液検査は毎回ではありません。
  • 妊娠初期の血液検査は、血液型(ABO・Rh・不規則抗体)、血算、血糖、B型肝炎抗原、C型肝炎抗体、HIV抗体、梅毒、風疹抗体です。24〜35週は血算・血糖、36週以降は血算です。
  • HTLV-1抗体と性器クラミジアは妊娠30週頃までに1回、子宮頸がん検診は妊娠初期に1回、GBSは妊娠後期に1回です。
  • 妊娠の届出は母子保健法第15条、母子健康手帳の交付は第16条です。受診票は手帳の交付時に配られることが多いです。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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