第106回

106PM021|第106回 助産師国家試験 過去問

Aさん(28歳)は排卵時期が一定せず不妊治療を受けている。月経開始後16日、産婦人科医院を受診した際に経腟超音波検査で右卵巣に20 mmの卵胞が確認された。Aさんの排卵を誘導できるホルモンはどれか。

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正解5

正答

5.ヒト絨毛性ゴナドトロピン〈hCG〉

この問題のポイント

成熟した卵胞に排卵を起こす「引き金」は、下垂体から黄体形成ホルモン(LH)が大量に放出されるLHサージです。不妊治療では、LHと同じ受容体に作用するhCGを注射し、LHサージの代わりとして排卵を起こします。問題文の「卵胞径20 mm」から、卵胞はすでに排卵直前の大きさに育っていると読み取ることが鍵です。そのうえで、次に必要なのは卵胞を育てるホルモンではなく、排卵の引き金になるホルモンだと判断します。

解説

不妊治療で排卵に介入するときは、「卵胞を十分に育てる段階」と「育った卵胞を狙った時期に排卵させる段階」の2段階に分けて考えます。問題文の手がかりは次のとおりです。

  • 「排卵時期が一定せず不妊治療を受けている」:自然の排卵日を予測しにくい状態です。タイミング指導や人工授精の時期を合わせるには、排卵を人為的に起こすことに意味があります。
  • 「月経開始後16日」「右卵巣に20 mmの卵胞」:排卵直前の主席卵胞は、直径およそ20 mm前後まで育ちます。Aさんの卵胞はすでに排卵できる大きさに達しているため、この時点で必要なのは発育の促進ではなく排卵の引き金です。

排卵が起こるしくみ

卵胞期には、下垂体前葉から分泌されるFSHが卵胞を発育させます。卵胞の中では、LHの刺激を受けた莢膜細胞がアンドロゲンをつくり、FSHの刺激を受けた顆粒膜細胞がアロマターゼでそれをエストラジオール(E2)に変えます(二細胞説)。主席卵胞が成熟し、E2が高い濃度で一定期間続くと、視床下部・下垂体へのフィードバックが負から正に切り替わります。その結果、GnRHとLHが一気に大量に放出されます。これがLHサージです。

LHサージは次の3つを起こし、サージの開始からおよそ36時間前後で排卵に至ります。

  • 卵母細胞の減数分裂の再開(第一減数分裂の完了)
  • 卵胞壁の破裂
  • 顆粒膜細胞の黄体化

排卵後の卵胞は黄体となり、プロゲステロンを分泌して子宮内膜を分泌期に整えます。

hCGが「LHの代役」になる理由

hCGは、妊娠時に胎盤の絨毛(合胞体栄養膜細胞)から分泌される糖タンパクホルモンです。α鎖はLH・FSH・TSHと共通で、β鎖の構造がLHとよく似ています。そのためLHと同じ受容体(LH/hCG受容体)に結合し、LHと同様の作用を示します。さらにLHより半減期が長いため、1回の注射で作用が持続します。

臨床では、経腟超音波で主席卵胞がおおむね18〜20 mm以上になったことを確認してからhCGを注射し、LHサージの代わりとします。投与からおよそ36時間前後で排卵するため、性交のタイミングや人工授精の実施日をこれに合わせて決められます。体外受精では、排卵が起こる前に採卵できるよう、投与時刻から逆算して採卵時刻を決めます。

看護・助産の実践での留意点

  • hCGには黄体を刺激し続ける作用もあります。排卵誘発で多数の卵胞が育っているときに投与すると、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の危険が高まります。妊娠が成立すると、胎盤からのhCGでさらに悪化することがあります。腹部膨満感、腹痛、急な体重増加、尿量減少がないかを観察します。これらは腹水や血液濃縮、血栓症につながるため、症状があれば受診するよう説明します。
  • 注射したhCGはしばらく体内に残ります。投与後の早い時期に妊娠検査薬を使うと、妊娠していなくても陽性になることがあるため、判定の時期についても説明しておきます。

選択肢の確認

1.プロラクチン:下垂体前葉から分泌され、乳腺に作用して乳汁の産生を促すホルモンで、排卵を起こす作用はありません。むしろ過剰になると(高PRL血症)視床下部からのGnRHのパルス状分泌が抑えられ、LH・FSHが低下して排卵障害や無月経を招きます。授乳中に排卵が起こりにくい一因もこの作用です。分泌はドパミンで抑制されているため、抗精神病薬やスルピリドなどドパミンを遮断する薬剤で高値になることがあります。排卵障害の原因として血中濃度を測る項目であり、高値ならカベルゴリンなどのドパミン作動薬で下げて排卵の回復を図ります。

2.プロゲステロン:排卵後の黄体から分泌される黄体ホルモンで、子宮内膜を分泌期に変えて着床に備え、基礎体温を高温相にします。視床下部・下垂体には負のフィードバックとして働き、LHの分泌を抑えるため、投与しても排卵は起こりません。経口避妊薬の成分として排卵を抑える側に働くホルモンです。不妊治療では、排卵後や胚移植後の黄体機能を補う目的(黄体補充)で用いられます。「排卵の後に使うホルモン」と整理してください。

3.エストラジオール〈E2〉:発育中の卵胞の顆粒膜細胞から分泌されるエストロゲンで、血中濃度は卵胞の成熟度の指標になります。高値が続くと正のフィードバックでLHサージを起こすため、排卵には間接的に関わります。しかし卵胞を破裂させるのはLHの作用であり、E2を投与して排卵を起こすことはしません。不妊治療でのエストロゲン製剤は、凍結胚移植の周期などで子宮内膜を厚くする目的に使われます。「正のフィードバックの起点」と「排卵の直接の引き金」を混同しないことが大切です。

4.卵胞刺激ホルモン〈FSH〉:下垂体前葉から分泌され、卵胞の発育と顆粒膜細胞でのE2産生を促すホルモンです。FSH製剤やhMG製剤は卵胞を育てる目的で用いられ、「排卵誘発剤」と呼ばれます。ただし担うのは卵胞発育の段階であり、成熟した卵胞を破裂させる作用はありません。Aさんの卵胞はすでに約20 mmに達しているため、この時点で必要なのは発育の促進ではなく排卵の引き金です。

5.ヒト絨毛性ゴナドトロピン〈hCG〉:正答。β鎖の構造がLHとよく似ているため、LHと同じ受容体に結合し、LHサージと同じ作用(卵子の成熟、卵胞の破裂、黄体化)を起こします。半減期が長く、1回の注射で作用が持続します。主席卵胞が十分な大きさに達したことを超音波で確認して投与すると、およそ36時間前後で排卵が起こります。そのため、排卵時期が一定しない女性のタイミング指導や人工授精の時期決定に用いられます。

覚えるポイント

  • 役割分担は「FSHは卵胞を育てる」「LHサージは排卵させる」「黄体のプロゲステロンは着床に備える」です。
  • hCGはLHと同じ受容体に作用するLHの代役で、主席卵胞がおおむね18〜20 mmで投与し、およそ36時間前後で排卵します。
  • E2の持続的な高値は正のフィードバックでLHサージを起こします。プロゲステロンは負のフィードバックで排卵を抑えます。
  • 高プロラクチン血症はGnRHを抑えて排卵障害・無月経を起こします。原因に薬剤(抗精神病薬など)があり、治療はドパミン作動薬です。
  • 排卵誘発剤には卵胞を育てる薬(クロミフェン、FSH製剤・hMG製剤)と排卵させる薬(hCG)があり、段階を区別します。
  • hCG投与後は、OHSS(腹部膨満、体重増加、尿量減少)の観察と、妊娠検査の偽陽性への注意が必要です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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