第106回
106AM054|第106回 助産師国家試験 過去問
次の文を読み53、54の問いに答えよ。Aさん(38歳、初産婦)は他院で体外受精治療にて妊娠が成立し、本日X年11月5日に受診した。治療経過は、最終月経X年9月12日から体外受精治療のために排卵誘発薬の投与を開始しX年10月1日に採卵。体外受精で3個の胚を得て、10月6日に新鮮胚を1個移植した。Aさんの妊娠経過は順調である。超音波検査写真(別冊No. 3)を別に示す。この時期の児の発育を評価するための測定項目で正しいのはどれか。

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正解1
正答
1.頭殿長
この問題のポイント
体外受精による妊娠では、採卵日を妊娠2週0日として数えます。そのため、受診日のAさんは妊娠7週0日です。この時期の児は1cm前後の胎芽で、写真にも頭蓋骨・腹部・大腿骨を別々に測れる構造は写っていません。妊娠初期の発育は頭殿長(CRL)で評価します。児頭大横径・腹囲・大腿骨長と、それらから算出する推定体重は、妊娠12週ごろ以降や中期以降に使う指標です。この時期による使い分けが問われています。
解説
本日の妊娠週数
まず「この時期」が妊娠何週なのかを正しく決めることから始めます。生殖補助医療による妊娠では、採卵・受精・胚移植の日が分かっています。そのため、最終月経ではなくこれらの日を基準にします。
- 採卵日は、体外受精では受精を行う日でもあります。自然周期の排卵日に相当するため、妊娠2週0日とします。
- 胚移植日は、2週0日に胚の培養日数を加えます。受精後3日目の初期胚なら2週3日、5日目の胚盤胞なら2週5日です。
- 採卵日の10月1日(2週0日)から11月5日までは35日、つまり5週0日です。したがって本日は妊娠7週0日です。移植日の10月6日から数えても同じ結果になります。移植日は採卵の5日後なので2週5日にあたり、そこから30日(4週2日)後で7週0日です。
- 最終月経の9月12日から単純に数えると7週5日になります。排卵誘発を行ったこの周期では、採卵が月経開始から19日後でした。自然周期で排卵を想定する14日後より5日遅いため、最終月経を基準にすると週数を多く見積もってしまいます。
写真の読み取りと頭殿長
写真は扇形の超音波画像です。中央に、液体が黒く(無エコーに)写る胎嚢があります。その中に、白〜灰色の胎芽が、丸みを帯びて弯曲した像として1つ見えます。一方、頭蓋骨のリング状の輪郭、胃胞を含む腹部の横断面、線状に明るく写る大腿骨といった構造は描出されていません。写真からも、選択肢2〜5の計測に必要な部位をまだ見分けられない時期だと確かめられます。
頭殿長(crown-rump length:CRL)は、胎芽・胎児の正中矢状断面で、頭部の先端から殿部の先端までの直線距離を測るものです。四肢と卵黄嚢は含めず、体幹を強く曲げたり反らしたりしていない状態で測ります。
- 妊娠初期は発育の個人差が小さいため、CRLと妊娠週数がよく一致します。
- 特に妊娠8〜11週ごろのCRLは週数推定の精度が高く、自然妊娠では最終月経から求めた分娩予定日を確認・修正する根拠になります。
- 妊娠12週を過ぎると、体幹の屈曲・伸展の影響で測定値がぶれやすくなり、個人差も広がります。そのため、指標は児頭大横径(BPD)へ移ります。
妊娠7週の胎芽は1cm前後で、頭部と体幹を別々に測れる大きさではありません。それでも、全長を1断面にとらえればCRLは計測できます。
体外受精による妊娠では、週数が採卵日から確定しています。そのためCRLは、予定日の修正よりも、その週数にふさわしい大きさに育っているかを評価するために使います。設問の「児の発育を評価するため」はこの意味です。胎児心拍の確認とあわせて、CRLの伸びを経時的にみていきます。妊娠7週0日で使える発育の指標はCRLだけなので、正答は選択肢1です。
時期による計測指標の使い分け
- 妊娠5週ごろ:経腟超音波で胎嚢を確認します。胎嚢の大きさは個人差が大きいため、週数の推定にはCRLのほうが適しています。
- 妊娠6週ごろ:胎芽と胎児心拍が見えてきます。
- 妊娠初期(胎芽が見えてから11週ごろまで):CRLで発育と週数を評価します。
- 妊娠12週ごろ以降:頭蓋骨の輪郭がはっきりしてきます。BPDで週数の推定や発育の評価を行います。
- 妊娠中期以降:BPD、腹囲(AC)、大腿骨長(FL)を測り、推定胎児体重(EFW)を算出します。わが国では日本超音波医学会の式 EFW(g)=1.07×BPD³+0.30×AC²×FL(各計測値はcm)が標準です。その推移を基準曲線と比べて、胎児発育不全(FGR)や過剰発育を見つけます。
助産師は、超音波検査の報告にある計測値を妊娠週数と照らし合わせて読み取ります。そのうえで、予定日の決まり方や児の育ちについて妊婦の理解を支えます。体外受精で妊娠した女性は、妊娠が続くかどうか不安を抱えていることも多いものです。医師の説明を補い、心拍やCRLの所見を分かりやすく伝えることも大切な支援です。
選択肢の確認
1.頭殿長:正答。頭部の先端から殿部の先端までの直線距離で、妊娠7週の胎芽でも全長を1断面にとらえれば計測できます。妊娠初期は発育の個人差が小さいため、週数とよく一致します。体外受精のように週数が確定している妊娠では、週数相当に育っているかを評価する指標になります。
2.児頭大横径:頭部横断面で、左右の頭頂骨間の最大径を測る指標です。計測するのは、正中線エコーが中央に描出され、透明中隔腔と四丘体槽が見える断面です。頭蓋骨の輪郭が描出できる妊娠12週ごろ以降に、CRLに代わって週数の推定や発育の評価に使います。妊娠7週は頭蓋骨の骨化が始まる前で、計測できる断面がありません。
3.胎児の腹囲:胃胞と肝内の臍静脈が描出される腹部横断面で、腹部の周囲長を測る指標です。肝臓の大きさや皮下脂肪を反映して栄養状態をよく表すため、中期以降のFGRの評価で特に重視されます。妊娠7週の胎芽では胃胞などの目印を描出できず、計測できません。
4.胎児推定体重:BPD、腹囲、大腿骨長の計測値から日本超音波医学会の式で算出する値です。中期以降の発育評価や分娩方針の検討に用います。わが国では、EFWが基準値の−1.5SD以下であることをFGRの目安とします。材料となる3項目が妊娠7週では測れないため、この時期には算出できません。
5.胎児大腿骨長:大腿骨の骨化した骨幹部の長さで、BPDや腹囲とともに推定体重の計算に使われます。著しく短い場合は、骨系統疾患を疑う手がかりにもなります。妊娠7週の四肢はまだ肢芽の段階で、大腿骨は骨化しておらず、計測する対象がありません。
覚えるポイント
- 体外受精妊娠の週数は採卵日=妊娠2週0日を基準にし、胚移植日は培養日数を加えます(3日目の初期胚なら2週3日、胚盤胞なら2週5日)。予定日もこの基準で決めます。
- 妊娠初期の発育評価と週数確認は頭殿長(CRL)です。正中矢状断で頭部先端から殿部先端までの直線距離を測り、四肢と卵黄嚢は含めません。週数推定の精度は妊娠8〜11週ごろが最も高いです。
- 妊娠12週ごろ以降は児頭大横径(BPD)、中期以降はBPD・腹囲(AC)・大腿骨長(FL)と推定胎児体重(EFW)で発育を評価します。
- EFW(g)=1.07×BPD³+0.30×AC²×FL(各cm、日本超音波医学会)です。ACは栄養状態を反映し、FGRで小さくなりやすい指標です。わが国ではEFWが−1.5SD以下をFGRの目安とします。
- 経腟超音波では、胎嚢は妊娠5週ごろ、胎芽と胎児心拍は妊娠6週ごろから確認できます。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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