第106回

106PM038|第106回 助産師国家試験 過去問

次の文を読み36~38の問いに答えよ。A女子高校から助産師に1年生(15、16歳)全員への健康教育と個別の健康相談の依頼があった。健康教育の目的は「自分の身体を知ること」である。A女子高校の1年生の入学時の身体測定値は全国平均と同等であった。健康教育の終了後に1人の生徒から、「私はまだ月経が来ていません。どうしたらいいでしょうか」と相談があった。学校生活の様子を聞くと、「高校に入ってから部活で陸上競技を始めて、週に3、4日練習しています。特に、身体の調子は悪くありません」と話した。生徒の身長は150 cm、体重44 kgで乳房の発育は他の生徒と変わりなく見える。このときの助産師の助言で適切なのはどれか。

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正解4

正答

4.「婦人科の診察を受けましょう」

この問題のポイント

15、16歳で初経がない生徒に、助産師がどう助言するかを問う問題です。判断の鍵は次の4点です。

  • 15歳以上で初経がないこと
  • 乳房の発育は他の生徒と同じで、二次性徴が進んでいること
  • 陸上競技は高校入学後に始めたこと
  • BMIが約19.6で、やせではないこと

二次性徴があるのに初経がない場合は原因を調べる段階なので、医師の診察につなぐことが求められます。

解説

初経の時期と用語

日本人女性の初経は平均12歳前後で、多くは10〜14歳の間に来ます。日本産科婦人科学会は次のように定義しています。

  • 早発月経:10歳未満で初経が来たもの
  • 遅発月経:15歳以上18歳未満で初経が来たもの
  • 原発性無月経:満18歳になっても初経が来ないもの

遅発月経は、初経が来た後に振り返って使う用語です。15歳を過ぎて初経がない時点では、遅発月経で終わるのか原発性無月経になるのかは分かりません。そのため臨床では、18歳を待たずに、15歳を過ぎて初経がなければ原因を調べ始める考え方がとられています。

問題文の手がかりの整理

  • 年齢は15、16歳で、初経はまだ来ていません。
  • 乳房の発育は他の生徒と変わりません。乳房は主にエストロゲンの作用で発育するので、卵巣からエストロゲンが分泌されていると考えられます。
  • 陸上競技を始めたのは高校入学後で、練習は週3、4日です。初経がないのは運動を始める前からです。
  • BMIは 44 ÷(1.5 × 1.5)= 約19.6 です。小柄ですが、成人のやせの目安である18.5を上回っています。
  • 体調不良の訴えはありません。

二次性徴があるのに初経がない場合に考えること

エストロゲンが分泌されているのに出血がない場合、「子宮や腟の形に異常がある」「血液の出口がふさがっている」可能性をまず考えます。主なものは次のとおりです。

  • 処女膜閉鎖症・腟閉鎖:子宮内膜は周期的にはがれているのに、血液が外に出られない状態(潜伏月経)です。周期的な下腹部痛が出ることがあり、放置すると腟や子宮に血液がたまります。
  • MRKH症候群(ロキタンスキー症候群):子宮が生まれつきないか痕跡程度で、腟もないか短い状態です。卵巣は正常なので乳房は発育し、染色体は46,XXです。
  • アンドロゲン不応症:染色体は46,XYで精巣がありますが、体がアンドロゲンに反応しません。アンドロゲンから変換されたエストロゲンで乳房は発育しますが、子宮はなく、陰毛・腋毛は少なめです。性腺が腫瘍化するおそれがあるため、専門的な管理が必要です。
  • 体質的な遅れ:検査で異常がなく、自然に初経が来ることもあります。

反対に乳房の発育がない場合は、ターナー症候群などの性腺形成不全(多くは卵巣機能が低下し乳房が発育しません)や、視床下部・下垂体の障害を考えます。どれに当たるかは問診だけでは判断できません。医師による外性器の診察、超音波検査、ホルモン検査、必要に応じて染色体検査で確かめます。

助産師としての関わり

原因の診断と検査は医師の役割です。助産師は相談を受け止め、受診をすすめる理由を不安をあおらないように説明します。性交経験のない思春期の女性では、腹部からの超音波検査など負担の少ない方法で診察することが多いと伝えると、受診しやすくなります。思春期外来の紹介や、保護者・養護教諭との連携も大切です。早く原因が分かれば、将来の妊娠・出産への備え、骨の健康、心理的な支援にもつながります。「自分の身体を知る」という健康教育の目的を、個別の相談で具体的に実践する場面だといえます。

選択肢の確認

1.「運動を控えましょう」:激しい運動でエネルギーが不足すると、視床下部からのGnRH分泌が抑えられて無月経になることがあります。これは女性アスリートの三主徴の一つです。しかしこの生徒は、初経がないのは陸上競技を始める前からで、練習も週3、4日と極端ではありません。乳房の発育からエストロゲンの分泌もうかがえるため、運動を原因とする根拠がありません。原因を調べないまま運動を制限しても解決にならず、部活動を楽しむ生活の質も損ないます。練習量が多く体重減少や疲労骨折があり、診察で視床下部性の無月経と分かった場合には、運動量の調整が助言の一部になります。

2.「食事量を増やしましょう」:BMIは約19.6でやせの目安を上回り、体重減少や食事制限をうかがわせる情報も体調不良の訴えもありません。栄養不足を原因と考える手がかりは問題文にありません。急な体重減少やBMIの低下、偏った食事があり、利用可能エネルギー不足や体重減少性無月経が疑われる場合には、食事量を増やす助言が意味をもちます。

3.「もう少し様子を見ましょう」:15歳以上で初経がない状態は、原因を調べ始める段階です。18歳まで待つと、流出路の閉鎖で腟や子宮に血液がたまったり、アンドロゲン不応症の性腺腫瘍への対応が遅れたりするおそれがあります。経過観察が妥当なのは、15歳未満で乳房の発育が始まっているなど、正常な発達の範囲と判断できる場合です。

4.「婦人科の診察を受けましょう」:正答。15歳以上で初経がなく、乳房の発育は正常という組み合わせは、子宮・腟の形の異常、流出路の閉鎖、アンドロゲン不応症などを含めて調べる必要がある状態です。原因を確かめるには診察・超音波検査・ホルモン検査などが必要なので、医師の診察につなぐことが助産師の適切な対応です。

覚えるポイント

  • 初経の平均は12歳前後です。早発月経は10歳未満、遅発月経は15歳以上18歳未満で初経が来たもの、原発性無月経は満18歳になっても初経がないものです。
  • 15歳を過ぎて初経がなければ、18歳を待たずに婦人科(思春期外来)で調べてもらうようにします。
  • 乳房の発育があって初経がない場合は、処女膜閉鎖・腟閉鎖、MRKH症候群、アンドロゲン不応症を考えます。乳房の発育がない場合は、ターナー症候群などの性腺形成不全や、視床下部・下垂体の障害を考えます。
  • 女性アスリートの三主徴は、利用可能エネルギー不足・視床下部性無月経・骨粗鬆症です。運動や栄養による無月経かどうかは、いつから無月経か、練習量、体重変化、BMIで見極めます。
  • BMI=体重(kg)÷身長(m)²。150 cm・44 kgなら約19.6です。
  • 原因の診断は医師の役割です。助産師は本人の不安に配慮しながら、受診の必要性を説明して医療につなぎます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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