第106回

106PM036|第106回 助産師国家試験 過去問

次の文を読み36~38の問いに答えよ。A女子高校から助産師に1年生(15、16歳)全員への健康教育と個別の健康相談の依頼があった。健康教育の目的は「自分の身体を知ること」である。A女子高校の1年生の入学時の身体測定値は全国平均と同等であった。今回の健康教育における対象者の身体的特徴として考えられるのはどれか。

解答・解説を見る

正解3

正答

3.無排卵性の月経周期の頻度が性成熟期に比べて高い。

この問題のポイント

15、16歳の平均的な発育をしている女子の身体的特徴を問う問題です。「全国平均と同等」という記述から、標準的な経過で思春期を迎え、多くはすでに初経を経ている集団と読み取ります。そのうえで、視床下部-下垂体-卵巣系の成熟の順序(排卵のしくみは最後に完成すること)と、身長の発育速度の性差を結びつけて判断します。

解説

問題文の手がかり

対象は女子高校1年生(15、16歳)で、入学時の身体測定値は全国平均と同等です。特別な早熟や発育の遅れがない、標準的な集団として考えます。日本の女子の平均初経年齢はおおむね12歳ころなので、多くの生徒は初経から数年しか経っていない時期にいます。

思春期と第二次性徴

日本産科婦人科学会は思春期を「第二次性徴の出現に始まり、初経を経て第二次性徴が完成し、月経周期がほぼ順調になるまでの期間」と定義しています。年齢ではおおむね8〜9歳ころから17〜18歳ころまでです。女子の第二次性徴は、一般に乳房発育→陰毛発生→身長の急伸→初経の順で進みます。初経は第二次性徴の終わりではなく、その後も月経周期の確立に向けた成熟が続きます。15、16歳は、その「初経後から周期確立まで」の段階にあたります。

視床下部-下垂体-卵巣系の成熟と排卵

思春期前は、GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)の分泌が抑えられています。思春期に入るとGnRHのパルス状分泌が高まり(はじめは睡眠中が中心)、FSHとLHの分泌が増えます。FSHで卵胞が発育してエストロゲンが分泌され、乳房発育や子宮内膜の増殖が起こり、やがて初経を迎えます。

排卵には、発育した卵胞から出る高濃度のエストロゲンが下垂体に正のフィードバックとしてはたらき、LHサージを起こすことが必要です。エストロゲンが分泌を抑える負のフィードバックは早くから機能しますが、正のフィードバックが安定して起こるしくみは最後に完成します。このため初経後しばらくは、卵胞が育っても排卵に至らない周期、つまり無排卵性周期が多くなります。周期も不規則になりがちです。排卵性周期の割合は年数とともに増え、思春期の終わりには性成熟期と同じように排卵を伴う規則的な周期になっていきます。

無排卵の周期では黄体ができず、プロゲステロンが分泌されません。そのため基礎体温は一相性になります。また、エストロゲンだけが作用し続けた内膜が不規則にはがれるため、長引く出血や多量の出血(思春期の機能性出血)を起こすことがあります。反対に、原発性(機能性)月経困難症は、排卵性周期が確立してプロスタグランジンの産生が増える時期から目立ってきます。15、16歳はこの両方が起こりうる年代です。

身長の発育速度の性差

身長の年間の伸び(発育速度)が最大になる時期は、女子が男子よりおよそ2年早く訪れます。女子はおおむね10〜12歳ころ、男子は12〜14歳ころです。女子はこのピークの後に初経を迎え、初経後の伸びはわずかになります。15、16歳の女子は最終身長に近づいて伸びが鈍っている一方、同年の男子はまだ伸びが続いています。

実践とのつながり

健康教育の目的は「自分の身体を知ること」です。そこで、次のような内容を伝えることが、この知識の活かし方になります。

  • 初経後数年は排卵がない周期や不規則な周期がよくあり、成熟の途中の生理的な現象であること。
  • 月経記録や基礎体温をつけると自分の周期を把握できること。
  • 3か月以上月経がない、出血が長く続く、量が極端に多い、月経痛で日常生活に支障がある、といった場合は受診や相談につなげること。

個別の健康相談でも、この「正常の幅」と「受診すべき目安」を区別して伝える姿勢が求められます。

選択肢の確認

1.身長の発育速度は同年の男子を上回っている。:女子の発育速度のピークは男子よりおよそ2年早く、10〜12歳ころに訪れます。15、16歳では女子の伸びは鈍っており、まだ伸びている同年の男子のほうが発育速度は大きくなります。女子が男子を上回るのは、女子が先にピークを迎える10〜12歳ころのことです。この時期の「女子のほうが背が高い」現象と取り違えないようにします。

2.卵胞刺激ホルモン〈FSH〉は上昇を続けている。:FSHが大きく上昇するのは思春期の前半で、初経を経た15、16歳ではおおむね性成熟期に近い水準に達しています。したがって「上昇を続けている」段階ではありません。この年代の課題は分泌量の増加ではなく、周期的な調節(正のフィードバックによる排卵)の確立です。なお、FSHが持続的に上昇するのは、閉経期など卵巣機能が低下して負のフィードバックが弱まったときです。

3.無排卵性の月経周期の頻度が性成熟期に比べて高い。:正答。LHサージを起こすエストロゲンの正のフィードバックは、視床下部-下垂体-卵巣系のなかで最後に成熟します。そのため初経後数年は無排卵性周期が多く、性成熟期より頻度が高くなります。周期の不規則さや基礎体温の一相性も、この未熟さの表れです。

4.黄体形成ホルモン〈LH〉は初経発来前と比べ低値である。:思春期にはGnRHのパルス状分泌が高まり、LHは思春期前の低い水準から大きく上昇します。そのため初経後のLHは、初経発来前より高値です。思春期前の女子ではFSHがLHより優位ですが、思春期の進行とともにLHの上昇が目立つようになります。LHが低いまま初経を迎えるという方向は、生理の流れと逆です。

覚えるポイント

  • 初経後数年は無排卵性周期が多く、周期も不規則になりやすい。排卵に必要なエストロゲンの正のフィードバック(LHサージ)は最後に完成する。
  • 女子の第二次性徴は、乳房発育→陰毛発生→身長急伸→初経の順に進む。思春期は周期がほぼ順調になるまでを含み、おおむね8〜9歳から17〜18歳ころまで。
  • 身長の発育速度のピークは女子が男子よりおよそ2年早い(女子10〜12歳ころ、男子12〜14歳ころ)。初経後の身長の伸びはわずか。
  • 思春期にFSH・LHは上昇し、初経後は思春期前より高い。FSHが上昇し続けるのは卵巣機能が低下する閉経期の特徴。
  • 初経の時期の用語:10歳未満で初経は早発月経、15歳以上で初経は遅発月経、満18歳で初経がないものは原発性無月経。続発性無月経は3か月以上の月経停止。
  • 無排卵では黄体ができずプロゲステロンがないため、基礎体温は一相性になり、機能性出血の原因にもなる。原発性月経困難症は排卵性周期の確立とともに増える。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する(medixmatch2025@gmail.com)までお知らせください。確認して修正します。

解いた記録を残して、苦手な問題をもう一度。

学習アプリなら、この問題の解答記録・メモ・暗記カード化を使えます。