第105回

105AM041|第105回 助産師国家試験 過去問

次の文を読み41〜43の問いに答えよ。A病院は、出産前準備教育の集団指導として「お産の教室」を対面で行っていたが、オンライン形式で実施して欲しいという要望が多くなり、今年から導入することにした。「お産の教室」の企画書を表に示す。【表】 実施日時|2022年X月X日(土)14:00〜15:00 対象者|妊娠30週〜34週の初産婦と、出産立ち会いを希望している/パートナーのカップル(10組) 目標|1.分娩開始徴候および分娩経過が理解できる。/2.産痛緩和の方法を理解し、実施できる。/3.カップルで主体的に分娩に臨むことができる。 内容|1.自己紹介/2.分娩開始徴候および分娩経過の説明/3.産痛緩和法の機序の説明と圧迫法の演習/4.質疑応答 評価方法|1.参加者の言動を観察する。/2.終了後にアンケートを実施する。 【表ここまで】 パートナーの準備性を把握するために最も優先される情報はどれか。

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正解3

正答

3.出産立ち会いの動機

この問題のポイント

集団指導の企画で、学習者の準備性(レディネス)を把握するために最も優先して確かめる情報を問う問題です。手がかりは、対象者が「出産立ち会いを希望しているパートナー」であることと、目標3が「カップルで主体的に分娩に臨むことができる」であることです。準備性の中心は、学ぶ必要をどう感じているかという動機・関心です。立ち会いを希望する理由は、パートナーが出産と自分の役割をどう捉えているかを最も直接に表します。

解説

準備性(レディネス)とは

準備性(レディネス)とは、学習者が新しいことを学び、それを行動に移せるだけの心身の準備が整っている状態をいいます。身体の状態、心理面(関心・動機・不安)、これまでの経験、すでにもっている知識といった側面から捉えます。なかでも学習がうまくいくかを大きく左右するのが、「なぜそれを学ぶのか」という動機や関心です。ノールズの成人学習論(アンドラゴジー)でも、成人は社会的役割や生活上の課題に対応する必要を感じたときに学ぶ準備が整うとされます。親になることや出産に立ち会うことは学ぶ良い機会です。ただし、その役割の受け止め方は人によって大きく違います。

企画書から読み取れること

企画書の表から、次のことが分かります。

  • 対象者は、妊娠30〜34週の初産婦と、立ち会いを希望するパートナーのカップル10組です。初めての出産を控え、正期産(37週0日〜41週6日)に入る前に、知識と対処法を身につける時期にあたります。
  • 目標は3つです。目標1は知識(分娩開始徴候と分娩経過の理解:認知領域)、目標2は知識と技能(産痛緩和の方法を理解し実施する:認知領域と精神運動領域)、目標3は態度(カップルで主体的に分娩に臨む:情意領域)です。教育目標の認知・精神運動・情意の3領域すべてにまたがっています。
  • 内容3に圧迫法の演習があり、パートナーは産痛緩和の担い手として実際に手を動かすことを期待されています。圧迫法が効くしくみはゲートコントロール説で説明されます。圧迫で触圧覚を伝える太い神経線維が刺激されると、脊髄後角で痛みの伝達が抑えられるという考え方です。
  • 実施は土曜日の14時から15時までの1時間で、今年からオンライン形式を取り入れています。評価は、参加者の言動の観察と終了後のアンケートで行います。

目標3は「主体的に」という態度を含む情意領域の目標で、知識や技術を伝えるだけでは達成できません。1時間という限られた時間で10組に対応するためにも、パートナーがどんな思いで立ち会いを望んでいるかを事前に把握し、指導の重点を決めておく必要があります。

動機によって支援の重点が変わる

立ち会い出産は、陣痛中の女性に安心感を与えます。また、カップルが出産体験を共有し、親になる準備を進める機会にもなります。ただし、その意味合いはパートナーが何を目的に立ち会うかによって変わります。

  • 「陣痛のあいだ支えたい」「2人で誕生を迎えたい」という自発的な動機の場合は、具体的な支え方を中心に伝え、演習で自信をつけてもらいます。支え方には、腰部・仙骨部の圧迫やマッサージ、呼吸法を一緒に行うこと、励ましの声かけ、水分補給の介助などがあります。
  • 「妊婦に頼まれたから」「周りがそうしているから」という受け身の動機の場合は、立ち会いの意義と、陣痛中の女性が何を体験し何を求めているかを伝えます。そのうえで、カップルで互いの期待を話し合うよう促します。意義を知ることで、主体的な関わりに変わることが期待できます。
  • 「誕生の瞬間を見たい」という関心が中心の場合は、分娩の大半は長い陣痛への対処であり、パートナーにはそれを支える役割があることを理解してもらいます。

動機を尋ねると、「痛がる姿や出血を見るのが不安」といった思いが語られることもあります。こうした戸惑いも受け止め、どの場面で付き添うか、どんな役割を担うかをカップルで話し合って決めておけるよう支援します。妊婦がパートナーに何を期待しているかも確かめ、2人の思いのずれを埋めることが目標3の達成につながります。動機は、申込み時の事前アンケートや、内容1の自己紹介で「立ち会いを希望した理由」を話してもらうことで把握できます。オンライン形式では、申込みフォームに質問項目を加えておけば事前に把握でき、教室の内容を調整できます。

健康状態、就労状況、育児休業の予定も、パートナーに関する大切な情報です。ただし、健康状態は参加できるかという身体的な条件です。就労状況と育休の予定は、立ち会いの調整や産後の生活設計に関わる背景の情報です。いずれも、出産に臨む構えや学ぶ意欲そのものは示しません。準備性のなかでも、この教室の目標に最も直結する心理面(動機)を見極めることが、この問題の要点です。

選択肢の確認

1.健康状態:パートナーの体調は、立ち会いや圧迫法の演習に体の面で参加できるかという条件に関わる情報で、準備性の身体面に含まれます。しかし対象は立ち会いを希望している成人のパートナーです。特別な病気や障害がなければ指導の方向を決める情報にはなりにくく、出産への構えも分かりません。腰痛などで長時間の付き添いや圧迫が負担になる場合や、感染対策として立ち会い当日の体調を確かめる場面では重要になります。それでも、準備性を把握するうえで最優先される情報ではありません。

2.就労状況:仕事の状況は、立ち会いや家族の支援体制を調整するための情報です。陣痛が始まったときに駆けつけられるか、連絡方法をどうするか、産後にどのくらい家にいられるかなどに関わります。働くパートナーが参加しやすいよう日時を土曜日の午後にするといった配慮は、企画の段階で行うものです。仕事の状況からは、パートナーが出産や自分の役割をどう捉えているかは分かりません。そのため、準備性を把握する情報としての優先度は高くありません。

3.出産立ち会いの動機:正答。立ち会いを望む理由には、パートナーの出産への関心、自分の役割の受け止め方、学ぶ意欲が表れます。主体的に支えたいのか、頼まれて受け身で参加するのか、誕生の瞬間を見ることが中心なのかで、伝える内容、演習の重点、声のかけ方が変わります。目標3の「カップルで主体的に分娩に臨むことができる」に直結する情報であり、準備性の把握で最も優先されます。

4.育児休業の取得予定の有無:育休の予定は、出産後にパートナーが育児や家事をどれだけ担えるか、母親の産後の休養をどう確保するかを考えるための情報です。産後の生活設計や育児期の保健指導では重要になります。一方、この教室の目標は分娩開始徴候・分娩経過の理解、産痛緩和、カップルで分娩に臨むことで、焦点は分娩期にあります。そのため、立ち会いに向けた準備性を把握する情報としては優先度が低くなります。なお、出題当時(2022年2月)は、2021年の育児・介護休業法改正で設けられた出生時育児休業(産後パパ育休)はまだ始まっていませんでした。現在は、2022年10月に始まったこの制度により、子の出生後8週間以内に最大4週間(2回まで分割可)の休業を取得できます。

覚えるポイント

  • 準備性(レディネス)は、学習を受け入れ行動に移せる心身の準備状態です。身体・心理(関心・動機・不安)・経験・知識の側面から捉え、中心は「なぜ学ぶのか」という動機・関心です。
  • 健康状態は参加するための身体的な条件、就労状況や育休の予定は立ち会いの調整や産後の生活設計の背景となる情報です。学ぶ構えを直接示す動機とは区別して優先度を考えます。
  • 集団指導の企画では、対象の準備性の把握、目標、内容・方法、評価を一貫させます。目標は知識(認知領域)、技能(精神運動領域)、態度(情意領域)の3領域を意識して立て、領域に合った評価方法を対応させます。この問題の目標2のように、1つの目標が複数の領域にまたがることもあります。
  • 立ち会いを希望するパートナーには、立ち会いたい理由と、妊婦がパートナーに期待することを確かめ、2人の思いをすり合わせます。受け身の動機なら、立ち会いの意義と具体的な支え方を伝えます。
  • 圧迫法・マッサージが効くしくみはゲートコントロール説です。分娩第1期の痛みはT10〜L1、第2期の会陰部の痛みは陰部神経(S2〜S4)を通って伝わります。
  • 分娩開始は、陣痛周期が10分以内、または陣痛が1時間に6回以上になった時点です(日本産科婦人科学会の定義)。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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