第106回

106PM049|第106回 助産師国家試験 過去問

次の文を読み48~50の問いに答えよ。A病院の産科病棟は5階に位置している。平均分娩数は40件/月で、母児同室としている。マニュアル改訂後1か月、11時に震度6強の地震が発生した。病院内では火災の発生や建物の損壊がないことを確認したが、病棟から避難することになった。このときの助産師の対応で適切なのはどれか。

解答・解説を見る

正解2

正答

2.母児同室の新生児は母親と一緒に避難する。

この問題のポイント

大地震の後、5階の産科病棟から避難する場面で、新生児を「誰が」「どのように」避難させるかを問う問題です。判断の手がかりは「5階」「震度6強」「母児同室」「病棟から避難することになった」の4つです。エレベーターが使えず階段で降りること、職員の人数に限りがあること、母と子を離さないことの3点から考えます。

解説

状況の整理

  • 震度6強は、はわないと動けないほどの非常に強い揺れで、その後も強い余震が続くと考えます。火災や建物の損壊が確認されていなくても、病院が避難を決めたらその指示に従い、速やかに行動します。
  • 5階の病棟です。地震の後はエレベーターが停止したり、閉じ込められたりする危険があるため、避難には使いません。階段を歩いて降りることが前提になります。
  • 母児同室の病棟なので、新生児の多くは母親のベッドサイドにいます。常に複数組の母児が入院していて、全員が一斉に避難する必要があります。

新生児の避難は「母と子を離さない」が原則

災害時の新生児の避難では、母と子を離さないことが基本です。理由は次のとおりです。

  • 職員の数には限りがあります。少ない職員ですべての新生児を運ぶと時間がかかります。歩ける母親が自分の児を抱けば全員が同時に動き出せ、職員は自力で動けない人の援助や誘導に回れます。
  • 混乱の中で母子が別々になると、避難先でどの児がどの母親の子かを確かめるのに手間がかかり、取り違えや所在不明が起こりやすくなります。一緒に避難すればこれを防げます。母児のネームバンドは外さないようにします。
  • 避難先でも母親がそばにいれば、授乳・保温・観察を続けやすくなります。母乳は水や燃料を使わずに与えられるため、災害時にも安全な栄養です。

歩ける褥婦には、児をしっかり抱いてもらいます。抱っこひもやバスタオルで児を体に固定し、片手で手すりを持てるようにします。割れたガラスなどに備えて靴を履いてもらい、職員の誘導で階段を降ります。帝王切開後の褥婦や、出血などで足元が不安定な褥婦には職員が付き添います。必要なら児を職員が預かって運びます。

職員が新生児を運ぶとき

職員が運ぶのは、母親が退院した後の新生児や、母親の状態が悪くて抱けない新生児などです。コット(新生児用ベッド)は階段を降りられません。抱っこひもや避難用のベスト・スリングなどで児を職員の体に固定し、両手が使える状態で運びます。1人で複数の児を運ぶ方法、用具の置き場所、避難経路、役割分担は、平常時からマニュアルで決めて訓練しておくことが大切です。この事例の「マニュアル改訂後1か月」という記述も、改訂したマニュアルに沿って動けるよう日頃から周知と訓練をしておく必要性を示しています。

実践で押さえること

揺れている間は、窓や落下物から離れ、母親が児を体でかばって身を低くするよう声をかけます。避難するときは、新生児が体温調節の未熟さから低体温になりやすいことを踏まえ、おくるみや毛布で保温します。避難後は人数と所在を確認し、母子の状態を観察します。

選択肢の確認

1.母児異室の新生児は職員が避難させる。:母と子を離さない原則からは、異室にいる新生児も、母親が歩いて避難できるなら母親のもとに戻して一緒に避難するのが望ましいです。そのため、一律に職員が避難させるという対応は適切とはいえません。母児同室を基本とするこの病棟では、異室の児は一時的な理由で預かっていることが多いと考えられます。職員が運ぶのは、帝王切開後で抱いて階段を降りられない、母体の状態が悪い、母親が不在といった例外の場合です。職員が運ぶこと自体が常に誤りなのではなく、原則と例外を取り違えないことがポイントです。

2.母児同室の新生児は母親と一緒に避難する。:正答。母親のそばにいる児を母親自身が抱いて避難すれば、母子の分離と取り違えを防げます。全員が同時に避難を始められ、限られた職員を自力で動けない人の援助と誘導に回せます。避難先での授乳や保温も続けやすくなります。

3.母親が退院後の新生児はコットに寝かせて避難する。:地震の後はエレベーターが使えず、5階から階段で降りる必要があるため、コットに寝かせたままでは運べません。コットで移動すると、余震で転倒したり児が転落したりする危険もあります。母親がいない児なので職員が運ぶことは正しい判断です。不適切なのは「コットに寝かせて」という方法で、抱っこひもや避難用ベストで体に固定し、抱いて運ぶのが正しい方法です。

4.正常に経過している褥婦はパートナーに迎えに来てもらう。:病院が病棟からの避難を決めた時点では、入院中の全員をただちに安全な場所へ移すことが最優先です。パートナーの到着を待てば避難が遅れます。震度6強の地震の直後は、道路の寸断、交通機関の停止、通信の混乱によって、家族がいつ来られるか見通せません。正常経過の褥婦には、自力で歩ける人として児を抱き、職員の誘導で避難してもらいます。家族への連絡や退院の調整は、避難が済み安全を確保してから行います。

覚えるポイント

  • 地震の後の避難ではエレベーターは使わず階段を使います。高層階の病棟では、コットや車いすのまま降りられない前提で避難方法を考えます。
  • 新生児の避難は「母と子を離さない」が原則です。母児同室なら母親が児を抱いて一緒に避難し、職員は自力で動けない人の援助と誘導に回ります。
  • 職員が新生児を運ぶのは、母親が抱けないときと不在のときです。抱っこひもや避難用ベストで児を体に固定し、両手を空けます。
  • 取り違えを防ぐためネームバンドは外しません。避難中と避難後は、新生児の保温と授乳(母乳は災害時にも安全な栄養)の継続を支えます。
  • 避難の指示が出たら、家族の迎えを待たずに避難を優先します。家族への連絡や退院の調整は安全を確保した後に行います。
  • 役割分担、用具、避難経路は平常時にマニュアルで決め、訓練で身につけておきます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する(medixmatch2025@gmail.com)までお知らせください。確認して修正します。

解いた記録を残して、苦手な問題をもう一度。

学習アプリなら、この問題の解答記録・メモ・暗記カード化を使えます。