第105回
105AM023|第105回 助産師国家試験 過去問
震度6強の大規模地震が発生し、被災地で多くの家屋が損壊した。公共交通機関の運行は停止し、主要道路の損傷によって複数地域で通行不能が生じている。一時避難所が開設されて家屋が損壊した住民の受け入れが行われた。避難者の中には妊婦が複数含まれていたが、身体的不調の訴えはない。被災した妊婦のための初期対応で適切なのはどれか。
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正解1
正答
1.母体搬送が可能な周産期医療施設の情報を収集する。
この問題のポイント
大規模地震の直後に、避難所にいる現時点では訴えのない妊婦に対して、助産師がまず何をするかを問う問題です。判断の手がかりは「公共交通機関の停止」「主要道路の通行不能」「身体的不調の訴えはない」という条件です。この状況では、異常が起きてから搬送先を探していては間に合いません。急変に備えて受け入れ先と搬送の見通しを先に確保しておくことが、初期対応の中心になります。
解説
問題文から状況を整理する
- 震度6強で家屋損壊が多数あり、公共交通は停止し、主要道路も通行不能です。移動手段と搬送経路が限られているうえ、医療機関自体が被災して診療機能が落ちている可能性があります。
- 一時避難所が開設されたばかりで、発災から間もない急性期です。
- 妊婦は複数いますが、身体的な訴えはありません。今すぐ治療が必要な状態ではない一方で、妊娠週数や経過によっては、陣痛発来、破水、性器出血、血圧上昇などがいつ起きてもおかしくありません。
災害時に妊婦が抱えるリスク
妊婦は災害時の要配慮者です。理由は次のとおりです。
- 分娩は待ってくれません。妊娠末期であれば、避難所で分娩が始まる可能性があります。
- 心理的ストレス、睡眠不足、食事や水分の不足は、子宮収縮の増加(切迫早産)や血圧上昇につながります。
- 妊娠中は凝固能が亢進し、増大した子宮による圧迫で下肢の静脈血がうっ滞しやすくなります。避難所や車中泊での長時間の同一姿勢、トイレを避けるための飲水制限が重なると、深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症の危険が高まります。
- 地震の際に転倒や腹部打撲があった場合は、自覚症状が軽くても常位胎盤早期剝離を念頭に置く必要があります。
初期対応の考え方
平常時であれば、症状が出たときに妊婦自身がかかりつけ医へ連絡して受診すれば対応できます。災害時にはこの前提が成り立ちません。そのため助産師は、次のことを並行して進めます。
- 妊婦の把握:妊娠週数、分娩予定日、かかりつけ施設、合併症や妊娠経過中の異常、経産回数などを聞き取り、リスクの高い人を見極めます。
- 医療体制の情報収集:どの周産期医療施設が稼働していて母体搬送を受け入れられるか、搬送手段(救急車、ヘリコプターなど)と経路、連絡方法を確認します。情報は自治体の災害対策本部や、医療機関の稼働状況を共有する広域災害救急医療情報システム(EMIS)などから得ます。都道府県の災害医療体制には、小児・周産期の搬送調整を担う災害時小児周産期リエゾンが位置づけられています。
- 妊婦への保健指導:性器出血、破水感、規則的な腹部緊満や腹痛、胎動の減少、頭痛や目のちかちか感などが出たらすぐ申し出るよう伝えます。
- 生活環境の調整:適度な運動、十分な水分と食事、休息できる場所、プライバシーの確保、感染予防に配慮します。
このうち、受け入れ先と搬送の見通しを確保することは、妊婦に負担をかけず、避難所にいるすべての妊婦の安全に直結します。訴えがない今だからこそ先に行う準備であり、これが選択肢1が正答となる理由です。
選択肢の確認
1.母体搬送が可能な周産期医療施設の情報を収集する。:正答。交通が寸断され医療機関も被災している状況では、急変が起きてから搬送先を探しても間に合いません。稼働している施設、受け入れの可否、搬送手段と経路をあらかじめ把握しておくことで、陣痛発来や出血などが起きたときにすぐ搬送の判断ができます。妊婦に負担をかけず、避難所内の妊婦全員に役立つ初期対応です。
2.かかりつけの産婦人科に早急に受診するよう妊婦に勧める。:公共交通が止まり道路も通行不能な中で移動を促すと、妊婦を転倒や事故などの危険にさらします。かかりつけの施設自体が被災して診療できない可能性もあります。さらに現時点で身体的不調の訴えはなく、全員を急いで受診させる医学的な根拠もありません。受診は危険徴候がある妊婦について、稼働している施設へ搬送手段を確保したうえで調整するものです。
3.妊婦には避難所内でなるべく安静にするよう妊婦に伝える。:訴えのない妊婦に一律の安静を指示する根拠はありません。避難所で動かずに過ごすと、妊娠による凝固能亢進に活動量の低下が重なり、深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症の危険が高まります。実際には、適度に体を動かす、こまめに水分をとる、同じ姿勢を長く続けないといった指導が必要です。切迫早産などで医師から安静を指示されている妊婦は別に扱います。
4.母子健康手帳を持参していない妊婦は特定妊婦として扱う。:特定妊婦は児童福祉法に定められた概念で、出産後の養育について出産前から支援が特に必要と認められる妊婦を指します。若年妊娠、経済的困窮、望まない妊娠、精神疾患、妊婦健康診査の未受診などの状況から判断するもので、災害時に母子健康手帳を持ち出せなかったことは該当理由になりません。手帳がない妊婦には、妊娠経過を聞き取って把握し、必要に応じて市町村の再交付につなげます。
覚えるポイント
- 災害急性期の妊婦支援は「起きてから探さない」ことが原則です。稼働している周産期医療施設、受け入れの可否、搬送手段と経路を先に把握します。
- 情報源として、自治体の災害対策本部、広域災害救急医療情報システム(EMIS)、災害時小児周産期リエゾンを押さえておきます。
- 避難所の妊婦は深部静脈血栓症のハイリスク者です。一律の安静ではなく、適度な運動、水分摂取、同一姿勢の回避を指導します。
- 妊婦には危険徴候(性器出血、破水、規則的な腹部緊満・腹痛、胎動減少、頭痛・視覚異常)を伝え、すぐ申し出るよう指導します。
- 特定妊婦は児童福祉法上の概念で、養育支援の必要性から判断します。母子健康手帳の有無では決まりません。手帳は市町村が交付し、紛失時は再交付を受けられます。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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