第105回
105AM022|第105回 助産師国家試験 過去問
感染予防のための標準予防策〈スタンダードプリコーション〉として適切なのはどれか。
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正解1
正答
1.悪露交換時は手袋を着用する。
この問題のポイント
標準予防策の考え方と、場面に合った個人防護具(PPE)の選び方を問う問題です。判断の基準は、すべての患者の血液・体液・分泌物・排泄物、損傷した皮膚、粘膜を感染性があるものとして扱うという原則です。各選択肢の場面で「何に触れるか」「何がどこまで飛ぶか」を考えれば、防護具が足りているかどうかを判断できます。N95マスクは感染経路別予防策(空気予防策)で使う防護具なので、標準予防策とは分けて考えます。
解説
標準予防策とは
標準予防策(スタンダードプリコーション)は、1996年に米国CDCが提唱した感染対策の基本です。感染症の診断の有無にかかわらず、すべての患者に行います。汗を除く血液・体液・分泌物・排泄物、損傷した皮膚、粘膜には病原体が含まれている可能性があるとみなし、医療従事者と患者の両方を守ります。検査で見つからない感染や検査前の感染もあるため、「感染が分かっている人だけに対策する」方法では防ぎきれない、という考え方が根拠です。
主な構成要素は次のとおりです。
- 手指衛生(ケアの前後に行い、手袋を外した後も必ず行う)
- 個人防護具(手袋、エプロン・ガウン、マスク、ゴーグル・フェイスシールド)の適切な使用
- 呼吸器衛生・咳エチケット
- 使用した器材・リネンの取り扱い、環境整備
- 鋭利物の安全な取り扱い(リキャップしないなど)、安全な注射手技
防護具は「触れる」「汚れる」「飛ぶ」で選ぶ
- 血液・体液などに触れる可能性がある:手袋
- 衣服に付着する可能性がある:エプロン。腕まで汚染が及ぶなら長袖ガウン
- 顔面に飛散する可能性がある:サージカルマスクと、ゴーグルまたはフェイスシールド(眼の粘膜を守る)
周産期の場面に当てはめる
悪露は、胎盤剝離面や脱落膜からの血液、分泌物、組織片からなる排出物です。産褥早期の赤色悪露は特に血液を多く含みます。パッド交換や外陰部の観察では悪露に直接触れる可能性が高いので、手袋を着用します。
母乳も分泌物で、HTLV-1、HIV、サイトメガロウイルスなどを含むことがあります。乳頭に亀裂があれば、血液や滲出液に触れることもあります。
分娩介助では、血液・羊水・便が大量に、腕や顔面まで広く飛散します。そのため、全身と顔面の粘膜を守る防護が必要です。
産科病棟には、免疫が未熟な新生児と、創部(胎盤剝離面や会陰の縫合部)をもつ褥婦がいます。医療従事者の手を介した感染が広がりやすい環境なので、手指衛生と防護具の正しい使用は、母子を守る実践上とても重要です。
感染経路別予防策との関係
感染経路別予防策は、特定の病原体による感染やその疑いがある場合に、標準予防策に上乗せして行う対策です。
- 接触予防策:MRSAなどの薬剤耐性菌、ノロウイルス、疥癬など。手袋・ガウンの着用、個室管理、物品の専用化
- 飛沫予防策:インフルエンザ、風疹、流行性耳下腺炎、百日咳など。サージカルマスク
- 空気予防策:結核、麻疹、水痘。N95マスク、陰圧の個室
選択肢の確認
1.悪露交換時は手袋を着用する。:正答。悪露は血液と子宮からの分泌物を含む排出物で、パッド交換では直接触れる可能性が高いため、手袋の着用は標準予防策どおりの行動です。衣服への付着が予想される場合はエプロンも加えます。手袋にはピンホールがあることや、外すときに手が汚染されることがあるため、外した後は必ず手指衛生を行います。
2.産褥期の乳房ケアは素手で実施する。:母乳は分泌物であり、HTLV-1やHIVなどの病原体を含むことがあります。乳頭亀裂があれば血液や滲出液にも触れるため、乳房ケアも標準予防策の対象になります。母乳などに触れる可能性がある場面では手袋を着用するのが原則で、素手で行うことをあらかじめ決めておくのは標準予防策の考え方に反します。「母乳は子どもの栄養だから安全」という感覚と混同しないよう注意します。
3.新生児のケアではN95マスクを装着する。:N95マスクは、微粒子(0.3μm)を95%以上捕集できる高性能マスクです。結核・麻疹・水痘の患者(疑いを含む)に接するときの空気予防策で使います。新生児ケアのたびに一律に着ける防護具ではなく、標準予防策には含まれません。新生児ケアの基本は手指衛生です。ケアする人に咳などの症状があるときは、呼吸器衛生・咳エチケットとしてサージカルマスクを着用します。
4.分娩介助時は使い捨てエプロンを着用する。:分娩では血液や羊水が大量に、腕や顔面まで飛散します。体幹の前面しか覆えないエプロンでは防護が足りません。分娩介助では、清潔操作も兼ねて長袖の滅菌ガウンと滅菌手袋を着用し、マスクとゴーグルまたはフェイスシールドで顔面の粘膜も守ります。使い捨てエプロンは、おむつ交換や清拭など、汚染が体幹の前面にとどまると予想される場面で選ぶ防護具です。
覚えるポイント
- 標準予防策は、感染症の有無にかかわらずすべての患者に行う。汗を除く血液・体液・分泌物・排泄物、損傷した皮膚、粘膜を感染性ありとみなす
- 防護具の選び方:触れる→手袋、衣服が汚れる→エプロン(腕まで汚れるなら長袖ガウン)、顔に飛ぶ→マスクとゴーグル/フェイスシールド
- 悪露・母乳・羊水・血液はいずれも標準予防策の対象。分娩介助は「長袖ガウン+手袋+マスク+眼の防護」
- N95マスクは空気予防策(結核・麻疹・水痘)で使う。サージカルマスクは飛沫予防策と咳エチケットで使う
- 手袋は手指衛生の代わりにならない。手袋を外した後は必ず手指衛生を行う
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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