第105回

105AM024|第105回 助産師国家試験 過去問

妊娠による母体の泌尿器系の変化で正しいのはどれか。

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正解4

正答

4.尿細管での再吸収能が低下する。

この問題のポイント

妊娠に伴う腎機能(腎血流量、糸球体濾過量、尿細管機能)と尿路(尿管、膀胱)の生理的変化を問う問題です。次の3つの軸で考えると、各選択肢の正誤を判断できます。

  • 循環血液量が増えて濾過量が増える
  • プロゲステロンで平滑筋が緩む
  • 子宮は右に回旋しやすい

解説

腎機能の変化:濾過が増え、再吸収が追いつかない

妊娠中は循環血液量と心拍出量が増えます。さらにホルモンの作用で腎血管が拡張するため、腎血漿流量が増加します。これに伴い、糸球体濾過量(GFR)は妊娠初期から増え始め、妊娠中期までに非妊時の約1.5倍に達します。

濾過量が増えると、尿素窒素やクレアチニンなどの老廃物が効率よく排泄されるため、血中濃度は非妊時より低くなります。臨床では、非妊時の基準範囲に収まっていても、妊婦としては高めの値が腎機能低下の手がかりになる点が重要です。

一方、尿細管は大量に流れ込む原尿を処理しきれません。ブドウ糖やアミノ酸の再吸収が濾過量の増加に追いつかないため、血糖値が正常でも尿糖が陽性になることがあります。これを妊娠性(生理的)糖尿と呼び、選択肢4の「再吸収能が低下する」はこの現象を指しています。

尿糖が陽性というだけで糖代謝異常とは判断できません。妊娠糖尿病は血糖値で評価し、75gOGTTで次のいずれか1点以上を満たす場合に診断されます(明らかな糖尿病は除きます)。

  • 空腹時 92mg/dL以上
  • 1時間値 180mg/dL以上
  • 2時間値 153mg/dL以上

尿路の変化:緩んで広がり、右側が詰まりやすい

プロゲステロンには平滑筋を弛緩させる作用があります。そのため尿管の緊張が低下し、蠕動が弱まって尿管が拡張します。妊娠が進むと増大した子宮による圧迫も加わり、腎盂や尿管が拡張した状態(生理的水腎症・水尿管)がみられます。

この変化は右側に強く出ます。理由は次の3つです。

  • 妊娠子宮が右方に回旋しやすい
  • 右尿管の上を拡張した右卵巣静脈が斜めに横切る
  • 左尿管はS状結腸がクッションとなって圧迫を受けにくい

尿が停滞すると細菌が増殖しやすくなります。その結果、無症候性細菌尿から急性腎盂腎炎へ進展しやすくなります。妊娠中の腎盂腎炎は右側に多く、発熱、右腰背部痛、肋骨脊柱角の叩打痛が手がかりになります。子宮収縮や早産の誘因にもなるため、早期発見が大切です。

膀胱の変化

妊娠初期は増大する子宮が、妊娠末期は骨盤内に下降した児頭が膀胱を圧迫します。そのため、どちらの時期も頻尿になりやすくなります。

実践での活かし方

妊婦健診で尿糖が陽性のときは、生理的な変化の可能性を念頭に置きつつ、血糖評価につなげます。尿路感染症の予防としては、次のような保健指導を行います。

  • 十分な水分摂取
  • 排尿をがまんしない
  • 排泄後は前から後ろへ拭く

選択肢の確認

1.妊娠後期の尿の流出障害が左側に起こりやすい。:尿の流出障害(生理的水腎症・水尿管)は右側に起こりやすく、左側とする記述は逆です。子宮の右方回旋と右卵巣静脈による右尿管の圧迫が起こる一方、左尿管はS状結腸に保護されるためです。妊娠中の腎盂腎炎も右側に多いことと結びつけて覚えましょう。

2.尿素窒素の値が非妊時より高値を示す。:糸球体濾過量の増加で尿素窒素の排泄が増えるため、血中濃度は非妊時より低くなります。高値を示すのは、妊娠悪阻による脱水や妊娠高血圧腎症などで腎機能が低下した場合です。生理的変化ではなく異常のサインとして評価します。

3.糸球体濾過率〈GFR〉が低下する。:妊娠中は腎血漿流量が増えるため、糸球体濾過率は低下せず、非妊時の約1.5倍に増加します。GFRが低下するのは妊娠高血圧腎症などの病的状態です。クレアチニンクリアランスの低下や血清クレアチニンの上昇として現れます。

4.尿細管での再吸収能が低下する。:正答。糸球体濾過量の増加に尿細管での再吸収が追いつかず、ブドウ糖などが尿中に出やすくなります。血糖値が正常でも尿糖が陽性になる妊娠性糖尿の背景にある変化です。尿糖陽性がそのまま妊娠糖尿病を意味するわけではない点も押さえておきましょう。

5.尿管の緊張が増す。:プロゲステロンの平滑筋弛緩作用によって、尿管の緊張は低下し、蠕動が弱まって拡張します。緊張が増すという記述は逆です。この緊張低下が尿の停滞と尿路感染症の起こりやすさにつながります。同じ作用は消化管にも及び、便秘や胸やけの原因になります。

覚えるポイント

  • 妊娠中は腎血漿流量とGFRが増加します(GFRは約1.5倍)。そのため尿素窒素とクレアチニンは低下し、非妊時の基準内でも高めなら腎機能低下を疑います。
  • 尿細管の再吸収が濾過量の増加に追いつかず、妊娠性糖尿が起こります。尿糖陽性は妊娠糖尿病と同じではなく、診断は75gOGTTなどの血糖値で行います。
  • プロゲステロンは尿管平滑筋を弛緩させ、蠕動低下、尿管拡張、尿の停滞を招きます。その結果、無症候性細菌尿や腎盂腎炎が起こりやすくなります。
  • 水腎症と腎盂腎炎は右側に多くなります。理由は子宮の右方回旋、右卵巣静脈、S状結腸による左側の保護の3点です。
  • 頻尿は妊娠初期(子宮の圧迫)と妊娠末期(児頭の圧迫)に起こりやすくなります。
  • 尿素窒素・クレアチニンの上昇やGFRの低下は生理的変化ではありません。妊娠高血圧腎症や脱水などの異常を考えます。

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