第105回
105AM007|第105回 助産師国家試験 過去問
胎児の呼吸器系の発生で正しいのはどれか。
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正解1
正答
1.肺水の組成は羊水とは異なる。
この問題のポイント
胎児の肺の発生段階(胎芽期、偽腺期、管状期、囊状期、肺胞期)と、各段階でできあがる構造を問う問題です。あわせて、肺水とサーファクタントの性質も問われています。判断の鍵は、肺水が羊水を吸い込んだものではなく、肺の上皮が自ら分泌する液体だという点です。肺胞とサーファクタントは30週ころに完成やピークを迎えるわけではなく、出生直前から出生後まで成熟が続きます。これを押さえていれば、残りの選択肢は除外できます。
解説
肺の発生段階
肺は、前腸の内胚葉から出る肺芽(呼吸憩室)として発生します。気道の上皮は内胚葉に、軟骨・平滑筋・結合組織は周囲の中胚葉に由来します。その後、次の順に成熟します。週数の区切りは教科書によって1〜2週ほど異なり、段階どうしも重なり合います。そのため、「どの段階で何ができるか」という順序で覚えるのが確実です。
- 胎芽期(妊娠初期):肺芽が発生し、左右の主気管支に分かれ、さらに葉気管支へと分かれます。
- 偽腺期(〜16〜17週ころ):気管支が分枝を繰り返し、終末細気管支までの導管部(空気の通り道)がほぼできあがります。組織像が腺のように見えることが名前の由来です。
- 管状期(細管期、16〜26週ころ):終末細気管支の先に呼吸細気管支ができ、周囲に毛細血管が入り込みます。Ⅰ型・Ⅱ型肺胞上皮細胞への分化もこの時期に始まります。後半には、ガス交換がかろうじて可能な構造ができ始めます。22週前後の早産児が生存しうるのは、このためです。
- 囊状期(終末囊期、26〜36週ころ):呼吸細気管支の先に、肺胞のもととなる終末囊が形成されます。上皮が薄くなり、空気と血液の距離が縮まります。
- 肺胞期(36週ころ〜出生後):本来の肺胞が形成され始めます。肺胞の数は出生後も小児期(おおむね8歳ころ)まで増え続けます。
肺水
胎児の肺は、出生まで液体で満たされています。これが肺水(肺胞液)です。肺水は、肺の上皮細胞が塩化物イオン(Cl⁻)を気道内へ能動的に分泌し、それに水が伴って移動することでつくられます。そのため、Cl⁻濃度が高く、蛋白がきわめて少ないという特徴をもちます。一方、妊娠後半の羊水は胎児尿が主な成分であり、肺水とは組成が異なります。肺水は気管から口腔へ流れ出し、一部は羊水に混ざり、一部は嚥下されます。つまり、流れの向きは「肺から羊水へ」です。
肺水は気道内に適度な容量と圧を保ち、肺を内側から広げて発育を促します。羊水過少(腎無形成や早い時期の前期破水など)や先天性横隔膜ヘルニアでは、肺が十分に広がらず、肺低形成が起こります。
出生時には、陣痛や分娩に伴うカテコールアミンなどの作用で、肺上皮の働きがCl⁻の分泌からNa⁺の再吸収へ切り替わります。肺水は間質へ移り、リンパ管や毛細血管から吸収されます。産道で胸郭が圧迫されることによる排出も、一部を担います。陣痛を経ない帝王切開などでこの吸収が遅れると、新生児一過性多呼吸の原因になります。
肺サーファクタント
肺サーファクタントは、Ⅱ型肺胞上皮細胞がつくるリン脂質(主成分はレシチン)と蛋白質の複合体です。肺胞の表面張力を下げ、呼気時に肺胞がつぶれるのを防ぎます。産生は22〜24週ころに始まり、34〜36週ころにかけて急増して十分な量に達し、その後も満期まで増えていきます。30週ではまだ不足しているため、この時期に生まれた早産児は呼吸窮迫症候群(RDS)を起こしやすくなります。
サーファクタントは肺水とともに羊水中へ流れ出ます。このため、羊水のL/S比(レシチン/スフィンゴミエリン比)が2以上であれば、肺が成熟していると判断できます。羊水や出生後の胃液を用いたマイクロバブルテストでも評価できます。臨床では次のような対応につながります。
- 34週未満の早産が予想される場合は、母体に副腎皮質ステロイドを投与して、胎児のサーファクタント産生を促します。
- 出生後にRDSを発症した場合は、サーファクタントを気管内に投与します。
選択肢の確認
1.肺水の組成は羊水とは異なる。:正答。肺水は、肺上皮がCl⁻を能動的に分泌してつくる液体です。Cl⁻が多く蛋白がきわめて少ないという、独自の組成をもちます。流れは肺から羊水への一方向で、羊水を吸い込んで肺が満たされているわけではありません。「胎児は羊水を肺に吸い込んでいる」という誤解と取り違えないようにします。
2.肺胞は在胎30週ころに完成する。:30週ころは囊状期にあたり、まだ終末囊の段階で、本来の肺胞は形成されていません。肺胞の形成は36週ころから本格化し、出生後も小児期(おおむね8歳ころ)まで数が増え続けます。そのため、胎内で完成する時期はありません。30週は、構造もサーファクタントも未熟な時期として押さえます。
3.在胎10週には呼吸細気管支の分枝が完成する。:10週ころは偽腺期で、導管部となる気管支がまだ分枝を繰り返している段階です。呼吸細気管支は管状期(16〜26週ころ)に形成されるため、10週では完成していません。偽腺期でできあがるのは終末細気管支までの導管部です。ガス交換に関わる呼吸部とは形成時期が異なる点が、ひっかけになっています。
4.肺サーファクタントの分泌は在胎30週ころがピークである。:サーファクタントは22〜24週ころに産生が始まり、34〜36週ころに十分な量に達し、その後も満期まで増え続けます。30週ころはまだ増加の途中で、この時期の早産児はRDSを起こしやすいため、ピークとはいえません。「34週ころに肺が成熟する」を基準に覚えると判断しやすくなります。
覚えるポイント
- 肺の発生は、胎芽期 → 偽腺期(終末細気管支まで)→ 管状期(呼吸細気管支と毛細血管、16〜26週ころ)→ 囊状期(終末囊)→ 肺胞期(36週ころ〜出生後8歳ころ)の順に進みます。
- 肺水は肺上皮のCl⁻能動分泌でつくられ、Cl⁻が多く蛋白が少ない液体です。羊水とは別物で、流れは肺から羊水へ向かいます。
- 出生時には、肺上皮が分泌から吸収(Na⁺再吸収)へ切り替わります。吸収が遅れると新生児一過性多呼吸になり、陣痛を経ない帝王切開で起こりやすくなります。
- サーファクタントはⅡ型肺胞上皮細胞が産生し、22〜24週ころに産生が始まり、34〜36週ころに十分量に達します。不足すると呼吸窮迫症候群(RDS)を起こします。
- 肺成熟は、羊水L/S比2以上やマイクロバブルテストで評価します。34週未満の早産が予想されるときは、母体にステロイドを投与します。
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