第106回

106PM048|第106回 助産師国家試験 過去問

次の文を読み48~50の問いに答えよ。A病院の産科病棟は5階に位置している。平均分娩数は40件/月で、母児同室としている。近年の災害多発を踏まえ、病棟の災害対策マニュアルを改訂することにした。このマニュアルに記載する内容で正しいのはどれか。

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正解3

正答

3.平時に使用する分娩セットを災害時にも使用する。

この問題のポイント

産科病棟の災害対策マニュアルに、どのような内容を記載すべきかを問う問題です。災害時は電気・医療ガス・物流・人手が同時に不足し、慣れない物品や手順では動けないことを前提に、各選択肢を検討します。判断の視点は次の3つです。

  • 平時の物品と手順を、災害時にもそのまま使えるか
  • ライフラインが止まっても使える器材か
  • どの時間帯に災害が起きても、全員が使える数と配置になっているか

解説

事例の状況を整理する

  • 5階の病棟:地震や停電ではエレベーターが止まるため、避難は階段で行います。新生児は抱っこや抱っこひもで運ぶことになります。一般に建物の上層階ほど揺れが大きくなりやすく、落下物や転倒への備えも欠かせません。
  • 平均分娩数40件/月:1日あたり1〜2件の分娩がある計算です。分娩は災害を理由に延期できないため、物資の補給が途絶えた場合でも、数日間は分娩に対応できる物品が必要です。
  • 母児同室:揺れが起きた瞬間に児のそばにいるのは母親です。スタッフがすぐに全室を回れるとは限らないため、母親への事前の説明が重要になります。

災害への備えの基本

災害時には、停電、断水、医療ガスの途絶、物流の停止、職員の参集困難が重なります。暗く、人手の少ない混乱した状況では、普段と違う物品や手順は使いこなせません。そのため災害対策では、平時と同じ物品・同じ手順で動ける体制をつくることが基本になります。

分娩セットを災害専用として別に保管すると、次のような問題が起こりやすくなります。

  • 置き場所や中身を知らない職員が出る
  • 日常的に点検されないため、滅菌期限切れや欠品に気づけない
  • いざ使うときに内容や並びが違い、手順に戸惑う

平時に使っている分娩セットを災害時にも使うと決め、使った分を補充しながら常に多めの在庫を回しておけば、どの職員も迷わず使え、在庫もいつでも使える状態に保てます(ローリングストックの考え方)。停電や断水で滅菌装置が使えなくなることも想定し、滅菌済みセットの予備数をマニュアルに明記しておくと実効性が高まります。

実践での生かし方

マニュアルは作るだけでなく、訓練で確認することが大切です。職員が最も少ない夜勤帯を想定した避難訓練、階段での新生児搬送の方法、母親への入院時の説明(揺れたら児を抱き寄せ、窓や落下物から離れて頭を守る)などを具体的に決めておくと、母児の安全につながります。

選択肢の確認

1.新生児用に流量膨張式バッグを常備する。:流量膨張式バッグ(ジャクソンリース型)は、酸素や圧縮空気などのガスを流して初めてバッグが膨らむ構造で、ガス源がなければ換気できません。災害時には、停電による空気圧縮機の停止、配管の損傷、ボンベの不足などで医療ガスが使えなくなるおそれがあります。そのため災害への備えとしては、ガス源がなくても室内空気で換気できる自己膨張式バッグと、新生児用サイズのマスクを常備します。新生児蘇生法(NCPR)でも、在胎35週以上の児の人工呼吸は空気で開始するとされており、ガスがなくても有効な換気を始められます。流量膨張式は、ガス供給が安定した平時に吸気圧や呼気終末陽圧を細かく調整したい場面で使う器具で、扱いにも習熟を要します。災害対策の常備品として記載するのは適切ではありません。

2.新生児用のコットは四隅にストッパーをかける。:コットは軽く、台の上にかごが載った重心の高い構造です。四隅すべてを固定すると、床の揺れをキャスターで逃がせず、強い揺れで転倒して児が転落するおそれがあるとされています。固定の方法(ストッパーを外しておく、一部だけかけるなど)は床材や部屋の構造をふまえて施設ごとに検討されますが、「四隅にかける」と一律に定めるのは適切ではありません。また、揺れたときはコットに寝かせたままにせず、母親やスタッフが児を抱き寄せて落下物から守ることを優先します。「固定すれば安全」という発想と取り違えやすい選択肢です。

3.平時に使用する分娩セットを災害時にも使用する。:正答。使い慣れた分娩セットであれば、停電下や少人数でも、どの職員も迷わず確実に分娩介助ができます。日常的に使用と補充を繰り返すため、滅菌期限切れや欠品にも気づきやすく、災害時に使えないという事態を防げます。月40件の分娩に対応している病棟として、平時のセットを多めに在庫し、災害時にも同じセットで対応すると定めることは、災害対策マニュアルの記載として適切です。

4.スタッフ用のヘルメットは夜勤者の人数分をスタッフステーションに置く。:ヘルメットなどの防護具は、勤務者が最も多い時間帯に合わせて数を用意します。日勤帯は夜勤帯より職員が多いため、夜勤者の人数分では日中の災害で不足します。また、スタッフステーション1か所にまとめると、分娩室や病室にいる職員はすぐに取りに行けず、ステーションが損壊すればすべて使えなくなります。最大勤務者数分を、分娩室・病室周辺・ステーションなどに分散して配置するのが適切です。夜勤帯は人手が最も手薄なため訓練では重視すべき時間帯ですが、それは人員不足への対策であり、防護具の数の基準にはなりません。

覚えるポイント

  • 災害時の物品は「平時と同じもの」を多めに回し、使いながら補充します(ローリングストック)。災害専用品は、不慣れ、点検漏れ、期限切れの原因になります。
  • 蘇生バッグは、自己膨張式がガス源不要で災害時や搬送に向き、流量膨張式はガス源が必須です。NCPRでは在胎35週以上の児の人工呼吸は空気で開始します。
  • ヘルメットなどの防護具は、最大勤務者数分を各所に分散して配置します。
  • 上層階の病棟では、エレベーターの停止を前提に、階段での新生児の搬送方法(抱っこ、抱っこひもなど)をあらかじめ決めておきます。
  • 母児同室では、揺れたら児を抱き寄せて頭を守る行動を入院時に説明します。コットの固定は、転倒のリスクも含めて検討します。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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